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農業革命3.0は成功するか

世界初クモの糸で作る服登場、農業と産業に大きなインパクト

2016年04月06日 09時00分更新

課題はITの使い方

 慶應義塾大学先端生命科学研究所の存在によって、農業におけるバイオテクノロジーの有効活用が見えてきた。Spiberという存在は今後の産業に大きな変化をもたらす可能性とプロトタイプを見せてくれた。言い換えればバイオテクノロジーの可能性を垣間見せたといってもいい。

 鶴岡市はこうした試金石と農業を融合させ、新たな農業都市を見せていきたいと考えているのだろう。だとするなら富田教授と関山さんがカンファレンスで話した意義も大きい。

 では、農業革命3.0のもうひとつの柱、スマートアグリはどうか。今後の課題というほかない。

 今回のカンファレンスでは農家の代表として、米農家の板垣さんも参加した。板垣さんは農家、ひいては地域の現状と未来を「20年後には限界集落から壊滅集落になる。そのころにはロボットを駆使して農業をするようにもなるだろう」と予測する。

 展覧会場ではいくつかの農業向けロボットや装置が展示されていた。だが、ITと農業をどう組み合わせていくか、具体的な方向性を示せたかというと弱かったと言わざるを得ない。スマートアグリを実践しているというオランダの経営者もカンファレンスに招へいしたが、オランダの例をそのまま鶴岡市に取り込むわけにもいかないだろう。

米農家の板垣さん

展示されていた装置たち。左は人を認識して自動追尾する運搬ロボット。右は自動で種を撒いてくれる装置

 新たな農業都市を宣言し、スマートアグリと先端バイオを柱にするのであれば、これからはスマートアグリ側、つまりITをどううまく活用していくのか提示する必要がある。逆にいうと、スマートアグリを導入できたときに、鶴岡市は日本の農業の未来の手本を見せることができるはずだ。時間はかかると思う。だが、少なくとも冨田教授は理解している。手ごたえもあるようだ。

 「庄内の市民性は手堅く地味。飛び道具を使って研究する慶應と相反するがこのマッチングがいい。これが組み合わさったときに世の中を変えることができる。ただ、最低でも10年は見ないといけない。そこまで待てないという風土ではいけないと考えている」

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