2019年06月24日11時00分

迷惑・詐欺電話とその対策がAI同士の会話になってて最早カオス|中国

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迷惑電話に人工知能が音声チャットボットで対応|中国

中国で横行する詐欺目的の迷惑電話の手口とは?

 360インターネット安全センターが発表したレポート「2018年インターネット安全報告」によると、中国で迷惑電話が増加している。ランダムに電話をして、営業活動をするような電話もあるが、ここ数年の傾向は、流出した個人情報に基づいて、詐欺を仕掛けてくるような電話が増えていることだ。

迷惑電話に人工知能が音声チャットボットで対応|中国
中国の迷惑電話の件数は年々増加傾向にある。「360手機衛士」などのセキュリティソフトがシャットアウトしている分もあるので、実際に人が受けてしまう件数は横ばいにはなっているが、迷惑電話の数は減らない。(以下、グラフはすべて「2018年インターネット安全報告」(360インターネット安全センター)より作成)

 例えば、ある女性がECサイトでフェイシャルパックを購入してしばらくして、そのECサイトの顧客センターと名乗る電話を受けた。検査をしたところ、該当の製品から基準値の40倍もの鉛が検出されたため、すぐに使用を中止して廃棄してほしいという。購入代金である280元(約4400円)はすぐに返却をするという。

 しかし、その顧客センター担当者は不思議な条件をつけてきた。アリペイが運営する信用スコア「芝麻信用」が700点以上の人には、システムが自動的にスマホに返金をする。しかし、700点未満の方には担当者が手続きをするため1ヶ月ほどの時間がかかるという。

 「そこで」と担当者は言う。「あなたの信用スコアはこちらの指示にしたがうことで700点に達します」と言うのだ。その方法とは、あるネット金融業者からお金を借りて、すぐに返済をすると利息や手数料の負担なしに信用スコアが上がるという。これは中国人にとっては思い当たるところがある。信用スコアというのは、とどのつまりは借金の限度額を算定するための指標で、借入金を期日通りに返済することで著しく上昇する。

 この女性は、この時点で不審に思い警察に相談をしたため、被害にあわなかったが、相手の言うことを聞くと、ネット金融業者のリンクと返済用の口座QRコードが送られてくる。ネット金融業者は本物だが、返済口座QRコードは偽物で、犯人集団の口座に振り込まれることになる。被害者には本物の借金だけが残ることになる。

迷惑電話を遮断するアプリ

 中国のセキュリティ企業「360」では、「360手機衛士」を発売している。スマートフォン用のセキュリティアプリだが、この中に迷惑電話を遮断する機能がある。360では過去の事例から、迷惑電話をかけてくる電話番号を収集し、利用者のスマホに電話がかかってくると、このデータベースと照合、迷惑電話の可能性があるものについては通知音を鳴らさないというものだ。

 この360の推計によると、中国全土での迷惑電話の数は年間約450億件。1日あたり1.2億件になる(360手機衛士が防御している分も含まれている)。中国の人口が14億人であることを考えると、さほどな数でもないように思えるが、現在の迷惑電話は流出した個人情報から相手の情報を把握した上でかけることが多い。このため、集中する人では1日5件以上の迷惑電話がかかってくる人が全体の8.5%もいる。

迷惑電話に人工知能が音声チャットボットで対応|中国
迷惑電話の被害者は圧倒的に男性が多い。
迷惑電話に人工知能が音声チャットボットで対応|中国
一方、一人当たりの平均被害額は女性の方が高い。女性は理財商品などへの関心が高いためだからだと推測されている。
迷惑電話に人工知能が音声チャットボットで対応|中国
年齢別の被害者数と平均被害額。人数は10代後半が最も多いが、被害額は小さい。中高年は被害者数は少ないものの、被害額が大きくなる傾向がある。

 このような迷惑電話は中国だけでなく、世界中で社会問題となってきている。スウェーデンの番号案内サービス「truecaller」が公開した統計では、世界で最も迷惑電話の多い国はブラジルで、1人平均月に37.5本の迷惑電話が、2位はインドで22.3本、先進国でも米国が16.9本となっている。

アリババが開発した迷惑電話引き延ばしAIチャットボット

 このような問題を解決するため、アリババ人工知能実験室では、人工知能を応用した音声チャットボットで対応するシステムを開発した。現在は試験運用中だが、年内にはアリペイのアドオンとして公開したいという。

 このチャットボット「アハ」は、かかってきた電話番号が迷惑電話の可能性があると判断すると、利用者ではなく、人工知能チャットボットが応答する。しかも、適当なあいづちを打ち、相手の話に興味がありそうなふりまでして、通話を引き延ばそうとする。

 撃退することが目的ではなく、できるだけ通話を引き延ばし、悪徳業者の業務効率を悪化させ、「迷惑電話は儲からない」状態にするのが目的だ。

 アリババ人工知能研究室では、試験運用の音声を公開している。

アハ:こんにちは。
業者:こんにちは、年利4.35%の銀行貸付はお入り用ではないですか?
アハ:ちょっと待ってください。銀行だということは…どちらの銀行?
業者:はい、私どもは銀行と提携していまして、4大銀行とはいずれも提携しています。そういうことです。
アハ:貸出金利はどのくらいですか?
業者:私どもの貸出金利は、年利4.35%からになっています。
アハ:それで?あれ?あなた以前電話くれましたよね?声に聞き覚えがあります。
業者:以前、お電話を差し上げたかもしれません。でも、それからまたお入り用が…
アハ:(さえぎって)北京でも借りることができますか?まだ、います?
業者:北京でも借りることができます。
アハ:だったら、あなたのところで最高いくらまで借りられますか?
業者:最高の場合でしたら、上限は3000万元です。
アハ:おたくは信用できるの?
業者:どういう意味でしょう?
アハ:もしもし、います?
業者:はい。
アハ:わかりました。すみません、今、取り込み中で…。
業者:あなたのWeChatのアカウントを教えてもらってもいいですか?
アハ:その他の条件は何かありますか?
業者:その他には手数料が…(電話が切れる)


アリババ人工知能実験室が公開した試験運用の会話。人工知能「アハ」が、悪徳業者の会話の引き延ばしをしていることがわかる。

 相手の会話が途切れると「いますか?」と尋ねたり、「声に聞き覚えがあります」と言って会話を引き伸ばしたりしている。合成音声の声はきわめて自然だが、途中から相手の業者は疑いを持ち始めているような感じもする。しかし、興味を持っていそうなカモのふりをしている以上、業者はなかなか自分からは電話を切ることはできないだろう。

迷惑電話側もチャットボットを応用、今やAI同士の会話に

 迷惑電話、詐欺電話は犯罪というよりもビジネス化されている。手順マニュアルや必要な機材をセット販売している業者も存在する。最近のトレンドは、人工知能を応用した音声チャットボットを使う迷惑電話システムだ。

 登録した電話番号に自動的に電話をかけ、音声チャットボットが営業トークをし、脈があると判断をすると、控えている人間に通知をして電話を代わる。こういったシステムで、4台までの電話機に対応するものが1年間3000元(約4万7000円)で利用できるという。100台までの電話に対応したPro版の年間利用料金も3万元(約47万円)。

 つまり、今年中に、悪徳業者の人工知能が電話をかけ、それをアリババ人工知能実験室の人工知能が応答するという状況が生まれる。人工知能と人工知能が会話をするという不思議なことになる。

 アリババ人工知能実験室としてはそれでいいのだ。目的は悪徳業者の業務効率を下げ、「迷惑電話は儲からない」と撤退されることだからだ。この音声チャットボットが迷惑電話対策の決め手となるか、注目されている。

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