2018年05月28日09時00分

コミュニティにダイブすべき理由、高知でリーダーたちが語る

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幕末の志士を数多く輩出した土佐の地で、新たなコミュニティの息吹が芽生えつつある。2018年5月22日、高知市のSHIFT PLUSで開催された「コミュニティリーダーズサミット in 高知」には、まさに全国からコミュニティリーダーが参集し、地元の志士たちと熱い交流を繰り広げた。

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晴天にはえる高知のシンボル高知城

県内で幅広い学びと交流の場を拡げていきたい

 冒頭、挨拶したのは高知県人として今回のイベントを仕掛けた小島英揮さん。コミュニティマーケティングを学ぶための「CMC_Meetup」を主催するほか、StripeやABEJA、ヌーラボなどのパラレルキャリアを持つ小島さんだが、地元高知に対する想いも強く、全国のITコミュニティリーダーに呼びかけて、今回のイベントが実現した。登壇者や参加者の多くは、「ひろめ市場」で行なわれた前夜祭で初かつおを堪能しており、会場のテンションも最初からマックスだった。

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CMC_Meetup 小島英揮さん

 今回のイベントはITにフォーカスした地方創生を進める高知県が主催し、小島さんのCMC_Meetup、地元のウェブクリエイターズ高知、日本ファシリテーション協会四国サロンなどが協力する形で行なわれている。高知県は、実は昨年の9月にも「高知家ITコンテンツネットワーク Vol.1」と呼ばれるコミュニティイベントを都内で開催しており、今回のイベントの発端になったようだ。

 挨拶に立った高知県庁の近藤雅宏さんは、登壇者・参加者に歓迎の意を伝えるとともに「高知県は一次産業から三次産業まで幅広く産業振興を行なっており、ITコンテンツ産業の育成を高く掲げている。その中で人材育成は中核になっており、県内で幅広い学びの場・交流の場を拡げていきたいと考えている。そのためには県内外のコミュニティと連携をとり、パワフルなみなさんとつながることが非常に重要」と述べ、イベントへの期待を示した。また、「食べ物がおいしい」「キャンプ場などがオープンする」「産業振興課がワンストップで対応する」など高知の魅力などを説明し、「次のコミュニティイベントはぜひ高知でやってもらいたい」とアピールした。

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高知県庁の近藤雅宏さん

 続いてコミュニティにスムーズになじめるよう、自己紹介やネットワーキングのやり方を寸劇で披露。小島さんは、「考えで行動が変わる人はあまりいないが、行動で考えは変わる。コミュニティで既存の枠を脱藩しよう」と参加者を訴え、「コミュニティとの関わり方を自分事として考えてもらう」というゴールを示した。

クラウド時代にますます拡大するコミュニティのパワー

 キックオフとして行なわれたのは「クラウド時代に加速するコミュニティの力」と題したパネルになる。冒頭、小島さんはまずコミュニティの定義として、「もともとは地域に根ざした共同体を指していたが、インターネットが普及した現在では理念やコンテキストを軸にした共同体と言える」と定義づける。その上で幕末の志士たちの写真を掲げ、「彼らは土佐藩や長州藩といった組織の軸ではなく、新しい時代を切り拓くという理念で集まっている」と語り、今回の登壇者の紹介に進む。

 広島から来た友岡賢二さんはフジテックという大手企業のCIOを務めながら、JAWS-UGをはじめとしたITコミュニティに出入りしている。もともとテクニクス好きが高じて松下電器に入社したところからスタートし、社内SEやグローバルでのIT担当などのキャリアを経て、ユニクロに入社して情報システム部の部長を務める。

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カープ愛にじみ出る友岡賢二さん

 その後、CIOになりたいという想いで、フジテックに転職して現在5年目。コミュニティに関しては「CIOという職業を日本で確立させたいという思いで働いているので、CIOコミュニティであるE-JAWSの会長やGoogle Cloudのユーザーのとりまとめをやっている」ほか、地元広島のカープ応援コミュニティや神戸日独協会に参加しているという。

 大阪から来た金春利幸さんは、アールスリーインスティテュートというクラウドインテグレーターでCIOを務めている。友岡さんと同じCIOでもこちらはChief Innovation Officerとのことで、ゼロからイチを生み出す役割となっている。JAWS-UGの全国代表を2015年に務めたほか、kintoneのコミュニティであるkintone Caféを関西で仕掛けている。

 地元高知の坂上北斗さんはMediaACという企業で、サイト構築や運営、インターネット広告などを手がけている。ウェブクリエイターズ高知というクリエイター系のコミュニティで2代目の会長を務めるほか、ドラッガーの読書会、ウェブ解析士協会などにも参加。現在は徳島と高知で複数の会社を立ち上げており、パラレルキャリアで働いているという。

地方がガラパゴス化しないためにはコミュニティが必須

 パネルの前提として、小島氏は前職であるAmazonのジェフ・ベソス氏がイベントで語った「10年後になに変わっているなんてわからない。だから、ビジネスの軸は10年間変わらないものの方が重要」というコメントを引用。「裏返せば、すべてのものは変わると彼は言っている。変わっていくものに後からついて行くのは大変。つまり、マニュアルがない時代だと思ってもらった方がよい」と語る。その上で、「リアルな情報や外の価値観に触れるためには、人が集まるところに行かなければならない」と指摘し、コミュニティという窓を使うことで、情報のキャッチアップが早くなると説明した。

 こうしたコミュニティの重要性について友岡さんは、「僕が衝撃を受けたのはLinuxの登場。コミュニティが作ったOSの上で、多くのITビジネスが動いている」と語る。イノベーションのゆりかごが国家から企業に移り、さらに善意に基づいたコミュニティに移ってきたと指摘する。

 コミュニティ経由で人材を獲得してきた金春さんは、「エージェンシー経由で来た人と30分面接しただけでなにがわかるのかなと。その点、コミュニティであれば、話して、呑んで、お互いわかっている状態で、うちに来ない?と言えるのは経営の観点で大きい」と語る。実際、コミュニティ出身の熱量の高い人たちを次々と採用することで、受託開発だったアールスリーインスティテュートは大きく変わった。人材流動性が低く、人手不足の昨今、欲しい人材をピンポイントで見つけてくるには、やはりコミュニティが必須になるという。

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事情あってマスクマンな金春利幸さん

 地方という観点でコミュニティについて語った坂上さんは、「地方でガラパゴス化しないためにはコミュニティが必要。高知の経営者でも、自分のやっている産業の競合しか見えてない人は多い。10年で7万人も減っている中で、そんな話をしていてもしようがない」と指摘する。その上で「外に上司や師匠ができたり、助けてくれる人や同じ匂いのする人を見つけられるし、自分が貢献できることはなにか考えるきっかけになる。田舎にいるほど、コミュニティは重要」と語る。

 コミュニティがあれば、組織の壁も超えられる。友岡さんは、「結局、会社が違っても、やっていることや悩みはみんな同じ。業種業態も関係なく同じ穴にはまるので、みんなで同じ穴がどこかを共有し合う。これがいいと思いましたね」と語る。

これからは会社からコミュニティに軸足を移す時代

 次に小島さんが用意したのは、「もしコミュニティがなかったら」というお題。小島さんと金春さんが出会ったのはJAWS-UGだが、「コミュニティ、キモい」と感じていたという話はよく知られている。当時、受託開発に限界を感じていた金春さんがふらっと出かけていったJAWS-UGのイベントだったが、「古くからの常連が溜まって、うぇーいってなってるところに入れなかった」(金春氏)。

 でも、JAWS-UGの文化でどんどん巻き込まれていき、登壇頼まれたら、次は運用に回り、いつの間にか全国代表になってたという経緯。それでも、「結局、巻き込まれることを決断し、今に至っている」とのことで、主体的な意思と決断がそこには存在していた。今回の高知のイベントも小島さんに巻き込まれた人は多いが、結局交通費を払って、時間をかけて来ることを決めるのはあくまで個人の意思。そこに能動的に乗るか、乗らないかで、次が大きく変わってくるというわけだ。

 坂上さんはコミュニティがなければ、そもそも高知にいなかったという。「高知に来て初めてインターネットに携わり、ウェブクリエイターズ高知のようなコミュニティで得たものを会社でフィードバックし、実務で得た知見をまたコミュニティに持ち込むというループができている。もしコミュニティがなければ、会社の中で理解者が得られないまま、東京に戻るか、職業を変えていた」(坂上さん)

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地元高知の坂上北斗さん

 情報システム部員をコミュニティに放流してきた友岡さんは、外のモノサシに触れることで、いろいろな形の化学反応が起こることを期待している。「井の中の蛙なんだけど、すごいことをやってる人もいるので、外に出てもらう。あとは、すごいことをやっている人に会って、自分でもやってみようと思ってもらうというのも目的」と語る。人に教えようとすると、自分のやっていることをかいつまんで、要約する必要があるので、本人にとってもプラスしかない。そのため、可能な限りアウトプットさせるというのが、友岡さんのポリシーだという。「教育の場なので、放流どころか、追い立ててコミュニティに行かせている」(友岡さん)。

 そんな友岡さんからすると、これから所属する組織はコミュニティになるらしい。「今って就“職”って言いながら、就“社”じゃないですか。自己紹介するときにも会社名の後に名乗りますよね。僕はあれが好きじゃない。本来はシステムエンジニアの友岡ですとか、Web開発者の友岡ですとなるのが正しい。でも、今後のピボットの軸足は会社じゃなく、コミュニティになっていくのではないか」と語る。

 坂上さんは、「参加する人が登壇側に行くと、登壇側の人たちと仲良くなる。運営する側になると、運営する人たちと仲良くなる」とコメント。参加者、登壇者、運営者の3つとの立場でコミュニティに関わると、拡がりが全然違うという。特に参加するだけではなく、登壇した方がよいというのはコミュニティの中ではすでに常識。小島さんは、「今は情報の賞味期限がめちゃ短いので、隠していたら、その人が知っていたことすら気がつかれない。だったら、さっさとしゃべって、既知の情報にしてしまう。『あの人、いつも新しいことを知っているよね』というポジションを残した方が価値がある」と語る。

時間もお金もかかる高知にあえて来てもらうには?

 最後、小島さんは東京を起点に交通費がどこまでかかるかを示した「交通費変形地図」を会場に示し、東京から見て高知が一番遠いドーナツに入っている点を指摘。「高知に来るにはすごく時間とお金がかかるんです。それでも高知に来て、講演やセッションをやってもらうにはどうしたらよいか。あとでグループワークでも話す内容だが、登壇者にも考えてもらいたい」と語る。

 今回のイベントを振り返り、「カツオが効くことはわかった(笑)」という小島さんのコメントをフォローするように、金春さんは沖縄でリモートワークをしているメンバーが主催している「Cloud on the Beach」について説明。金春さんは、「昼前に勉強会やって、夕方からそのままビーチパーティになるけど、めちゃ人が来る。高知も同じで、ここでしか味わえない価値を作れば、自ずと参加してくれると思う」とコンテンツの重要さを語る。

 友岡さんはある意味、地元の広島カープも1つのコンテンツであり、そういったコンテンツが高知にはいっぱいあると指摘。「地元の人が地元の人を引きつけるのが一番強いし、信頼できる。だから、(地元の)小島さんがんばれという話ですよ(笑)」と友岡さんに話を振られた小島さんは、地元の参加者に挙手してもらい、「みんな、がんばれ!県内の人には地元に関心を持って欲しい」と華麗なスルーパスを見せる。とはいえ、人が集まってくるのは、「仕組み」よりもやっぱり「熱量」。友岡さんは「なんでこの人、こんなに楽しそうなんだろう、こんなに熱狂しているんだろうと思わせる熱い感じが人を動かす。そして、その熱量は他の人に伝播する」と語る。

 キックオフパネル後は、さっそく「コミュニティとITによる6次産業化と需給バランスの最適化」と呼ばれる産業パネル、「ファンの力でビジネス拡大を実現するロ-カルメーカーの挑戦」というヤッホーブルーイングの特別講演、県内外のコミュニティリーダーズによるLT、高知にコミュニティイベントを誘致するというテーマのグループセッションなどが開催され、懇親会も含めて濃厚な交流の時間が続いた。一部は、後日詳細にレポートする。

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