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JALがスタートアップに求める航空会社の常識を覆すようなアイディア

2015年12月08日 07時00分更新

文● 中山智/ 編集●ガチ鈴木/大江戸スタートアップ 撮影●曾根田 元

 大手企業によるスタートアップ企業への支援が加速している。直接的な投資や協業だけでなく、ピッチイベントの開催、イベントへの協賛、インキュベーションプログラム、アクセラレータープログラムの実施など。大手企業は何を狙い、スタートアップ企業へと近づくのか。

日本航空(JAL) 第2回(全4回)

 2014年6月に“JALチャレンジ宣言”を発表し、「アントレプレナー(起業家)の翼になりたい」と、スタートアップ企業のサポートをしている日本航空。アントレプレナーへのサポート活動の中で、日本航空がどのようなアイディアを欲しているか、前回に引き続き、プロジェクトを担当している佐々木雄司氏に話を伺った。

プロジェクトを担当する日本航空コーポレートブランド推進部シチズンシップグループ 佐々木雄司氏

航空会社の常識を覆すようなアイディアが欲しい

 日本航空が起業家に期待しているのは、「航空会社にいては気が付かないような、常識を覆すようなアイディア」だという。当然、航空事業になにかしら関わりのあるのは必須条件。そのうえで「関連サービス周辺、たとえば医療分野など」(佐々木氏)に注目しているという。

 たとえば、2014年の第1回フクオカ・グローバルベンチャー・アワーズで最優秀賞となったユニバーサル・サウンドデザインの『コミューン』がそれだ。コミューンは高齢者など耳の不自由なひとに向けの卓上型会話支援機器。

難聴者でも聞き取りやすい音に変換して、補聴器なしでも会話ができる『コミューン』

 日本航空とユニバーサル・サウンドデザインは、コミューンを日本航空の発券カウンターに設置して実証実件を行なっている。

 実は空港などの航空関連施設は、実験などを行なうには様々な申請などが必要で非常にハードルが高い。非常にハードルが高いが、空港での各種手続きの経験が豊富な日本航空とタッグを組むことで、より効果の高い実証実験が可能となる。佐々木氏は「資金援助なども効果的ですが、こういった実地での実証実験ができることのほうが、ビジネスを進めていく上で大きなポイントになるのでは」と説明している。

有楽町にある日本航空発券プラザに設置して実証実験を行っている

Googleグラスを使って整備工場で実験

 日本航空では、こういった新しい技術やデバイスへの取り組みを積極的に行なっており、ハワイのホノルル空港ではGoogleグラスを使った新しい整備システムなどもテストしている。これは野村総合研究所との共同実験だが、航空機の整備士が実際にGoogleグラスを装備し、遠隔地に居る日本航空の写真から後方支援を受けながら整備が行なえるシステムだ。

Googleグラスで、遠隔地の後方支援チームとリアルタイムでコミュニケーションとりながら航空機の整備を行なう実験

グローブ型のウェアラブルデバイスの活用も検討している

 このときホノルル空港が選ばれたのは、Googleグラスを使用するにあたっての法律上の問題からだが、このように「日本航空はネットワークがひろく、国内だけでなく国外でも協力できる体制がある」のが強み。

 こういった日本航空のサポート体制のもと、どういったアイディアが求められているか、次回はその点についてレポートする。

――第3回は2015年12月14日に掲載予定です。

佐々木雄司氏(1987年11月25日生まれ)、2010年4月に日本航空株式会社に入社。JALスカイ・成田事業所での航空業務、総務部CSRグループを経て、現在コーポレートブランド推進部シチズンシップグループに所属。スタートアップ支援事業や折り紙教室などの事務局なども担当する。

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