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鍵なし不動産内覧やフロントスルーの宿泊を可能にするスマートロックAkerun

2015年03月04日 16時15分更新

 みなさま、こんにちは。いまは週刊アスキーの吉田です。さて、みなさんスマートロックという製品ジャンルをご存じでしょうか。最近ではさまざまな企業がこのジャンルに参入し、IoTプロダクトとして盛り上がりをみせていますよね。そんななか、2014年7月に他社に先駆けてスマートロック「Akerun」の商品コンセプトを発表し、すでに他社と協業した実証実験も進めている(株)フォトシンスに、スマートロックの事業展開について話を聞いてきました。

Akerun
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フォトシンスは2014年9月に設立されたスタートアップ企業。2014年初頭にAkerunのアイデアを思いつき、半年後に起業したそうです。
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フォトシンスの共同創業者でCEOである河瀬航大氏(左)と、共同創業者でエンジニアの小林奨氏(右)。

 Akerunは、玄関ドアの錠として普及しているサムターン式の錠に取り付けるカバーのような製品で、これを設置することでスマホからBluetooth経由で解錠できるようになります。サムターンの形状はさまざまですが、アダプターを介せばほとんどの錠に対応できるそうです。

Akerun
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Akerunは家庭やオフィスなどで使われている一般的なサムターン錠に取り付けるアダプター。Bluetoothを内蔵しておりソフトウェア的な鍵を持つスマホによって解錠、施錠ができます。

 Akerunは、ネット経由で遠隔で鍵をシェアできるところが特徴です。自分のスマホはもちろん、家族や友人のスマホにネット経由でソフトウェア的な鍵を預けることが可能です。鍵が使える日時も詳細に設定可能とのこと。

 仕組みとしては、各種スマホがAkerunの通信圏内に入るとBluetoothで通信し、解錠を許可された固有ID(スマホのID)であるかどうかをスマホからネット経由でサーバーに問い合わせます。

 許可された固有ID(スマホのID)だった場合は、専用のスマホアプリのボタンを押すことで解錠できるという流れです。

 CEOの川瀬氏によると、鍵を与えられたスマホを持って玄関に近づくと自動的に解錠するという機能も実現できるものの、セキュリティーの観点から無効にしているんだそうです。

Akerun
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ソフトウェア的な鍵を与えれたスマホの専用アプリで解錠ボタンをタップすれば、Bluetooth経由でAkerunに信号が送られてサムターン錠が自動で回転してドアを開けるようになります。
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解錠時は本体のLEDが緑色に光ります。

 施錠したい場合は、Akerunのカバーを軽くタップするだけと簡単。もちろん、自動的に施錠する設定も可能だそうです。

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施錠したい場合は、Akerun本体を軽くタップするだけ。
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もちろん、アプリから施錠することも可能です。施錠時には本体のLEDが赤く光ります。

 Bluetoothでは10メートル程度の通信は可能なので、自宅マンションのエレベーターで最寄り階で降りたタイミングでAkerunのアプリで解錠ボタンを押せば、そのまま自宅にウォークスルーといった使い方は可能ですね。

Akerun
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Bluetoothを利用するので、Akerunから数メートル離れていても解錠や施錠が可能です。

 河瀬氏によれば、まずは法人向けの販売を進めており、すでに物件検索サービスの「HOME'S‎」を運営している(株)ネクストや(株)(株)NTTドコモ、(株)NTTドコモ・ベンチャーズと組んで正式導入に向けて実証実験を進める予定とのこと。

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すでに試作品は完成しており、ネクストとは間もなく実証実験を始めるそうです。

 ネクスト(HOME'S‎)と取り組んでいるのは、不動産物件の内覧をスムーズにするシステム「スマート内覧」。中古物件や賃貸物件は複数の不動産会社が同時に取り扱っていることが多く、鍵を管理している不動産会社に行かない限り、すぐに内覧というのが難しいのが現状です。中には、該当物件周辺の鍵の隠し場所を共有する、内覧時の施錠を番号ロック式にして暗証番号を共有するといった方法で内覧できることもありますが、セキュリティーの観点からは好ましくないですよね。

 Akerunを利用した「スマート内覧」システムを導入することで、不動産会社はネット経由で鍵を簡単に取得できるほか、日時も細かく指定可能なので、1日のうちで複数の不動産会社が短時間で入れ替わって内覧することも可能です。

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鍵を管理している不動産会社はマネージャー用アプリを使うことで、内覧希望のほかの不動産会社に一時的に鍵を渡せます。
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鍵を持っていない不動産会社は、エージェント用アプリを使うことで鍵の申請が可能です。
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エージェントアプリでは、内覧したい物件を内覧予約できます。
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もちろん、内覧希望日時を入力できます。第二希望日まで選べるようになっています。
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内覧予約が送信されると、マネージャー用アプリを使っている不動産会社にその旨が通知されます。
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エージェントアプリで入力した内覧希望日時が表示されるので、ここで「承認する」ボタンをタップすれば、一時的にソフトウェア的な鍵をエージェントアプリ側に渡すことが可能です。
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エージェントアプリがキーを受け取れば、あとは内覧希望物件にスマホを持って行くだけです。複数の鍵を持って物件をはしごすることも可能です。

 一方、NTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズと取り組んでいるのが「39Hotels プロジェクト」。これは、ホテルの部屋の解錠や施錠をスマホで実現可能にするサービス。スマホの固有のIDにより簡易的な本人認証が可能なので、ホテルのフロントを通らずにチェックインやチェックアウトが可能になります。これにオンラインのクレジットカード決済を組み合わせれば、フロントに出向く必要はまったくなくなります。もちろん、ドアの解錠・施錠時の日時はログに残るため、チェックアウト時間も簡単に調べられます。

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深夜や早朝のチェックインやチェックアウトの作業を自動化できれば、フロント業務が軽減されます。スマホを個人認証に使う画期的なシステムですね。

 フォトシンスでは、そのほかにさまざまなプロジェクトを進めているそうです。街中にあるコワーキングスペースなどにAkerunのシステムを導入し、最初に解錠した時間を出社、最後の施錠した時間を退社として記録すれば、サテライトオフィスとして使うことも可能です。一般的なオフィスであれば、社員全員のスマホに鍵を与えておくことで、出退勤記録だけでなくAkerunの設置によって普通の扉をオートロックの扉に低コストで変えることも可能です。

 Akerunの開発が可能になったのは、Bluetooth Low EnergyがiPhoneなどのスマホに搭載されたことと、対応モジュールが安価で登場したことが大きな転機だったとのこと。Bluetooth Low Energyは低消費電力のため、電池駆動で数カ月から1年以上も使えることで実用性が増したそうです。

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秘密が詰まっているAkerunの中身。正面からの撮影はNGでした。この中にバッテリーやBluetoothモジュールが組み込まれています。

 ちなみに、Akerunは、スマホに保存したアドレスデータやFacebookの友達リストから電話番号をチェックして、その電話番号宛てにソフトウェアキーを渡すという仕組みです。鍵を渡す際に、有効期間を設定したりゲストとして一時的に利用してもらうといった設定も可能です。

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Akerunのソフトウェアキーは、専用アプリをインストールしたiPhoneなどから、ほかのスマホに渡せます。まずはユーザーを選択すればOK。
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次に電話番号やアカウント種別などを選びます。
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電話番号は、スマホに記録しているアドレスデータのほか、Facebookから持ってくることも可能。もちろん、キーボードから直接入力しても構いません。
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鍵を使える日時を決める子とも可能です。友達を招く場合に一時的な鍵を生成することも可能ですし、家族用に常時利用できる鍵も作れます。
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フォトシンスのみなさん。もともとは友人同士の会話からAkerunのアイデアが生まれ、そこから起業に発展したそうです。

 Akerunのコンセプト画像もYouTubeで公開されていますよ。

■関連サイト
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