ドワンゴは10月24日、旧ライブドアが2006年に開発したニュースリーダー「livedoor Reader」を現在の運営元LINEから譲り受けることを発表。30日には、新名称「Live Dwango Reader」として引き継ぐことを表明した。条件は非開示で人事異動はない。
10月1日の突然のサービス終了案内から、わずか3週間強でのサービス継続の正式発表を受けて、ネットでは継続を喜ぶ声が上がった。
本件に関するTwitterのコメントなどでは、livedoor Reader利用者から「ドワンゴは技術業界の聖母」と言われる一方、「なぜドワンゴ?」といった疑問も上がっていた。本件責任者であるドワンゴ ネット創作支援部セクションマネージャ 園野淳一氏に譲渡の経緯を聞くと、利用者の1人でもある本人含めエンジニア陣が「ちょっとどうなってるの、困るんだけど!」と騒いだのがきっかけだったという。
ドワンゴ ネット創作支援部セクションマネージャ 園野淳一氏 |
■LINE、livedoor Readerやめるってよ
インターネットでlivedoor Readerの終了を見かけて衝撃を受け「LINE、livedoor Readerやめるってよ」と同社 ネット創作支援部開発部長 細川泰平氏に話しかけたという園野氏。
「えっ困る」「ぼくも困る」と互いに言い合い、しばらく困った困ったと悩んだが、「もう生きていけない」との声をネットに見つけた園野氏は「ユーザーを代表してわれわれが動かなければならないのでは」と使命を感じる。
翌朝、LINE執行役員 佐々木大輔氏に「ちょっとどうなってるの、困るんだけど!」とFacebookで連絡して、「個人的に困るから考え直してくれないか」と交渉したものの、やはり継続は難しいとの答えだった。
ドワンゴが引き取るか──と考えたが、「ドワンゴもおかしな会社ではあるけど、普通に受けてもどのようなシナジーがあるのか問われるのではないかと思った」(園野氏)
■園野氏、にゃんこをひきとる
悩んだ園野氏は、サービス終了発表翌日の金曜日から日曜日にかけ、自宅で「『3日間寝てないわー』って状態」で事業計画を練りあげることに。「企画書をまとめる途中、ちょっと河原で落ち込んでたら、細川から電話ではげまされた。応援がありがたかった」(園野氏)
結果、企画書は無事完成し、ドワンゴ社内の承認を得る。「あっ、これならいける、ぼく天才なんじゃないかと5回くらい思った。自宅で天才なんじゃないかって話をしてたら嫁がウザがってて、あとで見たらフェイスブックに『旦那が自分を天才だと言っていてうるさい』と書かれてた」(園野氏)
園野氏は譲渡にあたっての空気を「にゃんこをひきとってきた感じ」だとたとえる。「家が変わってペットが飼えなくなった、じゃうちで飼いましょうということになった。あっ、これ『飼う』と『買う』のダブルミーニング。ぼく天才じゃないですか」(園野氏)
譲渡後も機能を変えると「ぼくらが困る」という理由で、変更するのは名称のみだ。
名称は「『ライブドワンゴリーダー』にしようかと。略称『LDR』は変わらない、すごくないですか」。略称が変わらないというコンセプトは川上量生会長もお気に入りだったそうだ。「やっぱりぼく天才だと思う(笑)」(園野氏)
■LDRは「スマートニュース」の原点だ
8年前に開発されたlivedoor Readerだが、まだまだ価値はあると細川氏は語る。
「サジェストの元データになる最初の読者層が、ネットから記事を探し出すための道具として、なくなってはいけないもの」(細川氏)
現在は「スマートニュース」「グノシー」などスマートフォン向けのニュース配信アプリが伸びているが、livedoor ReaderのようなRSSリーダーはパソコン向けに作られたニュース配信アプリの原点だったのではないかという発想だ。
livedoor Readerには記事のランキング機能、記事のフィードをソーシャルで公開するなど付加機能も多い。自分自身でアプリを強化・カスタマイズできることはむしろニーズがあるのではないかと考えた。
「ただ、『注目ランキング』にことごとく古いエントリーが入っているが、ぼくとしては『これは思い出だから残してほしい』と話している」(園野氏)
「LDR touch」など有志が開発したiPhoneアプリも「極力サポートしたい」といい、今後は公式にもスマートフォン・タブレット対応を考えたいと話す。
「なぜRSSリーダーが普及しづらかったかというと『RSS』が分かりづらかったから。結局は言い方の問題だった。そこに気づいたぼくは天才(笑)」(園野氏)
■旧LDRを愛してやまないエンジニア達
旧ライブドアがもともと好きだったという園野氏。「インターネットサービス1本でやっていく」という気概に感銘を受け、面接を受けたこともあった。だがタイミングが悪く「2回受けて内定をもらったが、2回とも蹴っちゃった」。
おかげで旧ライブドア担当者にはいまだに頭が上がらないという。恩返しの意味もあり、サービスを終わらせたくないという思いはひとしおだった。引き継ぎ作業をしていても「なぜか運営側より我々の方が詳しかった」(細川氏)と笑う。
実際のサービスは機能そのままに名前だけが変わる「Live Dwango Reader」。サービスを愛用する担当者たちによる、さらなる展開に期待したい。
今回の件で尽力したドワンゴエンジニアメンバーによるLDRの人文字 |
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