2014年01月16日22時00分

Qualcommブースでスマート家電の未来を見た:CES2014

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 モバイル向けプロセッサー『Snapdragon』の大ヒットで存在感を増したQualcommだが、同社はもともと4G LTEをはじめとする通信技術に秀でたメーカーであり、おもにモバイルデバイスを中心とした基礎技術展示の数々で毎回世界の大規模展示会を賑わせている。

 今回のCESでは、スマート家電を組み合わせた“コネクテッド・ホーム”に関する展示もブース面積の多くを占めていた。つい先日Googleによるスマートサーモスタットのベンチャー企業、Nest Labs買収が話題になっていたように、スマート家電の世界はCES 2014における重要テーマのひとつであり、関連展示が一気に増えていたことからもうかがえる。そこでQualcommでの展示内容を見ていこう。

Qualcomm:CES2014

↑CESのQualcommブース。

■Snapdragon関連の展示では次世代4K対応技術に注目

 Qualcomm躍進の原動力になっている『Snapdragon 800』シリーズだが、その最新モデルにあたる805シリーズでは“Krait”コアのプロセッサー部分だけでなく、GPUが“Adreno 420”と前モデルに比べ強化されている。さらに4K(Ultra HD)時代をにらんだビデオ再生やキャプチャー機能をハードウェアレベルで実装している。

Qualcomm:CES2014

↑Snapdragon 805に搭載されたHollywood Quality Video(HQV)技術のデモ。フルHDコンテンツの4Kアップスケーリングだが、単なるピクセルの等倍表示ではなく画素補完を行なっているため、非常に滑らかな映像になっている。

 この概要はデモでいくつか紹介されており、例えば4K再生ではフルHD(1080p)コンテンツのアップスケーリングを“Hollywood Quality Video(HQV)”技術を使った場合の差異がわかるようになっている。HQVは単純なドットサイズのスケーリングだけでなく、画素補完やシャープネスの強調など、映像がクリアに再現されるような仕組みを導入しており、4KコンテンツでなくてもSnapdragonを使った4Kスクリーンでの動画再生が楽しめるという。さらに4K時代に動画フォーマットとして利用されるHEVC(H.265)をサポートしている。

 このほか、Snapdragon関連の展示でおもしろかったのがデジタルペンのデモだ。一見すると普通のボールペンであり、そのままノートへの書き込みも可能だ。だがペンの動きをタブレットが感知しており、ノートに板書した内容をそのままタブレット上に記録できる。ペン先で直接画面をタッチすることで、指やスタイラスを使ったのと同等の効果を得ることも可能というひとり二役的な技術だ。

 このデジタルペンで最もおもしろい部分はそのペンの動きの感知方式で、タブレット両端のスピーカーから発せされる超音波をペンが認識して、その情報を受け取ったタブレット内部のSnapdragonが高速計算することでリアルタイムでペンの位置情報を算出しているという。超音波は人間には聞こえないが、スピーカーの出力と無線通信をうまく使って位置情報を割り出すという仕組みはおもしろい。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

 Snapdragon技術を使ったデジタルペンのデモ。普通のボールペンとして紙への書き込みができるほか、ペンの動きを感知してタブレット側で同じ軌跡を記録できる。またデジタルペンで直接画面にタッチすることでスタイラスのように使うことも可能。読み取り方式に特徴があり、タブレットに内蔵された複数のスピーカーから発せられる超音波をペンが聴き取り、それをリアルタイムで計算処理することでペンの位置を割り出している。

■Qualcommの持つ無線充電テクノロジー

 一部モバイル端末への搭載は進んでいるものの、いまひとつブレイクしないワイヤレス充電機能。Qualcommでは“WiPower”技術のメリットをアピールするデモが紹介されていた。もともとは2010年にQualcommが買収した企業の技術で、位置付け的にはおそらく現在最も端末への実装が進んでいる“Qi”のライバルにあたる。WiPowerがQiに比べて優れている点を実際のデモで紹介してもらった。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014 Qualcomm:CES2014

↑WiPowerと呼ばれるQualcommのワイヤレス充電技術。既存のQiとは互換性がないが、充電ポイントが板全体にまんべんなく配置されているほか、充電中の端末を板の上で動かしても充電が継続する。また障害物を挟んでも充電できたり(充電板に接地する必要がない)、急速充電対応や電球のような機器でも発光が可能な高出力、複数デバイスの同時充電など、使い勝手がいい。

 まず方式の違いにより、WiPowerでは充電中に端末を域内で移動させたり、接点から離した状態でも充電が継続する。また電球を点灯させるほどの高出力や、あるいは複数端末の同時充電など、“いつの間にか充電が停止していた”といったこともなく、使い勝手の良さがアピールされていた。

■iBeaconやBluetooth LEを使うデジタルサイネージ案内版

 興味深いのが、米ニューヨーク市内に実際に設置されているという街の電光案内板に関する展示だ。駅などの人の多い場所に配置されているようで、実際の動作では写真にもあるように簡単な観光案内や地下鉄の運行状況がリアルタイムで表示されている。ただ、これだけでは普通の電光掲示板と大差ないわけだが、このシステムの本当にすごい部分は“近くを通過した人の属性を把握して最適なコンテンツを配信する”という点にある。例えばiBeaconなどのBLE(Bluetooth Low Energy)技術に対応した端末を持っているユーザーであれば、この案内板の近くを通過することで端末所有者個人に最適化された情報がプッシュ配信されてくる。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

 米ニューヨーク市内に実際に設置されているという街の電光案内板。駅などのポイントに置かれているようで、写真のように地下鉄の運行状況が逐一リアルタイムで表示される。
 だが最大のポイントは“近くを通過した人の属性を把握して最適なコンテンツを配信する”という点にあり、iBeaconなどのBLE(Bluetooth Low Energy)技術に対応した端末を持っているユーザーであれば、そのユーザーが観光客なら街の観光ガイドをプッシュ配信、地元の通勤客なら乗り換え情報や最新ニュースなどの配信が行なわれる。写真の白いボックスがその無線情報配信モジュールとなる。

 もし地元の通勤客であれば交通機関の運行状況やニュース配信が行なわれ、さらに新聞社のアプリにWiFi経由でコンテンツがダウンロードされてくるという。一方で旅行者には観光ガイド等がプッシュ配信され、この案内板が情報発信ステーションとしての役割を持っているわけだ。

 このほか、昨夏に発表されたスマートウォッチ『Toq』に関する展示も目立っていた。このToqについては、次の項で紹介するコネクテッド・ホームこと“スマートホーム”でのデモで大いに活躍することになる。

Qualcomm:CES2014

↑Qualcommのスマートウォッチ『Toq』。今回のCESではさまざまなスマートウォッチが展示されていたが、同社はこのToqをさまざまな場面で活用しようとしている。

■Qualcomm製以外も含めた“市販のスマート家電”を体験できるショウルーム

 今回のCESのQualcommブースで最大の目玉といえるのが、このコネクテッド・ホームこと“スマートホーム”に関する展示だ。
 SnapdragonのUltraHD Theaterも長い行列があったが、スマートホームは一般家庭を模したパーティションに区切られた狭い部屋を少人数で見ていくスタイルを採っており、30分~1時間ほどの待ち時間を必要とする展示となっていた。

 従来の単にネットワーク接続されたスマート家電のデモとは異なり、“実際に市販されている製品で実生活をカバーする”ことを意図したより実践的な展示内容になっている点がおもしろい。ゆえに単なるコンセプト展示ではなく、“実際に市販のスマート家電を集めるとどうなるのか”というショウルームになっている。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

 今回Qualcommではブース全体の3分の1ほどのスペースを使い、スマート家電を配置した一般家庭を模したスマートホームを用意。人数限定でのデモツアーを開催していた。入口がすでにスマートロック(錠前)のデモとなっており、スマートフォンを使ってロックの解錠や施錠を行なえるようになっている。なお、誰が解錠したのかはユーザー単位での把握が可能で、これで家に入ってくるとモニターとしても利用されている家庭用テレビに「おかえりなさい、○○」と名前が表示される。この解錠コードは家人だけでなく、ゲストに一時的に権限を与えて入場を許可するなど、柔軟な運用が可能。

 このQualcommブースで今回展示されていたスマート家電はすべて、昨年2013年12月に家電メーカーなど複数社が集まって発表された“AllSeen Alliance”(関連サイト)のものがベースになっている。
 この家電に、ミドルウェアというソフトウェアの形で提供されているのがQualcommが過去3年半開発を続けてきた“Alljoyn”(関連サイト)。Alljoyn自体はオープンソースで提供されているため、家電メーカーが自由に組み込んで共通プラットフォームを持つスマート家電を開発することが可能だ。

 スマートホーム内では家のドアの鍵や空気清浄機、ワインクーラー、照明などをすべてスマートフォンやタブレットといったデバイスで制御することが可能で、さらにセンサー等を介して必要な情報は継続的にモニタリングでき、場合によっては警告としてアラートが送られてくる。この通知メッセージはテレビ、スマートフォン、タブレット等に表示させられるほか、個人所有のデバイスとして先ほどのスマートウォッチ『Toq』に表示させることもできる。

 Alljoynでは“Auto Discovery”という機能が用意されており、同じネットワーク内に存在するAlljoyn対応デバイス(家電)を探索できる。
 たとえばスマートフォンを家庭内ネットワークに接続すると、そこにぶら下がっている家電がすべて“自分がどういうデバイスでどういった機能を持つのか”という基本情報をスマートフォンへと送る。
 これにより、認識されたデバイスの情報をスマートフォン側で見て、さらにリモートで制御することが可能になるわけだ。
 “同じネットワーク”という点がミソなのだが、基本的にはルーターの内側に存在するデバイスであれば、すべてがその対象となる。WiFiで接続されていてもいいし、有線LANやPLCのような電力ネットワーク技術でも問題ない。その違いはソフトウェアであるAlljoyn側で吸収される。

 またToqのようなBluetooth Low Energyのみに対応したデバイスの場合は、スマートフォン経由でAlljoynに参加することになる。そのため、スマートフォンとのペアリングを解除された時点でAlljoynへの接続ができなくなる。WiFiのようなワイヤレス接続の場合のセキュリティーは、WiFiアクセスポイントへのパスワード設定による接続制限のほか、各種認証技術を導入することも可能だという。このように、シンプルさとある程度割り切ったセキュリティーで家電のネットワーク化を実現している。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

↑これらスマート家電には“Auto Discovery”という機能があり、同一ネットワーク内で利用可能なAlljoyn対応のスマート家電があると自動認識し、“どういった機器でどのような機能が利用可能なのか”というプロファイルを取得して制御が可能になる。写真のタブレットに表示されているのは、このようにして自動認識されたスマート家電がアイコンとして表示されている。空気清浄機のアイコンをタップすると、写真のように自動的に動き出してリモートでの制御が可能に。

 前述の“Auto Discovery”の応用例としては、たとえば旅行客がホテルにチェックインした際、部屋に置かれているブラインドや空気清浄機、アラーム時計といったAlljoyn対応デバイスをAuto Discoveryで自動発見し、すぐに手持ちのスマートフォンですべてを制御可能にするといった使い方も提案されている。

 筆者の推測ではあるが、チェックインの際に部屋の鍵の解除コードをスマートフォンに転送し、これがルームキーとしての役割を担うとともに、部屋に設置されたスマート家電へのアクセスキーとしても利用できるようにすることで、違う部屋にあるスマート家電への誤接続を防ぐことが可能になると考えられる。いずれにせよ、いよいよスマート家電が本格的に使える環境が広まりつつあるという印象を強く受けた今年のCESだったといえる。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

↑家電制御だけでなく、センサーネットワークとしての活用も便利だ。例えばワインクーラーの扉が開けられるとそれを感知して先ほどのモニターテレビに通知を行ない、長時間開放されたままであれば、閉じられるまで定期的にアナウンスを行なう。通知先はテレビだけでなく、手元のスマートフォンや写真にあるようなスマートウォッチのToqを指定することも可能。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

↑子供部屋でのネットワークや電気使用状況は逐一監視されており、たとえば写真のようにYouTubeコンテンツを観ている場合には、その旨は逐一両親がモニタリング可能。

Qualcomm:CES2014
Qualcomm:CES2014

↑オーディオルームもやはり、すべてのAV機器がスマート家電としてネットワーク接続されている。スピーカーの制御や再生すべきコンテンツの指定、さらにはシーリングライトの光量や色の変化など、すべて手元のスマートフォンやタブレットで制御可能。

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