7月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられた宇宙ステーション補給機 HTV“こうのとり”3号機(HTV3)は、役目を終え、いよいよ国際宇宙ステーション(ISS)を離脱。みんながiPhone 5の予約でそわそわしている9月14日(金)14時24分ごろ、高度120kmで再突入を開始する。
↑ISSに接近したHTV3のキャプチャー間近となる筑波宇宙センター HTV運用管制室。 |
※写真は打ち上げ後、キャプチャー時の管制室の様子。
55日間に渡ってISSに物資を届けてきたHTV3。宇宙飛行士の生活物資のほか、8月6日からは船外実験用のポート共有実験装置(MCE)や、NASAのソフトウェア無線試験装置(SCAN Tesbed)を曝露パレットに載せて運搬し、ISS日本実験棟“きぼう”の外に取り付けるなど、着々とミッションをこなしてきた。運搬した物資の中には、“きぼう”のロボットアームを使って小型衛星を軌道に乗せる小型衛星放出機構のように、これからミッションが行なわれるものも(当初9月10日の放出を予定していたが延期中)。
そんな大事な役割を終えたHTV3。すでにISSのロボットアームからは放出されており、14日の7時58分に第1回、9時29分に第2回、13時58分に第3回目の軌道離脱(マヌーバ)が完了する。地球再突入時にはJAXA 筑波宇宙センター運用管制室の様子と実況解説が、生中継される予定だ。iPhone 5の予約に走る人もそうでない人も、時間があればぜひ、HTV3の地球への帰還を見守ってあげよう。
ちなみに今回、船内に搭載した再突入データ収集装置『i-Ball』が、高度や温度の情報、燃え尽きる様子の画像を取得する計画だ。56日に渡るミッションの締めくくりをi-Ballが撮影できれば、こちらの画像も同日深夜に公開される。
↑IHIエアロスペースとJAXAが共同研究した再突入データ取得器”i-BALL”。ライバルともいえる海外製の"REBR”と共に、HTV再突入時の機体のデータを集める。 |
生放送は以下のサイトでチェック!
【パソコン向け中継サイト】
■JAXA
宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)特設サイト
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
■SunsetStudio
「こうのとり」3号機・大気圏再突入
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
■cavetube
「こうのとり」3号機の大気圏再突入
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
■知多メディアスネットワーク
「こうのとり」3号機の大気圏再突入
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
【スマホ向け中継サイト】
■上野原ブロードバンドコミュニケーションズ
大気圏への再突入
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
■SmartLive(日本サイバーテック)
JAXA インターネットライブ がんばれ、こうのとり3号機!
(9月14日午後1時45分~午後2時45分)
そのほか、JAXA 筑波宇宙センター、相模原キャンパスなどのJAXA施設、黒部市吉田科学館、なよろ市立天文台でパブリックビューイングが行なわれる(場所はすべてJAXA特設サイトで確認できる)。
--------------------------------
【追記】
宇宙ステーション補給機こうのとり3号機(HTV3)は、14日午後、無事大気圏に再突入した。高度120kmの再突入は推定で午後2時27分ごろ。軌道離脱を行ったのはニュージーランド東側付近の上空。
筑波宇宙センターの運用管制室では、14時10分ごろからHTV3の状態を確認する最後のコマンド送信が次々と行われ、「テレメトリ確認」、「コマンド送信……3、2、1」といったオペレーションが。再突入予定時刻の24分をやや過ぎ、27分にHTV3からの通信途絶をもって再突入と判断。31分ごろには内山崇リードフライトディレクタの確認があって、拍手とお祝いの声が沸いた。
↑再突入をむかえる、筑波宇宙センター運用管制室。 |
↑突入直前、運用管制室の内山FD。ピンクのワイシャツは7月28日のHTV3キャプチャ時にも着ていた“勝負服”。 |
管制室では、HTV2号機のリードフライトディレクタから、3号機の内山FDへお祝いの品が渡され、記念のケーキが差し入れられた。ケーキは、HTV3号機の姿を模したロールケーキに“お疲れ様でした”、“ゆっくり疲れを癒してください”の文字が添えられたもの。先ごろ出版されたHTV絵本『ぼくがHTVです ~宇宙船「こうのとり」のお話~』 のデザイン。いくつかオフノミナルの事態があったものの、再突入は予定の3分遅れで無事に完了し、すぐに再突入計画を作り直したチームの検討を内山FDがたたえる場面も。
↑お祝いで差し入れられたHTVケーキ。絵本の“こうのとり”君を模した手作りのもの。お腹にはちゃんと曝露部の穴が開いていたらしい。 |
記者会見では、小鑓幸雄プロジェクトマネージャーから、「今回は、国産機器も積んでいることなどから重圧があった。リエントリーの計画外軌道など不具合もあったが、運用手順について勉強になった。3号機のミッションをもって『HTVの開発は終わり、定常運用に入る』と胸を張って言える」とのコメント。それにしても「ほっとした」というのが率直な感想だろう。
↑ISSからの分離時におきた計画外軌道について解説する小鑓PM。手にしているのは、HTV3を把持していたロボットアームの先端部(エンドエフェクタ)の模型。 |
↑エンドエフェクタが回転=3本のワイヤーが締まる/緩める動作となるISSからの分離時に不具合があったのでは、とのことだが詳しくは解析中とのこと。 |
さて、今回、燃え尽きるHTV3の画像や、GPS軌跡、温度などのデータを着々と送信する再突入データ収集機『i-Ball』(IHIエアロスペース製)が搭載されていたが、記者会見中に無事、チリ西方沖の南太平洋へと着水。イリジウム衛星を介してデータを送信しつつあることが確認された。
HTVの着水予定区域は現在ニュージーランド東側からチリ西側の非常に広い範囲となっているが、今後、i-Ballのデータが解析できれば、着水範囲を特定することが可能になり、「日本の近海にでも可能になるかもしれない(小鑓PM)」とのことだ。
以下は再突入データ収集機i-Ballが送信したHTV3の様子(JAXAで数多く公開中)。分離後のHTV3は照明設備を持たないが、再突入時の熱で発光しているのだという。
↑与圧部内カメラで撮影した船内ハッチ付近の様子(高度約80km付近)その1。 |
(C)AXA/IHIエアロスペース |
↑カプセル後方カメラで撮影した「こうのとり」の一部(高度約70km地点)その1。 |
(C)AXA/IHIエアロスペース |
↑カプセル後方カメラで撮影した「こうのとり」の一部(高度約70km地点)その2。 |
(C)AXA/IHIエアロスペース |
ISSでは、今後、HTV3が運んだ小型衛星放出機構の放出実施などが行なわれる予定だ。
(C)JAXA
■関連サイト
JAXA宇宙航空研究開発機構
宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「宇宙ステーション補給機(HTV)」
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります