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有機ELの黒か、液晶の明るさか。タッチ対応OLED版とM6版、2つの新型MacBook Proの選び方

2026年11月05日 23時00分更新

有機ELと液晶、それぞれの映像に個性がある
有機ELは黒の引き締まり方、没入感が印象的

 最初に、一般的な液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの違いを解説します。

 液晶ディスプレイは、背面にあるバックライトの光を液晶で調節して映像をつくります。明るい画面を安定して表示しやすい一方、黒を表示するときも光を完全には遮れず、暗部がやや明るく見える「黒浮き」が生じる場合があります。また、バックライトを領域ごとに制御する方式では、暗い背景にある明るい被写体の周囲に、光がにじむように見えることがあります。

 有機ELディスプレイは、画素自体が発光して映像をつくります。黒を表示する画素を消灯できるため、深く引き締まった黒を再現できます。バックライトが不要なので、パネルを薄型化しやすいことも特徴です。一方、同じ画像を長時間繰り返し表示すると、画素の劣化の偏りによって表示の跡が残る「焼き付き」のリスクがあります。近年の製品では、材料の改良や画素の発光制御、補正処理などによって、このリスクを抑える工夫が重ねられています。

 新しい2つのMacBook Proを並べて、iPhone 18 Proで撮影したHDRビデオや写真を見比べてみました。

 OLEDのMacBook Proは特に黒が引き締まり、被写体の輪郭もシャープです。立体的で、奥行き方向にも没入感があります。HDRコンテンツ表示時のピーク輝度は、PROLED XDRディスプレイが2000ニト、Liquid Retina XDRディスプレイが1600ニト。実際の映像では数値ほど大きな差は感じませんでしたが、明部の表現は、液晶が力強く、OLEDは上品で柔らかい印象です。方式の違いが、それぞれのディスプレイの持ち味として素直に現れています。

OLEDのMacBook Pro。黒色が引き締まり、ディテールの立体感が引き立つ印象です

液晶のMacBook Pro。明るい部分に力強さがあります

 PROLED XDRディスプレイは、発光層を重ねるタンデムOLEDを採用しています。M4搭載iPad Proにも同じタンデムOLEDが採用されていますが、MacBook Pro用のパネルは新たに開発したものです。酸化物TFTや発光材料の選定、成膜工程の制御に取り組み、より大きな画面でも明るさと色がパネルの隅々まで均一になるよう最適化しています。

左が液晶、右がOLEDのMacBook Pro。パネル部分の薄さは実際にはほとんど変わりません

タッチとDynamic Islandが加わった

 タッチの反応は良好で、指の動きに素直に追従します。アップルはMacBook Proのタッチ操作を、「キーボードやマウス、トラックパッドを補完する入力手段」と位置付けています。

 構造の詳細は非公表ですが、ヒンジもタッチ操作時の安定性を高めるため、一から設計し直したといいます。実際に触れても十分な安定感がありますが、タッチ操作を頻繁に行なうなら、好みの角度でディスプレイを固定できる外付けのスタンドなどがあると、さらに快適に使えそうです。

OLEDのMacBook Pro。筐体にこもる熱を逃がす排気口は、多くをディスプレイ側に向けず、本体の背面から直接排気できるレイアウトになっています

こちらは液晶のMacBook Pro。排気口がディスプレイ側に向けてレイアウトされています

 今回試用したOLEDのMacBook Proは、標準ガラスのモデルでした。タッチ操作を繰り返すと、カバーガラスにはやはり指紋が残りますが、拭き取りやすくなっている手応えはあります。液晶のMacBook Proと比べると、指紋は目立ちにくいと言えるかもしれません。

 OLEDのMacBook Proには、MacBookシリーズとして初めてDynamic Islandが搭載されました。通知やアプリの進行状況、音楽の再生コントロールなどを表示する領域です。アプリの進行状況を知らせるライブアクティビティは、MacBook Proでは最大2件を同時に表示できます。iPhone 18 Proの最大3件より少ないものの、便利さは十分に実感できます。

同時に2件のライブアクティビティを表示できるDynamic Islandを搭載

 画面上部の中央に触れて下へスワイプすると、Siri AIが起動します。「Hey Siri」と声をかければ、音声でも呼び出せます。たとえば、Siri AIを声で呼び出してカレンダーに予定を追加し、細かな修正はタッチやキーボードで仕上げる。そんな新しいMacBook Proならではの使い方が、これからいろいろと生まれそうです。

Dynamic Islandの部分を指で下向きにスワイプすると、Siri AIが起動します

本体は縦横がひと回りコンパクトに

 アップルが公開している本体の外形寸法を比べると、液晶のMacBook Proが幅312.6×奥行き221.2×高さ15.5mm、OLEDのMacBook Proが幅310.8×奥行き216.3×高さ15.0mmです。OLEDのほうが、幅が1.8mm、奥行きが4.9mm、本体を閉じたときの厚さが0.5mm小さくなりました。筆者にとっては、厚さよりも縦横のサイズが小さくなったことのほうがインパクトがありました。

液晶のMacBook Proの上に、角を合わせてOLEDのMacBook Proを重ねてみました。縦横のサイズがコンパクトになっています

 重さも、同じ14インチ・M5 Maxチップのモデルで比べると、液晶のMacBook Proの1.62kgに対して、OLEDのMacBook Proは1.4kg。220gの差は手に取るとすぐにわかります。筆者が愛用する14インチのM3搭載MacBook Proと比べても150g軽く、持ち運びやすくなったOLEDモデルには物欲をそそられます。

ローカルAIでM6とM5 Maxを比較

 2台のMacBook Proで、ローカルAIの処理能力を比べてみました。今回注目したいのは、Appleシリコンの世代番号と性能の関係で、M6とM5 Maxのパフォーマンスの一端を知ることが目的です。

 それぞれのマシンにOllamaを導入し、80億パラメーターの「Llama 3.1 8B」で、同じ質問への回答生成を5回ずつ、2周計測しました。

 計測したのは、AIが回答の文章を生成する速度「eval rate」と、入力した質問や指示を解析する速度「prompt eval rate」です。どちらも単位はトークン/秒で、数値が大きいほど高速です。

 全10回の「eval rate」の平均は、M6が28.39トークン/秒、M5 Maxが93.27トークン/秒。今回の構成・条件では、M5 Maxが約3.29倍の速度を示しました。

 プロンプト解析の「prompt eval rate」は、単純平均でM6が78.96トークン/秒、M5 Maxが179.20トークン/秒でした。ただし、両機とも10回中9回は、入力82トークンのうち81トークンがキャッシュ済みでした。キャッシュのない入力全体を解析する条件とは異なるため、この平均値だけで解析性能の差は判断できませんが、ひとつの目安として紹介します。

 今回の回答生成では、M5 Maxが新世代のM6を大きく上回りました。ローカルAIの回答生成の速度は、GPUの規模に加えてメモリー帯域幅に大きく左右されるため、上位チップが有利になりやすい処理です。新しい世代のチップが、あらゆる処理で前世代の上位チップより速いとは限りません。最新世代の標準チップと、プロ向けに処理能力を高めた上位チップは、世代の番号だけで優劣を判断せず、用途に応じて選ぶことが大切です。

OLEDのMacBook Proは、側面にThunderbolt 5対応のUSB-Cポートを3基搭載。今回試した液晶のM6搭載MacBook Proは、Thunderbolt 4対応のUSB-Cポートが3基です。HDMI端子1基、3.5mmヘッドフォンジャック、MagSafe 3ポート、SDXCカードスロットは共通です

仕事の実用性か、新しいタッチ創作体験か

 価格とバッテリー駆動時間を重視するビジネスパーソンには、M6搭載MacBook Proが有力な選択肢になりそうです。一方、映像クリエイターやフォトグラファーをはじめとするプロのクリエイターには、PROLED XDRディスプレイを一度は試してほしいと思います。

 OLEDのMacBook Proが先行して実現したタッチ対応ディスプレイは、これからのMacBookのユーザーインターフェースを考えるうえでも注目に値します。

OSのメニューをタッチすると、指で選びやすいように、縦に並ぶ項目の間隔を広げて表示します

Adobe Photoshopでの写真編集を、画面にタッチしながら操作できる感覚が新鮮です

 Siri AIで必要な機能やデータを音声で呼び出し、提示された結果をタッチで選ぶ。Adobe Photoshopのようなクリエイティブツールで、画面上のオブジェクトに直接触れながら創作する。音声、タッチ、キーボード、トラックパッドを場面に応じて使い分けることで、Macによるクリエイティブワークの可能性はさらに広がりそうです。

 近い将来、MacBook Airなどにもタッチ操作が広がり、多くのユーザーから新しい活用法が生まれることを期待します。

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筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

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