最上位のメモリー128GB版(109万4280円!)は一瞬で売り切れ
RTX Spark搭載ノートPC「Surface Laptop Ultra」、ローカルAIで堪能するならメモリーは最低48GBは必要か?
2026年10月12日 17時30分更新
RTX Sparkに賭けているメーカーはMicrosoftだけではない
前述の価格から、Surface Laptop Ultraは安易に万人にはオススメできない製品であることは確かである。しかし、「新しいPCを」というNVIDIAの理想と野望を具現化した最初の製品であることを考えると、単純に値段の高い・安いで判断しづらい。
また、本稿でRTX Spark搭載ノートPCの性能評価をからめて語ることができたらよいのだが、まだその段階ですらないという状況である。来たるレビューの日(そう遠くないはずだ)までの前菜として、まずはRTX SparkにNVIDIAが込めた理想やMicrosoftの施策をまとめてみることにしよう。
「Surface October 2026」は、Surface Laptop Ultraについての発表がメインだったが、Surfaceの発表なのにデルやHP、ASUSといったほかのパートナーメーカーのRTX Spark搭載ノートPCも紹介された。「RTX Sparkにベット(賭けて)しているのは我々だけではない。業界のそうそうたる面子が一斉にベットしているから安心して使って」というメッセージでもある
HPが手掛けるDGX Station for Windowsである「ZGX Fury AI Station」では、32エージェントを同時に実行できるという。本体はディスプレーの左にある黒い箱だ。ご覧の通り、奥行きがかなり長いワークステーション用のケースに入っている
1200億級モデルを動かすための取捨選択
近頃とくに活発なのがローカルAI環境、つまり自分のPC上で動かすAIである。課金することなく存分に利用でき、他人に漏らしたくないセンシティブな情報も自分の制御下でAIに処理させることができるからだ。
だが、ローカルAI環境構築における最大のネックはVRAM搭載量である。本格的に使うとなれば32GBでは全然足りない。AIを本気で使いたければ、金を積んでGeForce RTX 5090どころかRTX PRO 6000を複数枚搭載して、VRAMリッチなPCを組むのがセオリーだ。
VRAMリッチなPCといえば、NVIDIAが出している「DGX Spark」 も選択肢の1つ。RTX Sparkと同じユニファイドメモリーアーキテクチャーを採用しており、メモリーは128GBまたは64GBが選択できる。
ただし、これは量販店に並ぶような製品ではないし、なによりOSが「DGX OS」というチューニングされたLinuxを使用している。AI開発にはよいが、クリエイティブやゲームといった一般的な使い方には少々ハードルが高い。
DGX Sparkは金色のボディーで有名だが、デルのように独自のボディーをまとったモデルもある。上記はデルの「Dell Pro Precision GB10」。NVIDIA製よりもACアダプターの出力が大きいなどの違いがある
一方、ふだん使いのPCには軽快なノート型が選ばれやすい。動画や写真を編集したり、ゲームで遊んだりするためのPCだ。このAI開発用のVRAMリッチなPCと軽快なふだん使いPCとの分断を解消しよう、というのがRTX Sparkの出発点である。
RTX Sparkは薄型軽量ノートPCに本格的なAIモデルをローカルで動かせるスペックを与え、なおかつWindows 11が動作する。NVIDIAのジェンスン・フアン氏は「AI革命をはじめたコンピューター、DGX-1は1PFLOPS(ペタフロップス)でした。そして、価格は2億5千万ドル(a quarter of a billion dollars)で、重さは500ポンドありました。それが今やあなたのノートPCに入っているんです」と語る。
一応突っ込んでおくと、この発言は多分に「ジェンスン・フアン節」が含まれている。この発言におけるDGX-1とは、OpenAIに納品されたP100ベースのものと思われる。P100を8基搭載したDGX-1の演算性能は1台あたり170TFLOPSで、1PFLOPSを超えるには最低6台必要になる。
価格は全部で約80万ドル、重量は約800ポンドなので微妙に数字があっていない。また、DGX-1の演算性能はFP16密行列における性能であるのに対し、RTX SparkはFP4の疎行列における演算性能(DGX Sparkの情報から推察)である点も注意が必要だ。
とはいえ、ユニファイドメモリーを採用し、最大128GBのLPDDR5Xメモリーを搭載することで、1200億パラメーター(120B)も運用できることは、ワークステーション級のVRAMリッチなPCに対抗できるものとして評価はできる。
NVIDIAが公表しているデータによれば、メモリーの帯域は300GB/sec(256bit幅)であり、GeForce RTX 5050(320GB/sec)よりやや細い。トークンの出力スピードはメモリー帯域依存であるため、RTX Sparkはトークンの出力スピードと大規模モデルの運用可能性を天秤にかけ、後者を選んだということだろう。
メモリー帯域の細さはLPDDR5Xのせい、あるいはアーキテクチャーの継承元であるDGX Sparkの仕様からくるものともいえる。ノートPCという形状にする以上、大電力を要求する高速メモリーやメモリーコントローラーにできなかった。あるいはGB10の設計を大きく逸脱し、GDDR6やGDDR67に変更するリスクはとれなかった、といった理由も考えられるが、正確なところは伏せられている。
Arm版Windowsで1200本以上のアプリを検証済み
RTX SparkはWindows 11が動作するが、これはArm版である。RTX Sparkがどれほどすごかろうと、x86向けのWindows上で動作しているアプリが動かなければ意味がない。そこで、NVIDIAは1200本以上のアプリがRTX Spark上で動作し、互換性を保てるか検証している。DirectXはもとよりDLSSやReflexなどのGeForce向けの全機能に対応するとNVIDIAは謳っている。
もちろん、x86向けWindows用に作られたソフト資産の量を考えると、1200本というのは氷山の一角どころの話ではないと思うが、NVIDIAは多量の人的資産を投入している(RTX Spark全体で4000人以上)。Windows向けソフトの大半はx86_64のエミュレーション機能(PRISM)を通して実行されるが、Armネイティブで動作するものも徐々に増えていくことだろう。
ゲームに関してはAAAタイトルからインディーズまで、数百本のゲームの動作を確認済み。「VALORANT」のようにカーネル内で動作するアンチチートに関しても対応済み。LinuxベースのPCでは遊べないゲームも、RTX Sparkであれば遊べるというわけだ
先日配信がはじまった「Gears of War: E-Day」は60fpsで動作するというが、画質や解像度は不明。イベントの性格上なのか、実機を出してその場でプレイするようなデモがなかったので、今の段階では評価しがたい
Windows用のゲームがRTX Sparkで動くからといって、NVIDIA自身はこれをゲーミングPCとして売るという腹積もりはない、というのは関係者とのやり取りを通じて感じ取ることができた。あくまでゲームはGeForceがイチバン、というのがNVIDIAのブランディング戦略のようだ。
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