第893回
インテル製GPU「Crescent Island」の正体、容量480GBメモリーでエージェント型AIとKVキャッシュ問題に挑む
2026年09月14日 12時00分更新
単体480GBメモリーで勝負するエージェント型AIとKVキャッシュの最適化
Crescent Islandのターゲットアプリケーションをまとめたのが下の画像だが、このSoftware Featuresの"KV cache efficiency"がすべてを物語っていると考えていい。
Silicon Featuresの最後には"Prefill optimized"とあり、実際にプリフィルでも活躍できるだろうが、本領はむしろデコードにありそうな気がする。もっとも、使い方はNVIDIAと異なるかもしれない
KVキャッシュの話は連載871回で一度説明しているが、エージェント型AIではプリフィルとデコードで処理を分ける。この際にデコード側では処理の効率化のためにKVキャッシュと呼ばれるものを構築するのが効果的なのだが、問題は昨今のLLMを使うとこのKVキャッシュが肥大化し、GPUのメモリーを食い尽くしてしまうことにある。
NVIDIAが突如としてGroq LPUを採用したのは、デコードの方はKVキャッシュのメモリーアクセスが性能に支配的であり、演算性能そのものは遊びまくっていて、NVIDIAのGPUでは効率が悪すぎたことに起因する。
逆にGroq LPUは演算性能こそ低いがメモリー帯域とメモリー搭載量がNVIDIAのGPUを凌駕しており、プリフィルをNVIDIAのGPU、デコードをGroq LPUと役割分担させることで、実効効率を最大化できるからである。
そしてCrescent Islandは(前ページ最初の画像にある脚注にも書いたが)このGroq LPUにあたる処理をターゲットにしているように見える。もっと正確に言えば、インテルはCrescent Islandでプリフィルとデコードの両方を分離せずに実行させるように見える。
理由は? というと、Crescent Islandには広帯域なスケールアップ・ネットワーク用のI/Fがない。PCIe Gen5 x16経由でKVキャッシュを他のカードと共有するのは帯域的に非現実的である。
そしてエージェント型AIではプリフィルこそ演算性能がモノを言うが、処理時間の大半を占めるデコードはメモリー帯域とメモリー容量がモノを言う。帯域だけならHBMの方が有利だが、ここであふれるとその先が遅くなる。
Crescent Islandは帯域はHBMにおよばないが、480GBの容量はKVキャッシュを丸ごと収めるのに十分であり、そして自分のローカルメモリーにKVキャッシュが全部収まってるなら他のノードにアクセスする必要もない。NVIDIAとはまた別の方法でエージェント型AIに最適化を図ったわけだ。
下の画像がメモリー容量に関する利点をまとめたものだ。同じモデルなら多くのセッションを処理できるし、同じモデルでより長いセッションを実施できる。
最近はKVキャッシュの圧縮などがいろいろ話題になっているが、これもちょっとしたことで精度が猛烈に落ちたりするので、なかなか難しい。FP8のままウエイトとKVキャッシュを収められるというのは確かに大きな売りである
NVIDIAではメモリーがあふれるので複数枚のGPUを連携させる必要があるところを、Crescent Islandでは1枚で実行できる。実行できるというよりも、1枚で実行する事にフォーカスした、というのが正確かもしれない。
今回は性能評価などは当然示されていないが、同じコストあるいは同じ消費電力枠で言えば、NVIDIAやAMDのソリューションよりも効率良くエージェント型AIを実行できる可能性は高い。問題は480GBが本当に将来のモデルでも十分か? というあたりであろう。
ただこうなると、ますますSambaNova SN50とどう棲み分けするのかが謎になってきたというべきか。発表の際にはこのあたりが明確になるとうれしい。
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