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1000A超のAIプロセッサーをどう動かすか? Googleが実践する垂直給電(VPD)の最前線

2026年05月11日 12時00分更新

配線損失を5%へ激減させる特効薬
Google流「垂直給電」の実力

 さて本題である。GoogleもまたVPD(Vertical Power Delivery:垂直給電)をすでに実用化している。実はこれに関して同社は2024年のAPEC(IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition)で"Vertical Power Delivery for 1000 Amps Machine Learning ASICs"という論文を発表しているので、ここから解説したい。

VPDの概要。後で出てくるが、この構成は最初の世代(Gen 1)のもので、すでにGen 1.5を挟んでGen 2が量産中だそうである

 下の画像のFig 1はASICを搭載する基板の温度を示したもので、実際VRからASICの間の数十mmの距離の間の温度が非常に高いのは、ここの部分で電力損失の大半が発生しているためである。

Fig 1は上側にVRがあり、下側にASICが搭載されている

 そこでVPDを利用することで、この配線長を最小化する(&配線の太さをより太くすることで抵抗を減らす)ことで配線抵抗を減らそう、というのが目的であることは前回も紹介した通り(Fig.2)。

 一番下にあるFig.3は4種類のASICのコアに供給する電力と配線損失を比較したものである。消費電力が大して大きくないものであれば、そもそも電流が少ない(あと昔のASICは動作電圧も高いため、その分電流が少ない)が、最新のもの(ASIC 4)では従来方式のままでは25%近くの配線損失が発生するのに対し、VPDを使うとこれが5%程度にまで削減できるとしている。このグラフはVPDを実装する動機として十分な説得力がある。

 では実際にどんな構造か、というのが下の画像だ。Fig 7が基板とASIC、それとVPDモジュールおよびVPD用のクーリングプレートである。前回富士通のSPARC64 XIIのVPDの実装方法をご紹介したが、Googleのやり方もこれにかなり近い。

ボトムのクーリングプレートがかなり頑丈かつ、VPDモジュールを上下から挟み込むようになっているのは、熱による基板の変形をこれで抑え込むためだろう

 やはり、VPDモジュールを直接基板に実装するのはいろいろと難点があるようだ。論文では熱による歪みの解析結果なども示されており、この構造でうまく歪をカバーできるとしている。VPDモジュールが下の画像である。

基板の厚みは5mmくらいは確実にありそう(10mmまではなさそうだが)。上面に並んでいるのは集合タイプのコンデンサー+パスコンの山と思われる

 Fig.5がモジュール本体で、結構な厚みがあることがわかる。ちなみにこのモジュールは電圧0.8V、連続で1000A、ピークで1300Aの出力が可能な構成(内部は24フェーズだそうだ)。下のFig.6はこのVPDのテスト風景であるが、左の基板(3×IBCと書いてあるところ)から48Vが供給され、それがこのVPDで0.8Vに落とされて供給される形だ。

 ちなみに右の評価基板は本来と逆で、上にVPDが載っており、それが銅製のクーラーで冷却されている。ASICの代わりにLoad Boardと呼ばれるもの(おそらく中身は抵抗の塊だろう)が下にくっついており、これが1000Aを消費しているので、さすがにこれは水冷でないと間に合わないようだ。

 論文によればVPDのシステムを使うことで、流れる電流が増えても高い効率性を維持し続けられるとしている。この論文は2024年のAPEC(2024年3月)で発表されたものなので、試作や実験は2023年の時点ですでに完了している話である。

横軸が供給電流量、縦軸が効率である。100Aあたりであまり効率がよろしくないのは、DC-DCコンバーターの最適設計が400A以上になっているためだろう。それはそれとして、従来型の供給方法(青)では電流が増えると急激に効率が悪化するのが、VPDを使うと悪化はするものの大分緩やかになっているのがわかる

 その後どうなったのか? というのが下の画像である。ここまで紹介してきたものはGen1に相当するもので、こちらはすでに広範に利用されていると説明されている。

Future Gensでは定格2000A以上/最大5000A以上という代物が現在開発中らしい。おそろしい

 これに加えてVPDに改良を加えたGen 1.5を挟み、現在はGen 2が利用されていることが明らかにされた。VPDの信頼性に関しては、Gen 1のものでも1年経過後の故障率は1桁台のDPPM(Defective Parts Per Million:100万個あたりの故障数)となっており、確かに実用に耐える品質が保たれていると言える。

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