モバイルの祭典が終わって思ったこと
参加した4人が大いに語る!
3月2~5日にかけて、スペイン・バルセロナにて「MWC Barcelona 2026」(以下MWC26)が開催された。出展者数も参加者も増えて、毎年4日目は全然人がいないのだが、1日目と変わらず人がいたりと大盛況に終わった。
日本キャリアからは、ドコモ、KDDI、楽天モバイルが出展し、インフラ系ではNECや富士通なども大きなブースを構えていた。総務省によるジャパンパビリオンも盛況だった。
ここ数年はAIやネットワークが主役だったが、今年は端末も多く登場し、スマホはまだまだ進化することを見せつけられた。
そんなMWC26に、ASCII.jpチームからはスピーディー末岡、携帯研究家の山根康宏氏、IT・旅行ライターの中山 智氏、そして今年はニューカマーの石井 徹氏がASCII.jp班にジョインし、全員で44本も記事を投入した。
会期が終わったあと、多くの取材をこなした4人に今年のMWC26について語ってもらった。
「スマホのMWCが復活!」
携帯研究家:山根康宏
スマホは新製品が昨年よりも活況で、MWC直前にサムスン、シャオミ、HONORが発表会を行ない、MWCの自社ブースで大々的に展示。HONORのジンバルカメラが飛び出るRobot Phoneは動くモデルが初公開された。
また初出展のvivoは今年春発売予定機種をフライングで限定公開。最近話題が薄かったTECNOはモジュラーフォンのコンセプトとトニーノ・ランボルギーニコラボモデルを発表し、大きな注目を集めた。
やはりスマートフォン新製品はMWCの華といえる存在で、端末展示を見るだけでも十分楽しめた。
スマートフォンのAIはエージェントAI搭載の動きが進んだ。ZTEはnubia M153を発表、中国版TikTokを運営するバイトダンス開発のAIエージェントをOSに組み込み、音声指示だけでショッピングなどを完結させられる。
ネットワークではAI-RANが主流に。Open RANの普及が始まり、ネットワークをインテリジェンスに制御することで、無線リソースの最大限の活用やエネルギーの最適化を目指す。また、衛星通信関連の展示も多く、NTN関連技術は昨年よりも大きく増えていた。次世代通信技術としては、5G Advancedの名前は見かけなくなり6GとWi-Fi 8の技術展示が増加。通信速度向上よりも信頼性(低遅延、他接続)、センシングなど、コンシューマーよりもスマートシティーやスマートファクトリーなど、社会・産業インフラとしての期待がかかる。
1月のCES同様、ロボットの展示も多かった。CESではフィジカルAIのデモとしてのロボットの展示が目立ったが、MWCでは複数台のロボットをまとめて運用するフリート管理、遠隔監視、ソフト更新、ログ収集、シナリオ切り替えなどをプライベート5Gで制御。インフラとしてのロボット活用に視点が置かれていた。
このようにMWC26は最新のネットワーク技術だけではなく、IT業界のトレンド技術も取り込み、さらにスマートフォンも各社から様々な製品が発表され、通信業界のこれからの動きを十分感じ取れるイベントだった。
6Gについてはまだおぼろげ
旅人ライター:中山 智
6Gについてどのようなネットワークになるのか、おぼろげながら見えてきた感じで。どの通信会社もベンダーも「AIファースト」的な感じで捉えていて、単に面白画像や動画を生成するのではなく、あらゆることにAIを活用して生活が成り立つ社会が到来し、それを支えるのが6Gとなりそう。
また衛星通信の展示も多く、近い将来「圏外」という概念がなくなりそうだなとも思いました。
7年ぶりのMWCで見えた「AIがネットワークを変える」現実
モバイルジャーナリスト:石井 徹
筆者が最後にMWCを取材したのはコロナ禍前の2019年のことです。当時は会場のそこかしこで5Gの文字が躍っていましたが、まだ商用化前ということもあり、具体的なソリューションは通信ベンダーのデモで雰囲気を掴むのがやっとでした。折りたたみスマートフォンも登場したばかりで、ディスプレーメーカー各社が試作機を並べていたのを覚えています。
7年ぶりのMWC26で、景色はがらりと変わっていました。5Gは当たり前のインフラとして溶け込んでおり、積極的にアピールするブースが見当たりません。折りたたみスマホも、サムスンやファーウェイの3つ折りが製品として展示され、Honorは2つ折り機を水槽に沈めて防水性能をデモしていました。7年前に試作機だったものが、もう成熟期に入っています。
6Gは2030年の商用化に向けて標準化が進んでいますが、ブースで具体的なユースケースを見せるというよりは、基調講演やプレスイベントで各社の構想が語られる段階でした。
では今年のMWCで何が主役だったのか。各社が口を揃えていたのは「AI」です。
MWC開幕前日、Nokiaのプレスイベントに足を運びました。Justin Hotard CEOが壇上で語ったのは、ネットワーク設計の前提を根本から見直すべきだという主張です。
AIトラフィックは月間77エクサバイトに達し、その半数以上をモバイル回線が担っているといいます。今はチャットボットなど人間とAIのやり取りが中心ですが、今後はAIエージェント同士が自律的に通信する時代が来ます。
NokiaとNVIDIAはさらに踏み込み、基地局に搭載したGPUをネットワーク処理以外のAIワークロードにも転用する「AI and RAN」を提唱しています。いわばモバイルの基地局をエッジAIの拠点にする発想で、通信事業者にとっては既存設備から新たな収益を生み出す手段にもなります。商用化は2027年を目指しています。
7年前のMWCでは、5Gという言葉が会場を覆っていたものの、それが生活をどう変えるのかは誰もまだ実感できていませんでした。今回のMWCで「AI」が占めていた位置は、あの頃の5Gとよく似ています。ただし、AIトラフィックはすでに月間77エクサバイト規模で発生しており、ネットワーク設計を変えるべきだという議論は仮説ではなく、数字に裏打ちされた現実です。次にバルセロナを訪れるとき、通信インフラの景色はまた変わっているはずです。
フィジカルAIの世界がすぐそこに
アスキースマホ総研:スピーディー末岡
今年のMWCは初となる現地からの生放送をしました。準備などもあり、かなり大変ではありましたが、綺麗な画質で東京側とのやり取りもスムーズで、機材とネットワークの進化をダイレクトに感じられました。バルセロナはMWCをしているわりには電波の環境がよくなかったので……。実際、いまだに地下鉄では圏外が多くあります。
取材のアポを入れまくったのもあり、あまりブース周りはしなかったのですが、それでも目立っていたのが中国勢のロボットです。1月のCESではフィジカルAIがキーワードでしたが、MWCでもそれは同じでした。ダンスをさせたり、荷物を運ばせたりとエンタメから産業用まで、さまざまなデモが行なわれていました。今後、人間が入れないところに投入されていくのでしょう。
みんなも言ってますが、AIとネットワークのコンビネーションはこれから当たり前になってくるでしょう。昨年はAIという言葉が先行していましたが、今年は何歩も進んでAIがスマホだけでなくインフラにも使われて、我々の生活が快適になるということがわかりました。正直、たったの1年でAIがここまで成長するとは思いませんでしたが、この進化のスピード感に置いていかれないようにしなければ、と身が引き締まったMWC26でした。
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