LINE WORKSに現場の音声をつなぐことで化学変化 トランシーバーアプリ「LINE WORKSラジャー」とは
2025年02月18日 11時00分更新
2月13日、LINE WORKSはトランシーバー機能を持つ新製品「LINE WORKSラジャー」を発表した。AIが声を文字に、文字を声に変換してくれる、音声とテキストの双方向のコミュニケーションを実現する新しいツールだ。今回は、LINE WORKSラジャーを開発することになった経緯や活用シーンについて、LINE WORKSラジャー事業責任者 小田切悠将氏にお話を伺った。
LINE WORKSのアセットとAIを掛け算したら面白いものになる
「私は元々、LINEのAIカンパニーにいました。2023年4月にLINE WORKSと統合し、LINE WORKSのアセットとAIを掛け算したら面白いものができると考え、メンバーでいろいろと検討する中で出てきたアイディアがこのトランシーバーアプリ、LINE WORKSラジャーでした」と小田切氏。
LINE WORKSは現場で使われるコミュニケーションツールとしているものの、たとえば、建築現場や飲食店、介護施設、病院といった現場では物理的に手が離せずにスマホを出してチャットを打つことができない、ということはよくある。そのため、電話や大声、そしてトランシーバーでコミュニケーションしている現場は多い。
一般的なトランシーバーは少々離れていても通話できるので便利ではあるのだが、電波の届かない場所や障害物、さらには建物の構造による距離の制約といった問題が顕在化していた。たとえば、3階建ビルにある居酒屋においては、1階と3階間で直接通信が成立せず、必然的に2階のスタッフという中継地点が必要となる。
また、小田切氏が市場調査で行なった顧客インタビューでは、トランシーバーは会話の意思伝達ロスが10%程度発生しているという話もあったそうだ。メールやLINE WORKSでやり取りする中で、10%も情報がロスしたら大問題だが、実際にトランシーバーを使っている現場ではこれを当然の前提として受け入れているという。
こうした中で、現場における確実な意思伝達と、よりスムーズなコミュニケーションを実現するための解決策として着想されたのがLINE WORKSラジャーだ。製品名の由来は了解を意味する「ラジャー」に由来している。従来のトランシーバーのようなコミュニケーションロスを出さず、発信者の意思が確実に相手に伝わり、相手側でその受信が確認されるという双方向のコミュニケーションを実現するという意図が込められているのだ。
「LINE WORKSラジャー」での会話は自動的にテキスト化が可能
LINE WORKSラジャーの特徴は、シンプルな操作性と、最先端のAI技術による高度な音声処理機能にある。基本操作はプッシュ・トゥ・トーク方式を採用しており、利用者はアプリのボタンを押すだけで、音声によるコミュニケーションを開始できる。このシンプルな操作性は、スマホでテキストを打つ余裕のない現場においてとても便利で、迅速な連絡や指示伝達を実現できる。
さらに、その音声はAIによって文字起こしされ、チャット画面に自動的に表示される仕組みとなっている。別の作業中で話を聞けなかった場合も、後から内容を確認できるのが便利だ。
そして、この認識精度はとても高い。実際にデモを見せていただいたのだが、特に声を大きくしたりハキハキと話さずとも、普通の会話をきちんと認識していた。
「アメリカの大企業がAIを作っていますが、いろいろな言語を学習する中で、英語対応が第一で、日本語対応は副産物的なものだと思います。そこで、われわれは日本語の音声を集めて、日本語で文字のデータを用意し、学習させています。日本語に特化しているので、とても文字起こしの精度が高いのです。この精度の高さは触っていただけるとわかると思います」(小田切氏)
トランシーバーで会話しているぶんには「えー」とか「あー」というフィラーは気にならないのだが、テキストになると大きなノイズになる。それらもLINE WORKSラジャーなら、読みやすいように除去してくれるそう。
そして、絶対に覚えておきたいポイントは、LINE WORKSとの連携だ。ラジャー側からの音声がLINE WORKSのトークに届くだけでなく、LINE WORKS側から入力したテキストがトランシーバー側には音声合成で再生される。本社から送信したトークも直接現場に届けられるので、店長や現場監督などが仲介する必要がない。リアルタイムにコミュニケーションできるメリットは大きい。合成された音声も自然な感じで、違和感なく利用できるだろう。ぜひトランシーバーとビジネスチャットがつながる世界を体験してみてほしい。
画面はとてもシンプルなUI/UXになっている。大きな通話ボタンを押しながら話すだけでいい。通話相手やチャンネルを選ぶ画面やチャット画面もLINE WORKSで培ったノウハウが活用されており、とても使いやすい。設定を変えれば、ボタンを押して会話をはじめ、終了する時にまたボタンを押す、という操作方法にすることもできる。
LINE WORKSラジャーはLINE WORKSファミリーでLINE WORKSとも連携できるが、独立した製品でもある。この形にするのはけっこう悩んだそう。
「LINE WORKSもそうだったのですが、その人にとって業務で初めて使うアプリになる可能性が十分に考えられるのです。そうすると、やはり取っ付きやすくしておく必要があります。LINE WORKSに機能を搭載すると、どうしても既存のUIに引っ張られてしまうので、最高のUI/UXにするためにゼロベースで設計するという選択をしました」(小田切氏)
声と文字がつながることで業務効率がアップ
現場とLINE WORKSがつながり、その会話の記録がすべて残る。業務の中で、このメリットはとても大きい。飲食店や小売業においては、店内での連絡や急なトラブル対応が求められる場面が多い。従来は他に手段がないので館内放送や口頭での指示伝達が主流であったが、LINE WORKSラジャーなら個々の担当者にピンポイントで情報を届けることができるようになる。顧客に余計な情報を聞かせなくてもいいし、業務の効率化にも寄与する。
発言をテキストで振り返ることができるので、聞き逃したとしても相手に再度連絡することなく内容を確認できる。顧客トラブルや社内のハラスメントなどもわかるので、本社がいち早く対応することも可能。福祉施設などで投薬を管理する際、記憶や手書きだとミスが発生しやすいが、LINE WORKSラジャーでやり取りしておけばトラブルを回避できる。
「LINE WORKSラジャーを使えばコミュニケーションのエリアが広がります。これまでトランシーバーを使えなかった人たちも、1対nのコミュニケーションの場に入ることができます。例えば、飲食店の現場に直接本社やスーパーバイザーが関与したり、車のディーラーであれば店舗間でコミュニケーションすることによって、その日の状況やトレンドを把握したり、小売店であれば在庫を融通させたりできるなど、働き方が変わってくると考えています」(小田切氏)
これまでにない使い方も生まれてくると考えているそう。たとえば、自分宛てに記録を残すために話す、というのもあり。また、棚卸をする際、在庫を読み上げるだけで記録できるようになるので効率が格段に向上するだろう。
LINE WORKSラジャーはボタンを押して話したり、聞いたりするときに動作するので、スマホのバッテリー消費が抑えられる。LINE WORKSの通話機能でも音声コミュニケーションは行なえるが、つなぎっぱなしにしていたらスマホのバッテリーがすぐなくなってしまう。やはり現場の使い方としては、トランシーバー由来のLINE WORKSラジャーの方が便利なのだ。
また、ニーズに合わせて調達が手軽というメリットも大きい。会社がトランシーバーを用意する場合、まずはどこで購入するのかから調べる必要がある。追加する場合も見積もりを取って購入し、しばらく待つことになる。しかし、LINE WORKSラジャーはスマホを利用するので、アカウントを追加するだけで済む。
30人利用のフリープランから環境に合わせたプランを用意
価格はLINE WORKSと同じく、30人まで利用できるフリープランのほか、月額450円(年払い)のスタンダードプラン、月額800円(年払い)のアドバンストプランが用意される。フリープランとスタンダードプランは音声のやり取りは可能だが、AIによる文字起こしや読み上げはできない。また、フリー版で会話できるのは連続40分までという制限がある。LINE WORKSと連携するのであれば、アドバンストプランを契約したほうがよいだろう。
なお、スタンダードとアドバンストプランは1か月無料でトライアルすることもできる。試してみたいなら、LINE WORKSのサイトから問い合わせよう。
LINE WORKSラジャーのリリースは2月18日。LINE WORKSと組み合わせることで、大きく業務フローを改善できる可能性がある。すでにトランシーバーを使っている現場はもちろん、リアルタイムコミュニケーションに課題を持っている企業は検討してみてはいかがだろうか。
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