第796回
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2週空いてしまったが再びHot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPUに戻る。第7弾は、MetaのMTIA v2である。初代であるMTIAは連載730回で名前だけ出てきたが、内部についての説明はしていないので、まずはここから話をしたい。
RISC-Vベースだが限りなく専用プロセッサーに近い
AI推論用アクセラレーターMTIA v1
MTIA v1は2023年に発表された。目的は推論処理の高速化であり、特に同社のサービスのRecommendation EngineをGPUベースから置き換えることを目的としていた。
製造プロセスはTSMCのN7で、800MHzで動作。INT 8で102.4TOPS、FP16で51.2TFLOPSの性能を持つとされる。
内部構造は下の画像のようになっており、中央に8×8で合計64個のPE(Processor Element)が配される。PEの内部構造そのものは未公開であるが、おのおののPEには2つのRISC-Vベースのコアが搭載され、片方にはVector Engineも搭載されている。
また行列の乗算と加算、データ移動、非線形関数(アクティベーション用と思われる)のための専用命令が追加されているそうで、RISC-Vベースとは言え限りなく専用プロセッサーに近い。おそらくはVector Engineを搭載しているコアには行列の乗加算や非線形関数のアクセラレーターが搭載され、こちらが演算処理を行なう。
もう一方のコアはデータ移動のアクセラレーターが搭載され、これが処理の制御であったり、ほかのPEとのデータ移動だったりをつかさどるものと思われる。64PEでINT 8で102.4TOPSなので、1PEあたり1638.4GOPS。800MHz駆動だから1サイクルあたり2048 Opsという計算になる。
これをVector Engine(つまりSIMD)だけで実装しようとすると巨大なSIMD(16384bit幅!)が必要となるが、どうもこの102.4TOPSは行列乗算(俗に言うTensor Engine)の結果と思われるので、そこまで大規模な回路でなくてもなんとかなりそうだ。これに加え、各PEには128KBのSRAMが搭載されており、スクラッチパッドのように利用可能なものと思われる。
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