「Starfield」
Starfieldは画質プリセット“低”を選択しつつ、レンダースケールはFSR 3“バランス”相当の58%に設定。都市ニューアトランティスのMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。
Ryzen環境におけるStarfieldは、CCD内のコアが6基と8基で性能が大きく変化するという特徴的な挙動をするゲームなので、マルチスレッド性能が重要なゲームではあるが、CCDが2基あることのメリットはほとんどない(1CCDのRyzen 7の方がより効率的に回る)。今回の検証でもAGESA 1.2.0.2導入前・後で平均フレームレートにほぼ変化はなかった。最低フレームレートは伸びているが、AGESA 1.2.0.2の恩恵が理論上ないRyzen 9 7950Xでも伸びたため、単なる計測のブレの範囲内であると思われる。
CPUの消費電力においてもAGESA 1.2.0.2導入前・後で違いはみられなかった。
「Cities Skylines II」
最後に試すのはCPU負荷の非常に高いCities Skylines IIだ。画質“最低”をベースに、アンチエイリアスはFXAAに設定。内蔵のアップスケーラーは“無効”とした。人口60万人弱の都市を用意し、フライバイ的な視点に設定したカメラをマップの端から端まで移動した際のフレームレートを計測した。時間を止めずにリアルタイムでシミュレーションが動いている状態で計測している。
AGESA 1.2.0.2導入後のRyzen 9 9950Xでは、伸び幅はわずかではあるが、平均フレームレート・最低フレームレートともに上昇。一方Ryzne 7 7950Xはどちらにおいても大きな変化は見られない。Cities Skylines IIにおいてはAGESA 1.2.0.2は一応の効果ありといったところだが、ゲームでの影響は微々たるものだ、という注意書きは必要だろう。
こちらもCPUの消費電力に関して、AGESA 1.2.0.2導入前・後で特筆に値するような差異は出なかった。
AGESA 1.2.0.2導入後はメモリーのトレーニング時間に注意
以上で簡単ながらAGESA 1.2.0.2導入前・後の検証は終了だ。AGESA 1.2.0.2導入によってRyzen 9 9950Xのコア間レイテンシーは劇的に改善されたものの、その効果を実アプリで実感することはなかなか難しいと言わざるを得ない。
ただ先日の分岐予測改善のコードの存在やAGESA更新によるレイテンシー改善を見る限り、AMDはRyzen 9000シリーズの出荷に関しいろいろなものを前倒しにして進めてきたという仮説がさらに真実味を増した。かつてのMeltdownやSpectreのようにアップデートによって性能が劇的に下がるわけではなく、むしろ改善する点は評価したいところだ。
ただし今回試したAGESA 1.2.0.2準拠のBIOSを導入すると「Ryzen 9000シリーズにおけるメモリーのトレーニング時間の著しい延長」がある、という点だけは注意が必要だ。DDR5はCPUを装着した直後にメモリーのトレーニングを実行するので初回起動時間が長くなるというものがあり、特にRyzen 7000シリーズは初回起動時間がインテル製CPUに比して長めになっている。
しかし今回のAGESA 1.2.0.2準拠のBIOSを導入した結果、Ryzen 9000シリーズのみ初回のトレーニング時間が非常に長くなった。Ryzen 7000シリーズもしばし待たされるが、Ryzen 9000シリーズは最低でも10分、時には15分程度待つ必要があるようだ。
このトレーニング中は何かトラブルがあって止まっているのか判別がつかないため、自作PCに慣れていればいるほどドツボにハマるというおまけ付き。今回試したBIOSがβ版なせいもあるが、起動時に心を揺さぶられるのが嫌なら、正式版のBIOSを待つ方が得策だ。
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