マルチスレッド性能が鍵になるゲームでは効果あり
ではゲーム系の検証を始めよう。今回もGPUボトルネックが出にくくなるようゲームの画質は最低設定とし、解像度はフルHDに統一した。また、フレームレートの測定は「CapFrameX」を使用する(例外あり)。また、CapFrameXによるフレームレート測定と当時にPowenetics v2を経由しCPUがベンチマーク中に消費した電力(の平均値)も取得している。
「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー」ベンチマーク
まずはファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー公式ベンチマークを利用する。画質は“標準品質(ノートPC用)”を選択、アップスケーラーはFSRとしたが、レンダースケール(RS)は100%に設定し動的な解像度変更も無効化した。このベンチのみフレームレートはレポートで提示されるフレームレートを比較している。
FF14ベンチにおいても、AGESA 1.2.0.0Aでコア間レイテンシーの改善するRyzen 9 9950Xではスコアーやフレームレート向上の効果が確認できた一方で、コア間レイテンシーに影響のないRyzen 7 7950Xでは改善がみられなかった。ゲームにおけるマルチスレッド処理はゲーム側の設計次第で大きく変化するが、このFF14ベンチにおいてはコア間レイテンシーの改善が効くような設計でないかと考えられる。
「Black Myth: Wukong」
Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)も専用のベンチマークツールを使用した。画質は“低”、レイトレーシングは無効とした。さらにFSR 3は有効(デフォルト)としたがレンダースケールは100%に設定、フレーム生成は無効化した。ベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
AGESA 1.2.0.2導入前・後で平均フレームレートはまったく変化していない。これは先のFF14ベンチとは対照的なパターンといえよう。AGESA 1.2.0.2導入後は最低フレームレートが若干向上しているが、Ryzen 9 7950Xでも似たような効果が得られており、コア間レイテンシーの改善はRyzen 9000シリーズのみ観測結果や先のUL Procyonのスコアー傾向と矛盾する。効果はあるかもしれないが、計測時のブレではないと断言できるには至らないといったところか。
フレームレートがほとんど変化しないということは、仕事量も変わっていないということ。これは消費電力のデータからも裏付けられる。
「Cyberpunk 2077」
コア間レイテンシーの改善がAGESA 1.2.0.2の目玉であるなら、マルチスレッド性能が問われやすいような挙動をするゲームでどう変わるかを見た方が効率が良さそうだ。そこでCyberpunk 2077の出番となる。画質は“低”とし、FSR 3はフレーム生成はオフとしたがアップスケーラーは“バランス”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
FF14ベンチと同様にAGESA 1.2.0.2導入後はRyzen 9 9950Xのフレームレートが向上した一方で、7950Xについてはほぼ変化しなかった。コア間レイテンシーがほぼ半分になったのにゲームのフレームレートの伸びが小さい理由は、単純にCCDをまたぐような処理はそれほど発生していないことを示している。
事実Ryzenのチップセットドライバーはプロセスの処理を優秀なコアへ集めようとOSに働きかけるため、同一CCD内で処理が完結するような状況になりやすい。ただ処理の負荷も並列度も高い状況では、CCD間のレイテンシーがペナルティーとして効いてくるような状況の発生頻度が高くなり、結果としてAGESA 1.2.0.2の導入が良い結果をもたらすといったところか。
Ryzen 9 9950XとAGESA 1.2.0.2の組み合わせでは若干CPUの消費電力が増えている。フレームレートが上がった分だけ仕事も増えたから、と言えなくもないが、この程度であれば誤差の範囲だ。
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