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妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU

2024年09月30日 12時00分更新

まさかの6bitマシンが復活

 基本的な構成は、ここまで説明したことのまとめみたいなものである。

Liquid coolingは"requirement(要件)"ではなく"enablement(有効化)"なのが気になる。とはいえマイクロソフトはMaiaを外販する予定はないはずで、であれば全量液冷な気がするのだが、将来は推論向けに空冷なノードが出てくることを想定しているのだろうか?

 ここからもう一段踏み込んだスペックが下の画像だ。ここで気になるのは「なぜHBM2Eなのか?」であるが、これはおそらくASICパートナー側の問題だったものと思われる。

Peak POPs(Peta Ops per sec)はTDP 700Wでの数字で、通常利用時はもう少し低くなるのだろう。それにしても、ピークで3POPS(3072TOPS)というのはなかなかに壮絶である

 マイクロソフトも小規模なASICはこれまで自作してきていた。FPGAでまず回路を起こし、次いでそのFPGAをそのままASICにするような形だ。ところが5nmで800mm2を超えるような規模のASICは、そもそもFPGAでのプロトタイプ作成は極めて困難である(Virtex Ultrascale+を100個くらい並べても収まりきるかどうか……)。

 しかも、FPGAのプロトタイプは論理設計の検討やソフトウェアの先行開発には非常に便利だが、物理設計には全然役に立たない。そこでこうした先端プロセスの物理設計のノウハウを持つデザインサービスを提供する企業と提携し、論理設計はマイクロソフトが担い、その先の物理設計をデザインサービス企業に任せるといったことが普通に行なわれている。

 Dan Nystedt氏によれば、Maia 100の物理設計パートナーは台湾のGUC(GLOBAL UNICHIP CORP.)だったらしい。GUCは今でこそHBM3Eまでの設計をサポートしている(9月24日には、9.2GbpsのHBM3Eまでをカバーした事を発表した)が、これはわりと最近の話である。

 Maia 100の場合は2023年11月にチップが発表されているということはおそらく物理設計は2022年中には完了しているわけで、逆算すると2021年末あるいは2022年初頭あたりに物理設計がスタートしたことになる。この時期のGUCは、まだHBM3に関するノウハウは十分ではなかった時期である。

 GUCとしてはマイクロソフトに、ノウハウが十分にあり確実に設計できる代わり、速度がやや遅いHBM2Eと、ややリスクはあるが速度の速いHBM3/3Eのどちらを使うかの選択肢を示し、結果としてマイクロソフトがリスクの低い方を選んだのではないかと思う。

 それはともかく、一番利用を想定しているのが9bitないし6bitというのがおもしろい。構成的には6bitが基本で、9bitは6bit×2で12bitのうち9bitを利用、BF16は6bit×4で24bitのうち16bitを利用といった形になるのだろう。6bit×3だと性能が1POPsにならないとおかしいからだ。

 おそらく仮数部と指数部、それぞれに12bitずつ割り振ってうち8bitづつを使うといった形になっているのだろう。まさかここに来て6bitマシンが復活するとは思わなかった。

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