第448回
Ryzen 9000シリーズの成長を見守る
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄
ゲームでの効果は期待薄
ではここからゲームでの検証に入る。検証方針はこれまでのCPUレビューと同様に解像度はフルHDのみ、画質は最低設定にすることでGPU側がボトルネックに極力ならないよう配慮した。また、フレームレートの測定はすべて「CapFrameX」で実施し、フレームレート測定ど当時にPowenetics v2を利用してCPUがベンチマーク中に消費した電力(の平均値)も取得している。
「Black Myth: Wukong」
まずは直近の話題作Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)だ。このゲームは最新タイトルには珍しく単体のベンチマークが配布されているのでこれを利用する。画質は最低設定だが、無論レイトレーシングも無効とした。FSR 3はデフォルトで有効になっているがフレーム生成は利用せず、レンダースケール(RS)もデフォルトの100%設定とした。
ここまでTDPを65Wより上に引き上げることで性能が伸びる例ばかり目にしてきたが、ゲームでは一転、TDP 65Wを105Wや120Wにしたところでなんら変化が見られない。レイトレーシングなどの重い処理を切っているが、まだGPU側が律速要因になっている可能性がある。
消費電力はTDPを引き上げることで若干上昇しているが、前掲のHandbrake処理時のような大幅な増加ではなく、増えたとしても1Wという小幅な伸びにとどまる。つまりBlack Myth: Wukongでは画質設定を思い切り下げてもCPU側の仕事にはほとんど変化はなく、それがCPUの消費電力にも反映されていると考えられる。
「Counter-Strike 2」
Counter-Strike 2は画質“低”、フレームレート制限は上限である1000fpsに設定。ワークショップマップ「CS2 FPS BENCHMARK」再生中のフレームレートを計測した。
Ryzen 5 9600Xではわりとわかりやすい形でフレームレートが伸びている。とはいえTDP 65W設定から120W設定に引き上げたところで、フレームレートの増加率は約2%と非常に小さい。軽量でCPUの影響を受けやすいゲームであるとしてもこの程度だ。
CPUの消費電力はTDP設定に関係なくほぼ同じ。フレームレートが上がったためCPUの仕事が増えてはいるが、平均値に反映されるほどの負荷増ではなかったと言うことだろうか?
「F1 24」
続くF1 24では、画質は“超低”、異方性フィルタリングは16x、アンチエイリアスはTAA&FidelityFXに設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。ベンチマークシーンの設定は“モナコ”および“ウエット”としている。
F1 24もTDP設定を変えてもフレームレートに差らしい差は出ていない。むしろTDP 105WのRyzen 7 7700Xのフレームレートが、TDPもコア数も下のRyzen 5 9600Xに並ばれているという点に改めて注目したい。Ryzen 9000シリーズの真のすごさは、低TDP設定において発揮される卓越したワットパフォーマンスにあるのだ。
ここでもTDP設定とCPUの消費電力の間に相関はない。ゲームにおいてはTDPを引き上げてもデメリットらしいデメリットはない、と考えることもできる。
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