第445回
「Ryzen 7 9700X」「Ryzen 5 9600X」のゲーミング性能はゲームキングRyzen 7 7800X3Dに勝てる?
本稿はZen 5アーキテクチャーを採用したSocket AM5向けCPU「Ryzen 9000シリーズ」のうち、8月7日22時(北米時間)に販売が解禁された「Ryzen 7 9700X」および「Ryzen 5 9600X」レビューの後編にあたる。前編ではスペックを含めた概要、「CINEBENCH 2024」や「Handbrake」「Photoshop」「Premiere Pro」などを利用した検証を行なった。
その中でRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xのパフォーマンスは、マルチスレッド性能においてはRyzen 7000シリーズの同コア数モデルに対し向上しているが数%程度の小幅な伸びにとどまったが、それはTDPを従来の105Wから65Wへ大幅に下げた結果であり、従来モデルよりも圧倒的に省電力かつ低発熱で動作する、という非常に扱いやすいCPUに仕上がった。一方シングルスレッド性能は大きく伸ばしており、Photoshopのようなシングルスレッド志向の強いアプリで良好なパフォーマンスを示している。
……ここまでが前編の概要であるが、シングルスレッド性能が伸びているということは、PCゲームのパフォーマンス向上も期待できるということだ。しかし今のゲームはマルチスレッド処理されているものも少なくない。
そこで本稿では、ゲームにおけるベンチマークに絞り込んで検証する。PCゲームにおいて最強を誇る3D V-Cacheを搭載したRyzen 7000X3Dシリーズの立場を脅かす存在になれたのか? いろいろなゲームで試して結論を出してみたい。
検証環境は前編と同一のものを準備
検証環境は前編とまったく同じものを使用している。これは検証時期が前編と同一だからだ。Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの比較対象としてRyzen 7000シリーズおよび7000X3Dシリーズを、さらにCoreプロセッサー(第14世代)からK付きモデルを準備した。
インテル勢については不安定問題に対する最終回答が見えていない状況だが、インテルが6月にフォーラムに投稿したガイドラインを参考に、PL1/ PL2/ ICCmaxを抑えた“Performance Power Delivery Profile”を適用した。
また検証にあたり、Secure Boot/ Resizable BAR、メモリー整合性やHDRといった設定は一通り有効としている。GPUドライバーはRadeon Software 24.7.1を使用した。
AMDテスト環境 | |
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CPU | AMD Ryzen 7 9700X (8C16T、最大5.5GHz) AMD「Ryzen 5 9600X」(6C/12T、最大5.4GHz) AMD「Ryzen 9 7950X3D」(16C/32T、最大5.7GHz) AMD「Ryzen 9 7900X3D」(12C/24T、最大5.6GHz) AMD「Ryzen 7 7800X3D」(8C/16T、最大5GHz) AMD「Ryzen 9 7950X」(16C/32T、最大5.7GHz) AMD「Ryzen 9 7900X」(12C/24T、最大5.6GHz) AMD「Ryzen 7 7700X」(8C/16T、最大5.4GHz) AMD「Ryzen 5 7600X」(6C/12T、最大5.3GHz) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「X670E Taichi」 (AMD X670E、BIOS 3.06) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5200/ DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2) |
インテルテスト環境 | |
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CPU | CPU インテル「Core i9-14900K」(24C/32T、最大6GHz、Performance Power Delivery Profile) CPU インテル「Core i7-14700K」(20C/28T、最大5.6GHz、Performance Power Delivery Profile) CPU インテル「Core i5-14600K」(14C/20T、最大5.3GHz、Performance Power Delivery Profile) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「Z790 Nova WiFi」 (インテル Z790、BIOS 6.01) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2) |
CPU負荷が最小だとほぼ差が出ない
ゲームの検証に入る前に「3DMark」を利用してグラフィック性能をチェックしよう。今回利用するのはDirectX 12ベースの新テスト“Steel Nomad Light”“Steel Nomad”だが、これはFire StrikeやTime Spy系とは異なり、CPUによる物理演算テストが結果に加味されない。コア数によるスコアーへの影響を最大限に抑えたテストである。
ゲームでは最強CPUである3D V-Cacheを搭載したRyzen 7000X3Dシリーズが強いかと思っていたが、Steel Nomad系テストではどのCPUも差といえるほどの差はついていない。純粋にGPU(RX 7900 XTX)側の限界がこのスコアーに出ているといえる。CPU比較なのになんというテストだというオチではあるが、こういうシチュエーションもなくはない、ということだ。
GPU側のボトルネックが出にくい状況で検証する
ではここからゲーム系の検証を始めよう。まずは「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー」の公式ベンチマークを使用する。GPU側にボトルネックが出てしまうとCPUの差が見えなくなるため、画質は一番低い“標準品質 (ノートPC用)”に設定。ただしFPSに連動する動的な調整機能は使用せず、レンダースケールは100%(RS=100%)とした。ベンチマーク終了後に出るスコアーのほかに、レポートで出力されるフレームレートも比較する。
前編はあまり良いところがなかったRyzen 7000X3Dシリーズだが、ゲームの処理となると一気に爆発。スコア・フレームレートともに爆発的に伸びた。肝心のRyzen 9000シリーズはというと、前世代に対してはコア数のより大きなRyzen 9 7950Xや7900Xより上回るスコアーを出しているが、Ryzen 7 7800X3Dにはまだ及ばない。
Ryzen 7 9700XよりもRyzen 5 9600Xの方がスコアーが勝っている理由は謎だが、Ryzen 7 7700XとRyzen 5 7600Xにも同様の傾向が見てとれたので、前編で確認したRyzen 7 9700Xはクロックが低くなりやすい問題に関連していると思われる。ただRyzen 7 9700Xは最低フレームレートがRyzen 5 9600Xよりも若干高いため、そこは評価していいだろう。
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