第444回
低発熱&低消費電力でも性能が向上した「Ryzen 7 9700X」「Ryzen 5 9600X」のアプリ&AI処理性能に驚いた
Ryzen 5 7600X以上とCore i5 14600K以上を用意した検証環境
今回の検証環境を紹介しよう。Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの比較対象として、Ryzen 7000シリーズの無印を除外した7600X以上のモデルを、さらにインテルのCoreプロセッサー(第14世代)の14600K以上のK付きモデルを用意した。
Coreプロセッサーに関してはまだ不安定問題への結論と言うべきBIOSがリリースされていない状態であるため、インテルのフォーラムで掲示されているPerformance Power Delivery Profileに統一した。即ちCore i7およびCore i9はPL1=PL2=253WかつICCmax=307A、Core i5はPL1=PL2=181WかつICCmax=200A設定である。
ただしそれ以外、Tauなどの設定はマザーのデフォルト値としている。また、インテル環境のBIOSは不具合を引き起こす原因とされるeTVBのバグを解消したものである。
検証にあたり、Secure Boot/ Resizable BAR、メモリー整合性やHDRといった設定は一通り有効としている。GPUドライバーはRadeon Software 24.7.1を使用した。
AMDテスト環境 | |
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CPU | AMD Ryzen 7 9700X (8C16T、最大5.5GHz) AMD「Ryzen 5 9600X」(6C/12T、最大5.4GHz) AMD「Ryzen 9 7950X3D」(16C/32T、最大5.7GHz) AMD「Ryzen 9 7900X3D」(12C/24T、最大5.6GHz) AMD「Ryzen 7 7800X3D」(8C/16T、最大5GHz) AMD「Ryzen 9 7950X」(16C/32T、最大5.7GHz) AMD「Ryzen 9 7900X」(12C/24T、最大5.6GHz) AMD「Ryzen 7 7700X」(8C/16T、最大5.4GHz) AMD「Ryzen 5 7600X」(6C/12T、最大5.3GHz) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「X670E Taichi」 (AMD X670E、BIOS 3.06) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5200/ DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2) |
インテルテスト環境 | |
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CPU | CPU インテル「Core i9-14900K」(24C/32T、最大6GHz、Performance Power Delivery Profile) CPU インテル「Core i7-14700K」(20C/28T、最大5.6GHz、Performance Power Delivery Profile) CPU インテル「Core i5-14600K」(14C/20T、最大5.3GHz、Performance Power Delivery Profile) |
CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASRock「Z790 Nova WiFi」 (インテル Z790、BIOS 6.01) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5600) |
ビデオカード | AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB、NVMe M.2、PCI Express Gen5) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」 (23H2) |
マルチスレッドは僅差だが、シングルスレッドが伸びる
では定番の「CINEBENCH 2024」から検証をスタートしよう。デフォルトの10分間のプレヒートを経てスコアーを出すモードを使用している。
インテル勢に大幅な電力制限がかかっているとはいえ、Ryzen 9 7950X3Dより下の結果は、これまで見てきた検証の繰り返しに近い。Ryzenの中ではTDPの高い3D V-Cacheのないモデルのスコアーが高く、X3Dシリーズよりもわずかに性能で上回る。
注目のRyzen 9000シリーズに関しては、物理6コアのRyzen 5 9600XがTDPの高い7600Xをマルチスレッドスコアーで上回り、さらにコア数で格上のRyzen 7 7800X3Dに手が届きそうな所に詰め寄っている。Ryzen 7 9700XもTDPに勝る7700Xを上回るマルチスレッド性能を出しているが、Ryzen 9 7900X3Dに大きく後れを取っている。
だがシングルスレッド性能で見るとRyzen 9000シリーズは旧7000シリーズのスコアーを塗り替えており、シングルスレッド番長であるCore i9-14900Kまであと一息のところまで迫っている。Ryzen 9000シリーズはZen 5アーキテクチャー採用によりIPCが向上、結果としてスコアーが伸びていることは間違いないが、マルチスレッドのスコアーがあまり伸びていないように見えるのは、TDPが抑えられているからだと考えられる。
CINEBENCHと同じCG系ではあるが「Blender Benchmark」「V-Ray Benchmark」の結果も見ておこう。どちらのベンチマークもCPUだけでレンダリングした場合のスコアーで比較する。
CINEBENCH 2024では強かったCore i9-14900Kが、BlenderやV-RayではRyzen 9 7950Xや7950X3Dには負けてしまうが、Core i7-14700KやCore i5-14600Kに関しては電力制限をかけてもなお優勢を保っている(電力制限をかけても信頼性に不安がある観測はさておき)。Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xのスコアーに関してもCINEBENCHと同傾向だ。
前世代の上位モデルを下剋上するというドラマを期待していた人にとっては寂しい結果だが、Ryzen 9000シリーズは前世代よりTDPを大下げてもなお同等以上の性能を出せているという点は多いに評価すべきだろう。
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