週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

Lepton Hydro WSZ790をレビュー

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

2024年05月11日 10時00分更新

3パターンのPL1で性能と温度をチェック

 検証に入る前に、まずはCore i9-14900Kのスペックをおさらいしよう。24コア/32スレッドCPUで、高性能なPerformance-cores(Pコア)を8基、高効率なEfficient-cores(Eコア)を16基併載する。ゆえに、高性能だが高発熱になりがちだ。

 無論、その発熱は設定電力に大きく依存する。昨今のインテル製CPUは大きく分けて2段階の電力制限(PBPとMTP)を採用している。Core i9-14900KはPBP(プロセッサーのベースパワー、Power Limit 1=PL1)が125W、MTP(最大ターボパワー、Power Limit 2=PL2)が253Wとなる。

 言い換えれば、短時間で終わる作業なら最大253Wで動作し、一定時間経つと125Wに制限を切り替えて安定性を取る、といった挙動になる。PL2動作時は最大電力で動くので性能も最大になるが、発熱も高くなるため、時間制限があるといったイメージだ。

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

インテルの公式サイト(Intel ARK)によれば、Core i9-14900Kの動作クロックは最大6GHz。仕様上のPBP(以下、PL1)は125W、MTP(以下、PL2)は253Wで、これが推奨値となる

 なお、PL1やPL2の値はUEFI BIOSから変更でき、マザーボードメーカーやBTOメーカーが調整している。つまり、PC自作とBTOパソコンではCPUの電力制限が異なる場合がある。そこには当然理由がある。

 近年、ハイエンドCPUの発熱は著しく増加している。そのため、冷却力と電力設定のバランスの見極めが難しくなった。そこを絶妙に調整してやれば、性能を向上できる余地があるからだ。しかし、バランスが崩れると、性能を十分に発揮できなかったり、動作の不安定になる可能性もある。

 ゆえに、各社が思い思いの電力制限設定を施しているわけで、近年の高性能BTOパソコンでは見どころの1つとも言える。では、Lepton Hydro WSZ790におけるCore i9-14900Kの電力設定はどうか?

 UEFI BIOSで確認してみると、PL2こそインテルの推奨値と同じ253Wだったが、PL1はインテルの推奨値より35W高い160Wだった。この攻めた設定は冷却力の自信の表れかもしれない。

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

UEFI BIOSの画面。PL1(「Long Duration Power Limit」と表記)が160W、PL2(「Short Duration Power Limit」と表記)が253W

 では、このPL1の設定でどれぐらい性能や温度が変わるのか? PL2は253Wのまま、PL1をインテル推奨値の125W、サイコムが設定した160W、PL2と同じ253Wの3パターンで変更して検証することにした。

 まずはCPUのパフォーマンスを定番ベンチマーソフト「CINEBENCH 2024」でテスト。スコアーや実行中の消費電力、CPU温度などを計測して設定の妥当性を確認する。

 なお、電力や温度の計測にはモニタリングツール「HWiNFO64 Pro」を使用。約10分間のテスト中、CPUがPL1で動作していると思われる開始約9分後の状態をチェックしている。

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

CINEBENCH 2024の結果(PL1=125W設定時)

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

計測開始から9分後のCPUモニタリング情報(PL1=125W設定時)

 PL1=125W設定時のスコアーはCPU(Multi Core)が1807pts、CPU(Single Core)が135pts。CPU温度は規定の最大温度であるTjMAX(100度)にこそ届いていないが、コア温度(CPU Tempertures)もCPUパッケージ温度(CPU Package)も最大90度付近と、かなり高い。

 しかしながら、この最大値はCPUがPL2で動作しているわずか1分間ほどの話。PL1動作に入ると60度前後で落ち着いた。240mmラジエーターの簡易水冷ユニットを使っていることもあり、PL1自体はもう少し高くできる余地があると言っていいだろう。

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

CINEBENCH 2024の結果(PL1=160W設定時)

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

計測開始から9分後のCPUモニタリング情報(PL1=160W設定時)

 続いて、サイコムが独自に設定しているPL1=160W設定で計測。スコアーはCPU(Multi Core)が1927pts、CPU(Single Core)が133ptsだった。シングルスレッドの性能はほぼ同等だが、マルチスレッド性能のスコアーが100pts以上、約6%ほど上昇した。電力制限をゆるめた恩恵が如実に表れている。

 一方で、CPU温度も上昇している。PL2を変更していないため、最大温度は大きく変わらないものの、テスト開始から9分経過時点のコア温度は63度、CPUパッケージ温度は71度にアップ。とはいえ、部屋が高温になる夏場でも耐えられるであろう水準には収まっている。

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

CINEBENCH 2024の結果(PL1=253W設定時)

高負荷時でも40dB未満、14900Kは91度でRTX 4080 SUPERは約56度!次世代WSの神バランス

計測開始から9分後のCPUモニタリング情報(PL1=253W設定時)

 最後はPL1=253W設定だが、CINEBENCH 2024のテストは完走し、CPU(Multi Core)スコアーも2093ptsまで上昇した。しかし、CPU温度は許容上限であるTjMAXに達してしまった。

 消費電力自体が劇的に低下することはなかったが、テスト中の10分間、パッケージ温度はずっと100度付近で推移していた。おそらく、サーマルスロットリングに入ったり、抜けたりを繰り返していたのだろう。

 ギリギリで粘っていると言えなくもないが、温度的にはあまり良い環境とは言えない。つまり、サイコムのPL1=160W設定は、ワークステーションに求められる性能と安定性の両立という観点から見ると、非常に理にかなった調整と言える。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう