だが、「出島」のなかに入ってみると、そこにはRidgelinez独自の文化がある。
働き方や仕事の進め方は、富士通の文化とはまったく異なる。実際、制度やルールは、Ridgelinez独自のものを採用している。
「Ridgelinezのなかには、日本の大企業のなかで育った人では通用しない文化がある」と今井CEOは断言する。
なかでも、「スピード」については、大きな差があることを指摘する。
もともと新卒で富士通に入社した今井CEOは、その後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンやSAPジャパン、ベイン・アン ド・カンパニーPwCコンサルティングなどの外資系企業で勤務。スピードの差を自ら体験してきた。
「日本の伝統的な企業に共通している課題は、なにかを投げると、帰ってくるまでに時間がかかりすぎるという点。階層が多いというだけでなく、受け取った人が、それを一定期間抱いてしまい、何も判断せずに次に投げるということが普通に行われている。その理由がまったくわからない」と、日本の大手企業に浸透している文化に疑問を投げかける。
「こうした文化のままで、なにをやってもスピードはあがらない。Ridgelinezでは、そのやり方は通用しない。社内では、すぐに答えを返すことを徹底している」と語る。
ある企業では、システムが稼働するまで6カ月から12カ月かかっていた案件が、Ridgelinezでは、2カ月で完成し、3カ月目には稼働したケースがある。
「これは、凝縮して3倍働いたわけではなく、不要なことをなくし、自動化できるところは自動化した成果である。Ridgelinezの仕事のやり方が反映されたものであり、それが評価されている」という。
また、完璧なものよりも、スピードを重視する経営者が増え、社会の受容性が変化してきたことも、Ridgelinezのスピードに対する評価が高まっている理由だとする。
「従来は、お客様の多くが、時間がかかっても100%完璧なものを作ろうとしていた。だが、いまは、3分の1の期間でできるのであれば、70%の精度でもいいと判断をする経営者が増えてきた。1年後に高い精度で意思決定をするよりも、2カ月後には経営判断に使うことができ、そのスピードをもとに意思決定を繰り返し、決定の精度をあげたほうが経営にとってはプラスであるということが浸透してきた。そもそも1年後に完成したシステムでは、もはや時代にあわなくなることをコロナ禍で経験したお客様が多い。社会の受容性が変化している。石橋を叩いて渡る手法では限界があることに、多くの経営者が気づいている」と指摘する。
そして、「スピードがあがることは、Ridgelinez自らの仕事へのメリットだけでなく、この経験をお客様に直接話すことができ、それを実践できるというRidgelinezの強みにもつながる。DXを進めるには、文化を変えなくてはならない。その第一歩ともいえる変化がスヒードであり、それを自分たちの体験として語ることができる」とする。
グルーープ社員数12万4000人の富士通と、500人弱のRidgelinezでは、動き方に差が出るのは明らかだ。「出島」ならではの文化がここにも生きている。
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