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コードネームはポケモン!? 日本に本格参入のNothing CEO カール・ペイ氏が影響を受けた日本文化

2024年04月19日 18時00分更新

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 4月18日にNothing Technologyが東京で新製品発表イベントを開催しました。同社が日本で発表会を行なうのは初めてで、CEOのカール・ペイ氏が日本のメディアの前で直接語るのも初めてでした。発表会ではワイヤレスイヤホンの新製品「Ear」と「Ear(a)」を発表。また、今月から日本に拠点を構えたことも発表されました。

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発表会で語るカール・ペイ氏

 発表会の後、カール・ペイ氏に単独インタビューをできました。スマホや日本での戦略、そして日本で好きなところなど、様々なお話を聞かせていただきました。

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FeliCa非対応の不便さを身をもって体験した

――これまでにPhone(1)、Phone(2)、Phone(2a)と、3モデルのスマホをリリースしました。日本での反響はいかがですか?

ペイ氏 Phone(2)まではソフトローンチという形で、FeliCaも入っておらず、本格的な参入とは言えない状況でした。しかし、多くの方に関心を持っていただき、実際に購入していただきました。ですが、FeliCaがないことを不便に思っていた方も多いのではないかと思います。実際私も、今回の来日で電車に乗る機会がありましたが、いちいち切符を購入するのが面倒だと感じました。

 先日、日本市場のニーズに合わせてFeliCaを搭載したPhone(2a)をリリースしました。しかし、現状は在庫が十分ではなく、ソールドアウトの状態なので、お客様の反響を知るにはまだ早いと思っています。皆様の手に届く状況になってから、いろいろ判断していきたいと思います。

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発表会のハンズオン会場にはPhone(2a)も展示されていた

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Phone(2a)には「おサイフケータイ」アプリがプリインされている

――在庫薄というのは、世界的に売れているということでしょうか?

ペイ氏 これまで出した機種の中で最もよく売れているのは事実です。同時にディスプレイ用の在庫が足りないという状況もあります。

――Nothingの製品はデザインに特徴があります。デザインや機能についてのユーザーからの反響は国によって違うのでしょうか? 日本ならではの反響があったりしますか?

ペイ氏 私はソーシャルメディアではよく「X」を使いますが、最近日本語のコメントが増えてきたことを実感しています。日本語がわからないので、十分に理解できているとは言えませんが、翻訳ツールを使って理解するように努めています。そして、いろいろなことが求められていると感じました。

 たとえば、最近は「カメラのシャッター音がうるさい、シャッター音が出るタイミングが遅い」といったコメントがありました。それに対して、私たちは1週間で修正の対応をしました。対応の早さに驚いた方も多かったようです。

ポケモンからソニーまで、日本文化に多大な影響を受けた

――日本の文化に対して、どのような印象をお持ちですか?

ペイ氏 私は20代の頃から何度も日本に来ていて、友人もいます。子どもの頃は、ポケモン、NARUTO、ドラゴンボールを見て育ちました。実は、我々の開発中の製品のコードネームにポケモンの名前を付けています。また、ソニーの製品からも多くのインスピレーションを受けています。私たちのデザインブックには、ソニーの製品が並ぶソニーミュージアムで撮影した写真を載せていますが、“Nothingが10年後に目指したい姿”と記しています。

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子どもの頃は、日本のアニメを見て育ったというカール・ペイ氏

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今回発表したEar(右、左)、Ear(a)(中央)にもポケモンの名前のコードネームを付けていたようで、その名前を教えてもらったが、日本語と英語では名前が異なるようで、ちょっとわからなかった

――逆に、日本の理解できない部分はありますか?

ペイ氏 日本人は食生活において食物繊維が不足しているのではないかと思いました。なぜなら、スーパーに行った時に“食物繊維入りのコーラ”なんて製品を発見したからです。もっと、いろいろなものを買って日本文化を研究したいと思います(笑)。

日本で圧倒的シェアを誇るiPhoneにどう対抗するのか?

――日本では、若い世代にiPhoneが圧倒的に人気がありますが、どうお考えですか?

ペイ氏 私はもともとアップルの大ファンで、誰よりも早くiPodを買い、誰よりも早くiPhoneを買った人間なんです。iPhoneの初号機が出た時は、アメリカに住む友人に頼んで入手して、アメリカ国外で使えるようにしたりもしました。なので、アップルの製品からもインスピレーションを受けています。実際、10年くらい前までは、アップルがこの業界でベストの商品を作っていたと思います。なので、日本にアップル製品のユーザーが多いことは納得できます。

 ただ、今のアップルはかつてのアップルとは違います。かつてのようにイノベーションに注力するのではなく、ビジネスや株価を注視しているように見えます。しかし、それは大企業として当然のことです。残念ながら、この業界(モバイル)において、若い会社はNothingしかありません。実際、この分野は成功するのが非常に難しいビジネスだと思います。サプライチェーンからマーケティング、デザイン、ソフトウェア、ハードウェアの設計、そして製造、そしてカスタマーサービスまで、いろいろなことを全部やらなくてはならないからです。

 もちろん、専門知識も要りますし、かなりの資金も必要です。なので、今この業界にスタートアップといえる企業はほかにありません。なので、唯一のスタートアップ企業として、イノベーションを前に進めるための使命や責任感も感じています。

 ときには「そんなにイノベーティブなことをしていないのでは?」と言われることもあります。「ただのスマホとイヤホンを作っているだけではないか」と。この業界で成功するには、イノベーションも大切ですが、ビジネスとして成立させることも重要です。サプライチェーンやエンジニアリングをしっかりする。つまり、マシンを作るということ。

 これまでの3年間はそこに特化していました。今、ようやく次のステップに進める段階に達したと思っています。これからもっとイノベーション力を発揮していきたいと思います。

――次のステージでは、スマホとイヤホンだけでなく、商品のラインナップも増えるのでしょうか?

ペイ氏 テクノロジーは、これまでにできなかったことを実現して、人を助けてきました。電気もそうですし、インターネットもそうですね。しかし、ここ5年、10年を振り返って、スマートフォンで新たに実現できたことは何か? と考えると、なかなか思いつきません。今後、商品のラインナップを拡大して、さまざまなユーザーに合ったプロダクトを出していきたいと思っていますが、同時にもっと根本的なところに立ち返って、どんなテクノロジーで人を助けることができるのか? ということも突きつめていきたいと思っています。

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カール・ペイ氏は穏やかな口調で、フレンドリーな人柄という印象

――以前、Nothing Phoneについて、日本は5番目に重要なマーケットだと聞きました。ちなみに、1番目から4番目はどの国なのでしょうか?

ペイ氏 現在、日本は5番目ではありますが、これまで積極的に営業していなかったので、これからもっと上位に行くと思っています。今よく売れているのはインド、ドイツ、イギリス。順番は変動するので、確かな情報とは言えませんが、4位はスペインだったかもしれません。最近、中近東でもローンチしたので、これからの動きを見守りたいと思います。

――日本では、iPhoneからNothing Phoneに乗り換える人が少なくないと聞きました。その動きをさらに加速させるための秘策はありますか?

ペイ氏 まだ日本に拠点を設立したばかりで、日本の状況を十分に把握しているとは言えません。これから日本市場のインサイトを得ていきたいと考えているところです。しかし、一般論としてブランドが大きくなり、みんなが同じものを使っていると「それではつまらない」「人とは違うものが欲しい」という人が必ず出てきます。親が使っているものとは違うものが欲しいという人は必ずいるはずです。

 そしてiPhoneについては、消費者にとって、そして競争環境においてアンフェアだと思うこともあります。一度iPhoneユーザーになると、ほかの機種に変えることが難しく、そこに留まるしかないような状況が作られているからです。消費者にとっては選択肢が少なく、私たちとしても乗り換えていただくために苦戦が強いられます。これは私たちにはどうにもできないことなので、公正取引委員会とか、政府の力で、もっと公正な競争を促していただくしかないと思っています。実際、アメリカではそういう動きがあり、EUでも実現しています。日本での動きにも期待しています。

――ありがとうございました。これからも日本市場をよろしくお願いします!

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