週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ

2024年03月04日 12時00分更新

前工程と後工程を複数の地域に分散させて
供給を継続できるのがインテルの強み

 売上ベースで2位のポジションをどうやって実現するかだが、単純な話で単価の高いウェハーを重点的に売れば良い。最初の頁で示したウェハー生産量の画像に戻ると、2028年末の段階でウェハー出荷量の3分の2近くをEUVを使ったIntel 4/3とIntel 20A/18A/14A/10Aが占めることになる。その半分はRibbon FETを使ったプロセスで、これは言うまでもなくウェハー単価が極端に高い。

 2023年6月のTom's Hardwareの記事によれば、2025年におけるTSMCのウェハー1枚当たりの価格は下表とされている。

TSMCのウェハー1枚当たりの価格
プロセス 価格
2nm 2万4570ドル
3nm 1万8445ドル
5nm 1万2095ドル
7nm 9240ドル

 この価格も絶対的なものではないし(あくまで昨年における予測値だ)、生産するウェハーの枚数にもよるが、この2nmがIntel 20Aとほぼ同等と考えればIntel 18Aはさらに高いだろうし、High NA EUVを使うIntel 14Aは1枚あたり3万ドルに達しても不思議ではない。

 例えばIntel 20A~Intel 10Aまで合わせて、2030年度の段階で月産5万枚生産したとする。平均価格を2万7000ドルと仮定すると、月当たりの売上は13.5億ドル。9ヵ月で121.5億ドルである。これはSamsungの9ヵ月分の売上である96億8100万ドルを超えている。

 もちろんSamsungも2030年度にはもっと売上を積み増しているだろうが、インテルの方もこれに加えてIntel 4/3の売上も期待できる。Intel 12に関しては前回述べたようにコスト競争が激しいだろうし、Intel 4/3もおそらくコスト競争にさらされるのでIntel 20A~10Aほどには売上は伸びないだろうが、この121.5億ドルにもう少し積み増しは可能だろう。

 加えてインテルは後工程のソリューション(つまりAdvanced Packageと呼ばれるEMIB/Foverosなど)と、"Resilient, Sustainable Supply"を強みにしようとしている。

言いたいことはわかるのだが、System Foundryというのは違う気がする

 先頁最初の画像(工場とノードの関係性)に戻るが、前工程と後工程、それぞれ複数の地域に分散させて生産することで、なにかあった場合でも供給を継続させようという点も強みとしたい考えだ。前回説明したIntel 12に関するUMCとの協業も、広い目で見ればこの地域分散に貢献する。こうした強みを生かしたい、というのがインテルの希望(というか願望)である。

 ただ、「そんなに先端プロセスが使われるのか?」という素朴な疑問も当然ある。これに対するインテルの回答が、昨年からゲルシンガーCEOが言い始めたSiliconomyである。

2030年にはGDPの25%が半導体関連の売上というのは景気の良い話ではあるが、果たして実現するのか?

 インテルによれば2030年頃の半導体業界の売上は1兆ドルに達するのだそうで、しかもこの売上を牽引していくのは昨今人気の生成AI関連だと位置づけている。最近生成AIもローカルで推論が実行できるなど話題になりつつあるが、学習の方は相変わらずローカルでは実行できたものではなく、今もまだ全然性能が足りていない。

 こうした生成AIの学習向けプロセッサーは、最先端プロセスを使ったものが求められるわけで、その市場をつかめれば先程の売上の試算も夢ではなくなる。つまりインテルの言うWorld #2 Foundryの座をるかめるかどうかは、下に挙げるけっこう敷居の高い複数のハードルをクリアできるかどうかどうかにかかっている。

  • 2030年代まで現在のAIブームが続く
  • 2030年代までにIntel 10Aまでを含む先端プロセスの量産準備が整う
  • 2030年代までに、先端AIプロセッサーの量産を受注できる

 個人的に気になるのは、仮にこのハードルをクリアし、売上で世界第2位に躍り出たとして、IFSはちゃんと儲かるのだろうか? というポイントだ。ゲルシンガーCEO就任からそろそろ3年が経過するが、この3年の間にIFS関連に投じた投資額はすさまじい。

 また先端プロセスが(IFSだけでなくTSMCなども)高価なのは、単に設備投資の回収だけでなく生産コストも高い(筆頭が電気代)わけで、通常3年くらいと言われる回収期間で投資額を全部回収しきれるのか、少し筆者には判断が難しい。赤字にならなければいいのだが。

AIプロセッサーのHBMは12スタックを超えTDPは2000Wを超える

 最後、まったく関係ない話題だが、基調講演の最後の方で示されたAIプラットフォームの予想図が下の画像だ。Intel 10Aの世代になると、AIプロセッサーのHBMは12スタックを超え、TDPは2000Wを超えるらしい。これはこれですさまじい話である。

ネットワークはこの頃ではUltra EthernetをOptical Ethernetの上に通すのかもしれない。それはともかくメモリーはそろそろHBMの次が欲しいという話になってるが、どうするのだろう?

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事