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『「親がしんどい」を解きほぐす』(寝子 著、KADOKAWA)を読む

母が亡くなったとき「やっと解放されたんだな……」という思いが頭をよぎった

2024年02月01日 07時00分更新

「毒親」と言うほどではないけど

 明白に毒親だと捉えられる場合もある一方で、「毒親というほどではないけど……」「そこまでは思わないけれど、最近ちょっと親と関わるのがしんどい……」という白黒つけられない気持ちや、親との距離感にモヤモヤを抱えている方々はとても多いように感じます。(「はじめにーー親に対するしんどさは“大切な気持ち”の宝庫」より)

 臨床心理士、公認心理師として、成人の(おもに親子関係に関する)トラウマケアに特化した個別カウンセリングに従事しているという著者は、このように指摘している。非常に納得できるが、とはいえそうした“親に関するストレス”は気軽に人に話せるものではなく、話せたとしても理解されにくくもある。

 そのため余計に“しんどさ”が増してしまうわけだが、そんななかにあっても「どうするべきか」という“自分なりの答え”を出さなければならない。なお、その点に関して注目すべきは、「大切な要素は『自分を理解する』ことだ」という著者の主張だ。そしてそれを前提としたうえで、本書においては「しんどさ」をなんとかするための策を、さまざまな角度から考察しているのである。

 たとえば親と接する際、関わり方がよくわからず、親のちょっとしたひとことに傷ついたり怒りを覚えたりする方もいらっしゃるだろう。しかしそんなことが続けば、当然ながらストレスをため込んでしまうことになる。では、どうすればいいのか? このことについて、著者は次のように述べている。

 親と関わるときはあらかじめ「怒りや不信や不快感などを伴ってしまうのは当然なのだ。それだけ、子どものころに傷ついてもなかったことにして適応したのだ」と心に留めておけると、ご自身の感情の揺れに対してさらに動揺することを防げるようになっていけます。(38ページより)

 たしかにそのとおりかもしれない。また、あまりに不快感が刺激されるのであれば、親と関わる頻度を減らすなどの具体的な対処も必要になるだろう。やさしく傷を覆うように自分を守る策を考えられれば、痛みがだんだん和らいでいくということだ。

 なお、「親へのしんどさ」に代表されるネガティブな感情を減らそうとする際の重要な心構えに、「感情をゼロにしようと急がない」ことがあるのだという。不快感の裏側には、その気持ちの積み重ねと理由があるもの。そこで少しずつ時間をかけ、強い不快感を無理なく消化させていくべきだというのだ。

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