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大幅変更に舵を切ったクラウンだが上質感や乗り心地は「いつかはクラウン」のまま!

2024年01月06日 12時00分更新

◆高級車だが気負わずに乗れるのが新型クラウン

 筆者は小心者ゆえ、革張りの高級車に乗ると、どこか肩ひじを張ったようで落ち着かないのですが、クラウンの適度な力の抜き方は、ちょうどいいかもと思った次第。この「イイもの感」と「気負いのなさ」の両立点が、このクルマを嫌味のなさ、等身大感、身の丈にあっているというプラスポイントでいいな、という印象を受けました。これより良いインテリアを求める方は、今後登場するであろうクラウンのセダンバージョンやレクサスという選択肢が用意されています。

クラウン
クラウン

 トヨタらしいなぁ、というのはインフォテインメント。メーターパネルを含めてスマホライクな画面はもはや珍しいものではありません。ですが、この価格帯で高精細大画面はそれほど多くないように感じます。デキの良さを思わせるのは音声認識で、日本車では精度が高いような気がします。

クラウン
クラウン
クラウン

 スマホ関連に関しても、心憎いコダワリっぷり。ワイヤレス充電対応のホルダーは差し込み式で、スマホをあまり選ばない様子。さらにUSB充電ポートはType-Cで、しかも2系統用意されています。このポートはインフォテインメントとはつながっておらず、スマホを連動させる場合はアームレスト内のポートを用います。

クラウン

 高級セダンらしいな、と思わせるのが、運転席側から助手席のシートポジションが変更できるところ。これは後席の人のためにシートを思いっきり前に出して、背もたれを前に倒すために使います。

◆乗り心地の良さは高級車クラウンそのもの

 外観や内観を見て、たしかに良さげな車だとは思うものの、果たしてこれをクラウンと呼んで良いのか? という疑問はいまだ残ったまま。まして同業者から「FRベースではないクラウンはクラウンではない、高級車ではない」などといった声も聞いたりして。今回のクラウンは全車4WDなのですから、FFベースとかFRベースとか気にしないと思うのですが、こういった声も注目を集めている証拠ということでしょう。

 個人的には、歴史的なつながりを思わせる記号がなくても、トヨタが4枚ドアのセダンに対して「このクルマはクラウンなんだ」と言えば、それはクラウンなのかなと……。巨大なドアを開けて乗り込み、システムスタート。音はなく静かなのはさすがハイブリッドで、「ホントに動くの」と思いながらシフトをDにセレクト。

クラウン

 ステアリングを握って走り出した瞬間、そこに答えはありました。「これはクラウンに相違ないと」。見た目だけで判断した自分の浅さを恥じるとともに、素直に感動しました。この車はトヨタの良心であり、日本の誇りであると。とにかく、めちゃくちゃ良い! 600万円近い金額のクルマで良くなかったら何なんだ? という声もありますが、とにかく「これでいいんじゃないか」と思わせるものがあるのです。

 何がどう良いのか。端的にいえば「日本の道を良く知っているクルマ」であり、普通に走らせるうえで、まったくもって不満がないということ。とにかく走りが滑らかで、これほど滑らかな走りをするクルマは、ちょっと思いつかないくらい。足が柔らかいか硬いかで言えば、柔らかいになるのですが、その柔らかさはまるで産毛をなでるかのような、絶妙な気持ちよさと心地よさ。それゆえ、高速道路だろうが、一般道だろうが、何時間乗っても疲れ知らず。

クラウン

エンジンは2.5L 直4 DOHC 16バルブ

 疲れ知らずな理由の1つが高い静粛性。電気自動車のような無音ではありませんし、モーターやジェネレーターの音は聞こえます。ですが、この音のチューニングが見事で、生理的に悪い気がしません。

 「トヨタにはレクサスがあるだろ、それより乗り心地が良いのか?」と尋ねられたら、走りの質感に関していえばクラウンに軍配を上げたいと思います。思うにレクサスは海外販売を視野に入れているためか、日本の道路に対して足回りが(クラウンに比べると)硬め。高速道路をかっ飛ばす分には適していても、一般道でのスピードバンプなどで不快感を覚える時があるのです。

 「レクサスが硬いって、何を言っているんだ?」と疑問を持たれる方は、ドイツ御三家の輸入車に乗った経験のある方でしょう。それらと比べ、レクサスは柔らかいのは確か。強いて言えば、アウディに近い乗り味でしょう。ですが、クラウンはさらに柔らかくてしっとり。「それってフニャフニャなので、典型的な日本車の足じゃないか」と言うのは昔のクラウンの話です。しっかり芯があり、地面を掴む感覚を得ながら、マジックカーペットのような滑らかな質感。これが今のクラウンなのです。たとえるなら、しなやかな足をもったBMWと言いますか。

 街乗りはもちろん、高速道路でも快適そのもの。デキの良いアダプティブ・クルーズコントロールを使い、左車線で上質な時間を心行くまで味わうのがクラウンの走り方です。

 ここまで読まれた方は「刺激がないのか?」と思われることでしょう。走りが楽しいとか、気分が高揚するという車ではないことは、乗る前からわかっています。だからといって退屈な車かというと、そうではありません。踏めば打ち出の小槌のごとく、力がバンバンみなぎり、怒涛の加速をみせるのでご安心ください。その時はちょっとだけエンジンが唸りますが……。

◆年を重ねてわかる、クラウンの良さ

クラウン

 この車の良さをたとえるなら、「ご飯に味噌汁、焼き魚」を食べた時の、ホッとする優しい味わいに似ているといえるでしょう。日本人に生まれてきてよかったという感覚は、年を経ないとわからないものです。

 若い頃は、激辛料理や肉々しい料理を好み、和食など目が向かないものです。ですが、これらの料理は、いつしかそれらは口に合わなくなり、体がうけつけなくなってくるものです。そして和食に目がいき、魚料理など淡白で繊細な味わいに心が惹かれ、少し味わうだけで満足できるようになっていくものです。

 車も同じで、刺激的な欧州車に憧れたり、チューンドの日本車に乗るものの、次第につらくなるのです。その時にクラウンのような日本車に乗ると、肌合いの良さに「日本車っていいなぁ」とシミジミ思うわけで。クラウンには、その「日本車っていいな」というのが詰まっているのです。しかも高い次元で。

 確かに見た目の好き嫌いはあると思います。ですが、日本人の肌に合う車を作り続けるという本質は、67年間変わっていないと感じました。今回のクラウンはグローバルモデルだから、日本人に合わせて作っていないと、トヨタは否定するかもしれません。それでも、お国柄やトヨタの物づくりといった、当人たちは認識できない面が、シッカリとクルマに表れ、結果としてクラウンらしさ、につながっているように思います。

 この「クラウンらしさ」が67年間続いたからこそ、ブランドの価値と信頼につながり今に至るように思いました。カタチは変わっても、時代は変わっても、クルマ選びのゴールとしての「いつかはクラウン」は変わらないことでしょう。

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