週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

MEMSスピーカーの鮮烈な音を聴く、Noble Audioの「FALCON MAX」を先行レビュー

2023年12月24日 09時00分更新

FALCON MAXの特徴

 FALCON MAXは、Noble Audioの完全ワイヤレスイヤホン“FALCON”シリーズの最新作で、さまざまな最新技術を搭載しているのがポイントだ。MEMSスピーカーの搭載もその一つとなる。

 すでに述べたように、BA型ドライバーは納期遅れが目立つようになってきたとともに、品質のばらつきによるマッチングや選別も必要になる。製造品質にばらつきがないMEMSスピーカーには期待しているという。MEMSスピーカーは形式的にはピエゾ方式だが、Noble Audioはセラミック振動板を直接振幅させるピエゾ型ドライバーを採用した経験があり、その経験も開発に役立ったという。

 MEMSスピーカーは高域再生用のドライバーとして、xMEMSのマイクロスピーカー「Cowell」を使用している。Cowellは歪みが非常に少なく、ダイナミック型ドライバーの1/10程度、BA型ドライバーの1/30程度とのこと。左右の位相が揃っていてリンギングも少ないということだ。

Cowell(右中)とFALCON MAX、ドライバーの小ささが分かる。

 ダイナミックドライバーには新設計の10mm「Dual-Layered LCP Driver」が搭載されている。これは高い耐熱性と強度、内部損失性をもつポリエーテルエーテルケトン(PEEK)とポリウレタン(PU)の複合素材に加え、高い弾性率と内部損失性を持つ液晶ポリマー(LCP)を採用することで振動板として理想的な特性が得られるドライバーだという。

 SoCはクアルコム最新の「QCC5171」を搭載、Noble Audio初となるLE Audio対応に加え、SoCが持つプログラマブルな機能を用いて、LDAC対応も果たしている。aptX AdaptiveとLDACに両対応した完全ワイヤレスイヤホンは世界初だという。このほかにもANC効果の強弱を周囲の環境に合わせて自動調整する「Adaptive ANC」に対応している。

 また、MEMSスピーカーの特性は、完全ワイヤレスイヤホンでポイントになる防水・防塵特性を得るためにも有効だという。

FALCON MAXの音を聴く

 FALCON MAXのサンプル機が提供されたので、十分にエージングして音を確かめた。

FALCON MAX

 装着感は良好だ。FALCON ANCは耳穴に軽くフィットするデザインだったが、FALCON MAXは耳の奥に入れるカナル型という昔ながらの方式なので、耳穴にしっかりとはまる。また、フォームタイプのイヤーピースが付属するが、これもよくフィットする。普段はLサイズを使うユーザーであれば、Mサイズでもいいだろう。大きすぎるイヤーピースは、全体に音が膨らむ傾向があるので、FALCON MAXのシャープな音を楽しむには小さめのイヤーピースを選んだほうがいいと思う。ANCはよく効く方だと思う。

FALCON MAX

 充電ケースはスリムでバッグに入れてもあまり邪魔にはならないサイズ感だ。ケースでの充電は3回までという製品が多い中で、イヤホン本体を4回充電できるバッテリー容量を持つので、長期の旅行で安心感があるかもしれない。

 音の特徴は、MEMSスピーカーを高域側に配したことによる中音域から高音域にかけての伸びの良さ、高音域がシャープでたれにくい(高音域が落ちない特性)点だ。これはアコースティックギターなど生楽器の音やハイハットの音の鮮明さでよく分かる。特に金属的な音の硬質感再現は特筆ものだろう。女性ヴォーカルでは声の明瞭感が高く、細かな音までしっかりと聞き取れる。たとえば声の掠れ具合や吐息の強さもかなり聞き取りやすい。

 ダイナミックドライバーの低音の質もかなりいい。パンチがあって緩みが少ない低音は、高音側のMEMSスピーカーの音によくマッチしている。全体に躍動感を感じるサウンドだ。

 オーディオグラスを皮切りに、MEMSスピーカー技術をフォローし始めてからだいぶ経つが、ようやくきちんとしたオーディオ製品が出てきたことは感慨深い。会場にはUSB-Cデジタル接続でMEMSスピーカー搭載の「XM-1」も展示されていた。軽く音を聞いたが、音の傾向自体はFALCON MAXと似ていたが、まだ情報があまりないので、別の機会に紹介したいと思う。

USB Type-C接続の「XM-1」

 xMEMSのプレゼンで紹介された、超音波を用いて低域の感度を上げる新開発のMEMSスピーカー「Cypress」は、ANC機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンのフルレンジドライバーとしても利用できるものだという。ただし、製品投入できるのは早くても2025年後半まで待つ必要があるようだ。MEMSスピーカー技術の今後についてもぜひ期待したい。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事