ショート動画化とYouTubeの広告収益減少が影を落とす
2023年のSNSと子どもを振り返る【前編】~闇バイト・私人逮捕系
2023年ももうすぐ終わる。皆さんにとって、どんな年だっただろうか。ここでネット・SNS周りにおける2023年の出来事を振り返ってみたいと思う。
■SNSでの闇バイト募集■
2023年は、SNSでの闇バイト募集に関心が集まった年だった。
前年から起きていた一連の広域強盗事件も、X(Twitter)で闇バイトが募集されていた。指示役はフィリピンにおり、応募者たちは実行犯となって連続強盗が実行されていたこと、高収入をうたうTwitterでの募集に安易な気持ちで応募する若者は大勢いることが話題となった。
生活安全総務課のまとめによると、警視庁に対し1月から10月に寄せられた闇バイト関連の相談件数は、昨年同期比で約4.7倍に急増している。本人や家族からの相談が多く、認知が広がった効果だが、それだけ蔓延している証でもある。実際、警視庁は1月~10月で、SNSでの闇バイト募集に対して1万1829件の警告をしている。
Z世代の若者はバイトもSNSで検索して探すことが多く、SNSで見つけたバイトに応募したり働いたりしている。闇バイト投稿を削除するとともに、若者に対して闇バイトの恐ろしさを啓蒙啓発していく必要があるだろう。
■迷惑動画炎上■
もう1つ大きく話題になったのが、回転寿司チェーン店などを舞台にした迷惑動画の炎上だ。
中高生をはじめとするの若者が迷惑行為をして動画に撮り、InstagramなどのSNSに投稿。それが拡散されて大炎上し、個人情報が特定され、晒される。それだけに留まらず、損害賠償請求されたり、なかには威力業務妨害罪などに問われて逮捕された例もある。
アカウントに鍵をかけ、24時間で自動的に消えるストーリーズならと油断しがちだが、実際は鍵をかけた状態でストーリーズに投稿したにもかかわらず炎上した例も多い。フォロワーがすべて味方というわけではなく、ストーリーズは消えても、収録機能などで保存することはできるのだ。その結果、Xで拡散されたり、暴露系インフルエンサーやYouTuberに通報されたりして大炎上している。
ニュースで繰り返しこのような事件が流れても炎上が続いたのは、若者世代はニュースを見ないため。どのような動画が炎上するのか、炎上するとどのような目に遭うのかを知らないまま類似事件を起こす例が多かったのだ。
問題になることはしない、まして動画に撮ってSNSに投稿などは決してしてはならないことを、大人世代が若者に周知徹底することが大切だ。
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■YouTubeの広告収益減少、私人逮捕系YouTuber逮捕も■
タイパの時代となり、短いTikTokやYouTubeショートが好まれる時代となった。短い動画に視聴者が流れたことで、YouTuberの広告収益は軒並み大幅に減少している。YouTuberのヒカルによると、広告収入は全盛期の半分ほどになっており、企業案件も減少しているという。
なお、YouTuberなどの収益情報をまとめている「Playboard」によると、2023年(1月1日から12月10日まで)における最もスーパーチャットを獲得したVTuberは「博衣こより」で計7818万4370円だった。2022年のトップ10に入ったVTuberのスパチャ総額は8億以上だったが、23年の総額は5億1000万円程度となり、約4割減少している。
私人逮捕系YouTuberのアカウント停止や逮捕なども相次いだ。痴漢や盗撮犯、転売ヤーなどを捕まえるところを動画に撮り配信する私人逮捕系YouTuberは大人気となったが、実際は迷惑系YouTuberの発展形であり、違法行為もあったことが問題視された。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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