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『世界と比べてわかる 日本の貧困のリアル』(石井光太 著、PHP文庫)を読む

貧しい子どもに劣等感を植えつける、日本の“教育格差”問題

2023年12月21日 07時00分更新

日本の教育は絶対的な格差を生み、子どもたちのメンタルにまで入り込んでいる

 著者は、決して日本の教育システムを否定したいわけではないと前置きをしたうえで、「富裕層と貧困層が混在する日本の教育環境のなかでは、低所得家庭の子どもたちは、自分が抱えるハンディーを感じやすい」と指摘している。

 それによって劣等感が生じると、子ども自身が身の回りにあるさまざまなチャンスを放棄することがあるのだとも。いわば、知らず知らずのうちに植えつけられた劣等感が足枷になってしまうということだ。

 印象的なのは、著者が昔、アフリカのギニア出身の有名外国人タレントと貧困についてのトークイベントをした際、そのタレントから聞いたということばだ。

「僕は大人になるまで、自分が貧しいって思ったことなかったよ。周りがみんな大変だったから、それが当たり前だって思っていた。だから、つらいとか大変だったっていう記憶がないの。けど、日本はそうじゃないでしょ。子供の時から自分は貧乏だとか、頭が悪いとか植えつけられる。こんなのかわいそうだよ。僕だったら嫌になっちゃうもん」(99ページより)

 ここからもわかるように、充実しているかに見える日本の教育は絶対的な格差を生んでおり、それは子どもたちのメンタルにまで入り込んでしまっているのだ。

 
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筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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