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AIイラストは“著作物”!? 中国で画像生成AIブームが大爆発したわけ

2023年12月18日 07時00分更新

中国に画像生成AIを広めた「オンライン生き仏」

 この一件でもうひとつ注目なのが、資料に示されていた画像の作成手順です。資料によれば、「秋葉aaaki」さんというユーザーがアップロードしたデータからStable Diffusionなどをダウンロードして、環境を構築したとしています。この秋葉aaakiさんという方は、中国でStable Diffusionの普及に大きく関わったとされているんですね。

Bilibiliの秋葉aaakiさんのページ。直近では11月の最新情報について300万のビューがある

 秋葉aaakiさんは、動画投稿サイト「Bilibili(ビリビリ)」での人気ストリーマーの一人。登録ユーザー数は100万人を超えています。可愛い感じの人工音声がついた、Stable Diffusionなどの画像生成AI解説動画を270本以上も投稿しています。

 さらに秋葉aaakiさんは、「Stable Diffusionインテグレーションパック」という形でパッケージデータをZIPでアップロードしてもいます。これをダウンロードすれば、画像生成AIを動かすために必要な、「Python」「CUDA」「Git」などの開発環境を自分でインストールする必要がなく、自動でインストールして設定してくれるというものです。

秋葉aaakiさんが配布している「Stable Diffusionインテグレーションパック」の起動画面。非常に多機能で、使いやすいと評判が高い

 CUDAは、NVIDIAのビデオカード用に3D処理をしてくれる専用ライブラリ。本来、NVIDIAのサイトにユーザー登録後にダウンロードする手順が必要なことを考えると、レギュレーションで直接の再配布が禁止されているものも含まれていそうですが、そこは恐らく無断でやっているものと推測されます。

 どうも、中国はグレートファイヤーウォールが敷かれている関係もあり、アメリカのサイトにアクセスするのが個人では難しい場合があるようなんですね。そもそもStable Diffusionの環境構築が手間で、初心者にとってハードルが高いことは日本でも知られています。それもあり、パッケージをダウンロードすれば使えるという簡単さが人気を呼んでいるようです。

 パッケージは毎月のようにアップデートもかけられ、熱心にもメンテナンスが続けられています。

 中国のユーザーには、秋葉aaakiさんの動画と環境を通じてStable Diffusionを学んだという人も少なくないようです。こうしたことをほぼ非収益目的でやっていることから、中国では「オンライン生き仏」と言われ、神扱いならぬ“仏扱い”をされています。権利的にはいろいろと怪しいんですが、爆発的に人気を広げている要因になっていることは間違いないようです。

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