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「聖地」で満たす大人の探求心

「盆栽って結局何が楽しいの?」って人、その答え、すべて「さいたま市大宮盆栽美術館」にあります

2023年12月14日 11時00分更新

文● 村野晃一/編集 ASCII
提供: さいたま市

 本記事は「つなぐ旅~東日本~ひがしにほんトラベルガイド」に掲載された同名記事を再編集したものです。

 長らく私にとって「盆栽」は謎の趣味だった。盆栽について私の持っている知識と言えば、『サザエさん』のお父さんである磯野波平さんの趣味、というくらいだ。ニュースなどで知りえた上滑りの情報で言えば、最近では日本人よりも、むしろ「BONSAI」として、外国の方に人気が高いのではないかという印象すらある。

 ちなみに日本の代表的お父さん像である磯野波平さんの年齢は54歳だそうだが、かくいう私は、すでに波平さんの年齢を超えてしまっている。盆栽のなんたるかも知らずに、日本人として、いや、大人のお父さんとしてこれでいいのか!?──。

 そんな焦燥にも似た感情を抱きつつ私が向かったのは、埼玉県さいたま市北区にある「さいたま市大宮盆栽美術館」(以下、大宮盆栽美術館)。

 こう言ってはなんだが「盆栽」よ、君にはいろいろと聞きたいことがある。せっかくだし、この大宮盆栽美術館で、積年の私の疑問をすべて解決してもらおうではないか。

 今回の取材に当たり、私が用意した疑問は以下だ。

●盆栽ってピンキリだけど、何がスゴイとどうイイのか? 値段はどうやって決まっているのか?
●そもそも、盆栽の見方が分からない
●庭にある盆栽と部屋に飾ってある盆栽は何が違うのか?
●茶道や華道のような流派があったりするんだろうか?
●盆栽とはいつからある趣味なのか? その歴史は?
●なぜ磯野波平の趣味は盆栽なのか?
●茶道の千利休、俳句の小林一茶、自分は嗜まなくても誰もが知るその道の有名人と言われる人がいてもおかしくないのに、なぜ盆栽にはそういったアイコニックな人物が存在しないのか?
●絵画には誰でも知っている名画があるし、陶芸でも有田焼や九谷焼といった有名な産地ブランドがある。盆栽にも同様に名作や有名ブランドのようなものがあるのか?

 こうして改めて疑問を並べてみると、私は盆栽について何一つ知らないということを再認識せざるを得ないが、通常の取材であれば、こうした基礎知識的なことはあらかじめ下調べして当たるものだ。だが、今回はあえて何も調べず、頭に「?」だけを携えて向かおうと思う。得てしてこうした場所を初めて訪れる人の主な目的は、知識欲や探究心の充足なのだ。もちろんすでに盆栽が大好きで、まだ見ぬ作品を一目見ようと訪れるクロートさんもいらっしゃるだろうが、この記事は私と同じく盆栽シロートで、「結局のところ、盆栽って何が楽しいの?」という今回用意した最後の疑問の答えを探している方に向けて記していきたいと思っている。そして、この最後の疑問には、どうにか自分で答えを見つけられるような取材をしたいと思ったのだ。

 日本人なら「盆栽」という言葉を知らないという人はそれほど多くないだろう。しかし、それと同時に、盆栽に詳しいという人が私の周囲にほぼいないのも事実だ。そんな私と似た境遇の方であればきっと、この記事が、この最後の疑問の答えを見つけるヒントになるかもしれない。

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