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iPhone 15 Proで外部ストレージに動画記録した際にコマ落ちが発生しているかも? その確認方法とデバイス選定の勘所

2023年11月14日 13時50分更新

文● 中山智 編集●北村/ASCII
提供: 日本サムスン

iPhone 15 Proで性能の低いUSBストレージを使うと
コマ落ちなど映像品質の低下が起きてしまう

 ここからは本題である外部ストレージでのProRes収録の検証に進みたい。テストとしてiPhone 15 Proの標準カメラでApple ProResをオンにして、内蔵ストレージ、T7 Shield、USBメモリーそれぞれに約10分の撮影(30fps/60fps)、フレーム落ちが発生していないかをMediaAreaの「MediaInfo」というソフトウェアを使って確認した。

 ただし内蔵ストレージに保存する場合、30fpsまでしか録画できない仕様となっている。これが内蔵ストレージのスペックでは最高設定の60fpsで撮影するのはハードルが高いということなのか、容量がすぐに足りなくなったり、内部温度が上昇しすぎないように配慮してのことなのかは定かではない。

回転台に置いてグルグルと回しながら約10分撮影

 録画したデータをMediaAreaの「MediaInfo」でチェックしてみた結果は下表のとおりで、Apple ProRes/30fps撮影の場合は内蔵ストレージとT7 Shieldで最小フレームレートと最大フレームレートの差はなかったものの、USBメモリ Type-C™では最小フレームレートが15fpsと設定の半分以下に落ちてしまっている。

録画したデータをMediaAreaの「MediaInfo」でチェック
ストレージ 記録モード 最小フレームレート 最大フレームレート ビットレート
iPhone内蔵メモリー Apple ProRes/30fps 28.571fps 31.579fps 751Mbps
T7 Shield Apple ProRes/30fps 28.571fps 31.579fps 870Mbps
Apple ProRes/60fps 54.545fps 66.667fps 1733Mbps
USBメモリ Type-C™ Apple ProRes/30fps 15.000fps 31.579fps 752Mbps
Apple ProRes/60fps 1.176fps 66.667fps 802Mbps

 さらにApple ProRes/60fpsではその差が顕著で、T7 Shieldは最小フレームレートが54.545fps、最大フレームレートが66.667fpsなのに対し、USBメモリ Type-C™は最大フレームレートこそ同じだが、最小フレームレートは1.176fpsとほぼエラーといってもいい数値になってしまった。

 ここでどうして30fpsや60fpsの設定で記録しているのに、フレームレートが下回るのか? また、その時に記録が止まらず、なぜそのまま記録を続けるのか? 疑問に思う方もいるだろう。結論から言うと、固定フレームレート(CFR : Constant frame rate)と可変フレームレート(VFR : Variable frame rate)の違いとiPhone 15 Proでの動画記録がどちらを採用しているかを知ることが、その謎を解くカギになる。

 以下は、記録した動画ファイルを「MediaInfo」で確認した際の実際の画面だ。赤枠で囲っている部分を見ると、フレームレートは「可変(VFR)」となっているので、可変フレームレートで記録されていることがわかる。

左がT7 Shieldに保存した動画、右がUSBメモリ Type-C™に保存した動画の情報

 固定フレームレートであれば、書き込み速度不足などでフレーム落ちが発生すると記録自体が止まってしまうが、可変フレームレートの場合は、フレーム落ちが発生してもそのまま記録を続けられる(速度の落ち込みの程度などにもよるが)。これはメリットにもなるが、フレーム落ちが発生していることに気付かない場合、デメリットにもなりうるだろう。

 またそれぞれのデータをAdobeの「Premiere Pro」で読み込み、各動画のプロパティをチェックしたところ、iPhone内蔵メモリーとT7 Shieldは安定したデータレート/秒だったが、USBメモリ Type-C™はデータレート/秒の波が激しく、Apple ProRes/60fpsではコマ落ちのエラー表示もあった。

T7 ShieldにApple ProRes/60fpsで撮影したデータをPremiere Proでチェックしたところ、コマ落ちは検出せず

USBメモリ Type-C™にApple ProRes/60fpsで撮影したデータをPremiere Proでチェックしたところ、多くのコマ落ちを検出した

 平均のビットレートもT7 Shieldで撮影したデータがいちばん高く、内蔵ストレージよりもより高い品質で動画撮影が行なわれている。ちなみに撮影データを元に平均書き込み速度を算出してみると、下記の結果となった。 

撮影データを元に平均書き込み速度を算出
ストレージ 記録モード 平均書き込み速度
iPhone内蔵メモリー Apple ProRes/30fps 87.85MB/s
T7 Shield Apple ProRes/30fps 101.66MB/s
Apple ProRes/60fps 201.27MB/s
USBメモリ Type-C™ Apple ProRes/30fps 87.95MB/s
Apple ProRes/60fps 93.83MB/s

 T7 Shieldでは30fpsで100MB/s以上、60fpsでは200MB/s以上と、こちらもほかのケースよりも速くなっている。ビットレートも高く保存されたデータもT7 Shieldがいちばん大きいわけだが、それだけに安定して転送&書き込みができる外部ストレージを選ぶことが重要といえる。

 特に可変ビットレートが採用された機器(今回の場合、iPhone 15 Pro)では、フレーム落ちが発生していてもすぐに気付かず記録を続けてしまっている可能性もあるので、気になる人は先に紹介したような方法で実際にフレーム落ちが起きていないかを確認してみよう。

 上記の内容はあくまでも検証時点で確認されたものであり、今後、OSアップデートなどにより異なる結果が出てくる可能性もあるだろう。また、Blackmagic Designが無償公開している「Blackmagic Camera」での挙動に関しても、機会があれば試してみたいところだ。

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