週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ネタバレ注意!! ドルビーアトモス版試写会レポート完全版

『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話の見どころをすべて紹介

2023年11月03日 09時00分更新

行動に意図があると考えると、戦車が勝手に動き始める

 ここで、もうひとりのゲスト柳野さんが登壇。岩浪さんとトークする形式で作品の解説が始まった。

岩浪 「ガルパンでは、毎回シナリオやコンテを見るたびに『これ、できるんだろうか』と感じますが、今回はシナリオを見てどうなんだろう、コンテを見てもどうなんだろう、そして映像を見てぶったまげた!……というのが正直な感想です。(柳野さんのほうを見て)さすがに今回のはやりすぎでは? コンテ段階でかなり直したと聞いていますが」

柳野 「はい。作品では3Dカットのコンテを修正する作業も担当しています。(ガールズ&パンツァーでは)最終章の第3話から作り方を少し変えていて、一度コンテを3D上に置き換えてブラッシュアップする工程を入れています。ここで戦車の挙動、コミカルな演技などをリファインしていきます」

岩浪 「コンテより明らかに盛っていますよね。まさか勝手にやったとか(笑)」

柳野 「……さすがに監督の許可は取っていますが、こうしたらどうですかという提案はしています。戦車の細かい動きはコンテを元に考えていきますが、仮に名前のない戦車の発砲だったとしても、そこに人が乗っていて本気で撃っているんだと考えると、自然に演技ができてくるので、それに合わせたコンテの修正を提案しています。映像の中の登場人物が生きていて、ちょっとした行動にもすべて意図があると考えると、戦車が勝手に動き始めるようになります。第4話ではそれができたと思います」

岩浪 「3DCGのモデルも常に進化していますよね。例えばテレビ版から劇場版になるときに五角形のナットを実物と同じ六角形にするといった違いもありました。なかなか気づく人がいないこともやっている」

柳野 「戦闘する場所に合わせて細かな装備を変えるなど、3DCGのモデルは常に更新されています。新しく登場する戦車はもちろんですが、(あんこうチームの)IV号戦車などもなにかしら手が加わっています。戦車に詳しい人なら違いに気付くのではないでしょうか」

岩浪 「総カット数は1000カットほどと聞いていますが、そのうちCGカットはどれくらいですか」

柳野 「800カットはあると思います」

岩浪 「戦いっぱなし(笑)。54分の上映時間のうち40分以上が戦車のシーンという構成ですね」

映像の理解度を深め、鑑賞の助けになる音づくり

 『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話はほぼ全編が戦車道の対戦シーンになっている。映画館ごとの音響の違いを確かめたいという意味で何度も脚を運びたくなる映画だ。本編の大半がアクションを含む戦車道の対戦で占められるため、音響演出のプランにも配慮があったそうだ。

岩浪 「(音響演出のプランは)本編すべてを見て満足できるよう、全体を考えて決めていきます。ふだんであれば、迫力を感じてもらう場面、気を抜いてもらう場面のメリハリを付けますが、(『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話では)映像の情報量が膨大なので、音はあまり目立たないようにし、映像の理解度を深め、鑑賞の助けになる音づくりを目指しました」

柳野 「ドルビーアトモス版では、どこから戦車が現れるか、どのように動いた結果かが分かりやすくなっていました。映像と音が相互補完して、より完成度が高まったと思います」

岩浪 「今までは映像も音もお互いに負けないよう、『ドヤ!!』と競い合っているところがありましたが、映像に寄り添って作るしかなかったですね」

 確かに、たくさんの音が重なるシーンでもひとつひとつの音が埋もれずにきちんと聴こえる。これはドルビーアトモス音声の隠れた特徴と言えるだろう。雪上を滑る戦車の滑走音、風の音、繰り返される砲撃。こうしたさまざまな音と登場人物の会話や音楽が一体となり、それぞれがきちんと聞き分けられる。これが迫力ある戦車道の対戦をより分かりやすく伝えることにつながるのだ。

 岩浪さんも鑑賞の際には「音の位置や移動感に注目してほしい」とコメントしていた。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう