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岸田文雄首相、日本は生成AIで後れを取ってはいけない、CEATECに合わせ

2023年10月23日 10時00分更新

生成AIの国際的なルールづくりにおいて、日本の存在感を発揮

 いま、岸田首相は、生成AIに強い関心を示している。

 オープニングレセプションの挨拶でも、生成AIに言及した。

 「生成AIについては、私自身、今年に入り、若手研究者やAI開発企業などと直接議論を重ねるなかで、無限の可能性を感じてきた」と前置きし、「G7広島サミットでは、私から『広島AIプロセス』を提案し、各国首脳の合意を取りつけた。年末に向けて、すべてのAI関係者向けの国際的な指針や、開発者向けの行動規範の策定を進める。皆さんの知恵をもらいながら、国際的なルール作りを主導していきたい」と語った。

 政府では、2023年5月11日に、AI戦略会議を発足し、そこから15日後には、AIに関する暫定的な論点整理案を取りまとめ、それをもとに、AI関連主要施策として、「リスクへの対応」、「AIの利用促進」、「AI開発力の強化」の3点を掲げ、AI関連の競争力強化のために、これらの分野を重点的に支援していく姿勢を示している。

 また、G7広島サミットで岸田首相が打ち出した「広島AIプロセス」では、信頼できるAIの実現に不可欠な共通原則として、すべてのAI関係者向けの国際的な指針を年末までに策定。さらに、生成AIを含む高度なAIシステムの開発者向けの国際的な指針や行動規範を、秋に開催するG7首脳オンライン会議に向けて策定を進めているところだ。

 生成AIの国際的なルールづくりにおいて、日本の存在感を発揮しようとしているところだ。

 しかも、専門家からは、広島AIプロセスが、単なるルールづくりや政策のレベルに留まらず、標準化や研究開発投資についてもカバーしており、これまでの閣僚級会合の声明にはないテクノロジーにまで踏み込んだ内容になっている点を評価する声があがっていることも見逃せない。

 また、政府が10月中にまとめる経済対策においては、計算資源の整備や基盤モデル開発に対する支援など、AI開発力の強化に加えて、中小企業や医療分野などへのAI導入の推進を進め、AIの開発および利用の両面から、強力に取り組む内容を盛り込む考えを示している。

 一方、10月9日に、京都市で開催された「インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)2023」において、AI特別セッションに出席。生成AIが、インターネットに匹敵する技術革新となり、人類の歴史に大きな変化がもたらされるようになることを指摘する一方、「生成AIが持つ可能性とリスクを踏まえながら、推進と規制のバランスを図り、生成AIが経済社会に与えるリスクを軽減しつつ、人類に対する恩恵を最大化していくために、いまこそ、人類の英知を結集することが重要である」と提言。「広島AIプロセスでは、IGFの機会も活用し、政府や学術界、市民社会、民間セクターを含むマルチステークホルダーの議論を通じて、幅広い意見を取り入れていく。G7を超えた幅広い意見を聞き、グローバルサウスを含む国際社会全体が、安心、安全、信頼できる生成AIの恩恵を享受し、さらなる経済成長や生活環境の改善を実現できるような国際的なルールづくりを牽引していく」と述べた。広島AIプロセスを、G7のなかに留めずに、幅広い意見を求める姿勢を明確に示したともいえる。

 実は、CEATEC 2023のセッションのなかで、AI戦略会議の座長でもある、東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センターの松尾豊教授が、岸田首相が3時間に渡り、生成AIの学習を行ったことに触れた。

 2023年8月14日に、岸田首相は、夏休みを利用し、東京大学松尾研究室を訪問。生成AIを取り巻く動向を学ぶだけでなく、プログラムの基礎を学び、大規模言語モデル開発の演習までを体験したという。ここでは、GPT-2をベースに、過去の首相演説290回分を加える継続事前学習を行い、ハイパーパラレータをチューニング。より精度が高い演説を作ることにも取り組んだ。

 松尾教授は、「忙しい岸田首相が3時間もかけて、これだけやっている。みなさんも、もっと生成AIを勉強した方がいい」と、セッションの聴講者に呼び掛けた。

デジタル敗戦国とも言われた日本は、生成AIの敗戦国になってはいけない

 岸田首相は、「インターネットの登場が、時間や空間の制約を超えて人類がつなげ、民主主義と経済社会に目覚ましい発展をもたらしてきたように、生成AIによって、人類の歴史に大きな変化がもたらされようとしている」と語る。

デジタル化ではインフラの整備が進んだものの、利活用が追いつかず、「デジタル敗戦国」とも言われた日本。生成AIでは、「AI敗戦国」になってはいけない。

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