第742回
Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ
Ryzen Threadripper 7000 HEDTのターゲットは
AMDの熱狂的なファンと最大限の拡張性が欲しい人
ここで疑問になるのは、Ryzen Threadripper 7000 HEDTのターゲットユーザーである。実はこの点に関しては明確なメッセージがいまだにAMDから出されていない。実際下の画像にあるRyzen Threadripper 7980Xのベンチマークデータはワークステーション向けのものであって、HEDT向けではない。
ではどんなユーザーがターゲットになるのか? 少なくとも3Dゲーミング向けとは言い難い。マルチスレッド性能では確かにRyzen 9 7950Xを上回るのは間違いないが、ゲーミングではシングルスレッド性能の方が効果的だし、さらに言えば3D V-Cacheが大きな効果を発揮するわけで、どう考えてもオーバーキルに過ぎる。
ローエンドのRyzen Threadripper 7960Xですら、定価ベースでRyzen 7 7800X3D(449ドル)の3倍以上(実売価格ではさらに差が付く)であり、しかも性能的にはRyzen 7 7800X3Dの方が上であろうと推定されることを考えると、おそらく用途は異なる。個人ベースで動画の編集(Vtuberの方向け)や写真の現像をされる方には間違いなく有用であるだろう。
このあたりを突っ込んだところ、「AMDの熱狂的なファン向け」というよくわからない回答以外に「Ryzen Threadripperは最大限の拡張性が欲しい人向け」という返事が返ってきたのはまぁ評価できる。
筆者みたいに7枚のディスプレーを接続するためにGPUを2枚、他にRAID 1を4組ぶら下げてる関係でSATAが最低8ポート、あと(オンボードGbEが壊れたので)GbEを2枚装着する、なんてユーザーには確かにAM5マザーボードでは「スロットが足りない」という感じになりがちである。そういうユーザー向けと思えば88レーンのPCIeも理解できるというものだ。
ただよほどのワークロードでもない限り普段はCPUコアが遊びがちになる。連載740回の話に戻るのだが、現状DirectMLはGPUを、OpenVINOはNPUを利用するパターンがほとんどである。ただ例えばOpenVINOはCPUでも利用できるし、DirectMLも適切なUMDドライバーを提供できればCPUで処理することも可能なはずである。
そこで、「64コアのRyzen Threadripper 7000 HEDTであっても、VNNIが搭載されているのでこれを使うことでAI/機械学習まわりの処理はかなり高速にCPUで実施できると思うのだが、そのあたりの対応は?」突っ込んで聞いてみた。
AMDによれば、なんとすでにDirectML用のCPUドライバーは完成してマイクロソフトのWHQLを取得しているし、OpenVINOですら問題なく動いているのだという。ただしアプリケーションがCPUを使うように指定してくれないと動かないので、あとはアプリケーションの対応待ちだ、という話であった。
このあたりの対応が進むと、Ryzen Threadripper 7000 HEDTの有用性がさらに高まりそうに思う。ソフトウェアベンダーの対応を期待したいところだ。
11月21日から出荷開始
なお、先にRyzen Threadripper 7000 HEDTの価格は示したが、Ryzen Threadripper Pro 7000 WXシリーズの方はまだ価格が公開されていない。どちらも11月21日から出荷開始とされているので、そのタイミングで公開されるのかもしれない。
ただThreadripper ProはリテールではなくOEMメーカーからシステムの形で提供されるのが最初なので、価格は公開されないままの可能性はある(リテール販売に関してはまだ決まっていない、とのことだった)。
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