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メタのメタバース熱は下がり気味? 新製品「Quest 3」は確かにすごいが、理想に届かず

2023年10月23日 07時00分更新

MR自体、人を選ぶ機能ではある

 また、MR体験は非常に目を引くものの、人を選ぶ機能ではあるなと思います。まず部屋の広さがないと普通に体験できません。筆者の仕事部屋のような本やら機材がそこら中に転がっている狭い部屋だと、MRが床を認識してくれないんです。2台並んでいる大きなパソコンの上部分を床と認識してしまって、現実よりもかなり高い位置に床面が設定されてしまいます(笑)。

 メタのプレゼンや、レビューされているストリーマーの方の動画を見ていると、共通しているのはみんな部屋がきれいで広いというところなんですよね。

 その上、MRによって誰もが使いたくなるユースケースがなかなか見えづらいという弱点もあります。YouTubeのデモ動画なんかを見ているとみんな部屋がきれいで広いんですよ。汚い部屋の動画は上がっていない。まあそれはそうだよなと思います。

QuestProの深度センサーを使って部屋を認識しているシーン。こんな広いリビングに住んでいる人って……(Meta Connect 2023の基調講演より)

 メタの元CTOで、一時は一体型VRに情熱を燃やしていたジョン・カーマック氏は、MRがQuest 3の販売を押し上げることに対して以下のように疑問を挙げています。

「私はMRのアプリケーションがヘッドセットの売上を伸ばすエンジンになるという確信が持てないままだ。高品質なパススルーは素晴らしいが、レンダリングと現実世界の環境との統合を中心に構築されたアプリケーションが何らかのキラーアプリになるとは思えない」

 さらに、「MRの未来を示す高度に制作されたビデオでは、環境は常にスタイリッシュで、清潔で、広々としている。それは現実のユーザー層を代表するものではない。(MRの)その努力には確かに価値があるが、私はいつも、最初につかむべき果実はもっと低いところにあると思ってきた」(カーマック氏)とも述べています。

 彼が言う「最初につかむべき果実」とはVRのことであり、そのゲームの充実であると考えていることは想像に固くありません。

 それでも、メタが2年前に示した「距離や空間に関係なく、仕事でも、プライベートでもソーシャルを体験できる環境を作る」という原則を今も掲げ続けている以上、MRの有力なユースケースを模索する作業は今後も続けられていくのでしょう。

 ただし、カーマック氏は「Quest 3は素晴らしいヘッドセットだ。(略)Quest 2からの大きなステップアップであり、コストパフォーマンスは高い。しかし、VR市場を本格的に成長させるにはまだ価格が高すぎる」として、高額さを批判しつつもQuest 3を評価しています。

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