お問い合わせメールへの返信、約8割が生成AIに
──すでに実証実験から実用段階に移っているような取り組みもあるのでしょうか?
森田 今は、いくつかのPoCを組み合わせながらやっているところですが、お客様からのお問い合わせメールに対して、返信メールのベースを生成AIに考えてもらうといったことは、すでに7月から導入しています。メールに対してはもちろんテンプレートもあるのですが、それだけでは対応できないものを、これまでのようにゼロから人が考えるのではなく、その一次案を生成AIに作ってもらう。具体的には、Microsoft AzureのオープンAIサービスをベースに、社内向けに開発した「Benesse Chat」を使用しています。オペレーターがお客様のメールを読んで、こういうことについて回答してほしいというポイントを箇条書きにして投げると、それをもとにメールの文章を作ってくれるというものです。
──手応えをどう感じていますか?実際にオペレーターさんからのフィードバックなどもあれば教えてください。
森田 お問い合わせメールへの返信について、これまでは人が100%やっていたところを、今は約8割が生成AI、残り2割が人くらいまでになっています。実際に担当の窓口からは、ものすごくラクになったという声ももらっています。1つ返信するのにも四苦八苦していたところを、生成AIがベースを作ってくれるようになったおかげで、1件当たりの平均対応時間も15分から8分へ短縮できている。より多くの回答をお待たせせずに返せるようになっています。
これまでに進めてきたChatbotとか、音声認識でも同じですが、やはり現場で実際にオペレーターに使ってもらって、その声を聞くことが大切だと思っています。プロジェクトのメンバーが現場に行って、サイドバイサイドでユーザビリティを確かめながら直接意見をもらう。アンケートのような定量的なやり方もありますが、現場の生の声を聞くことでどのくらいまでできるのか、具体的な目標を設定できるようになると思っています。
──現場のフィードバックから、見えてきた課題などはありますか?
森田 そうですね。メールの返信に関していえば、今、生成AIがサポートしているのはあくまでもベースになる作文だけで、お客さまの契約内容に応じた内容については、人がサポートしています。生成AIがそうした提案もできるようになれば、オペレーターの作業はさらにラクになる。より生産性があがるというフィードバックをもらっています。そのためには内部システムと連携させて、必要な情報を必要なところに自動的に見に行けるようにしなければなりません。セキュアな環境において社内のナレッジを見に行くようなインターフェースを、どうやって作っていくか。それが次の段階に向けての課題かなと思っています。
また、応答履歴の要約については、その内容がご意見なのか、苦情なのかによっても、要約のレベルや押さえておかなきゃいけないポイントが変わってきます。何のためにその履歴を要約をするのか、目的に応じたプロンプトの仕込み方とか要約された結果の粒度も、今後の検証のポイントになってくると思います。
一方でオペレーターの対応はスピード感が大事なので、テキスト入力とか生成AIの回答時間にタイムラグがあると、お客様をお待たせすることになってしまいます。リアルタイム性をどこまで担保できるか。たとえばお客様の会話から必要な回答の候補を表示できるようになったとして、それが何秒以内に表示できるのかですよね。メールやチャットと違って電話ではリアルタイム性が重要なので、そこは課題になるかなと思っています。
目的に応じた生成のレベルとリアルタイム性、加えて今はまだ顕在化しているものはありませんが、セキュリティ面も今後課題としては上がってくると思っています。セキュリティを担保するためには、どうしてもワンクッション人の目や手を入れざるを得ないですが、そうするとリアルタイム性が損なわれる。システム側の安全性を担保した上で、どうスピードを維持できるのかは、大きな課題になりますね。
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