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〈前編〉ジャンプTOON 統括編集長 浅田貴典さんロングインタビュー

縦読みマンガにジャンプが見いだした勝機――ジャンプTOON 浅田統括編集長が語る

縦読みマンガに欠けているのは「読者とつながる場づくり」

―― 少し戻りますが、プラットフォーム事業者から十分なデータの提供が受けられない、もしかすると十分な対価を得ていないのではないかという課題は、マンガのみならずアニメについてもよく指摘されます。

 週刊少年ジャンプであれば、ハガキアンケートで直接読者からの反応を得られたわけですし、少年ジャンプ+も読者コメントやランキングデータなどを得られます。配信プラットフォームとの向き合いでは特にどのあたりが課題となってきますか?

浅田 具体的にどのデータを、というのは先方との契約もありますので、お話することはできないのですが、すべての作品についてのデータをスピード感を持って提供いただく、というところが難しいのです。

―― なるほど。自社サービスなら価格や公開/非公開の量やタイミングをコントロールしやすくなるという点はありませんか?

浅田 それは、そうなんですが……少し整理すると、雑誌型のマンガアプリと書店型のアプリとで分けて考える必要があります。

 少年ジャンプ+はまさに雑誌型のマンガアプリで、とにかく作品をいかに広く読者に知ってもらうことができるか、という点に特化しているわけです。少年ジャンプ+は課金などの収益性の優先度はそこまで高くありません。

 一方、書店型アプリはアプリ内部で読者に回遊してもらって、その過程のなかで、いかにおカネを落してもらうか……という設計になっていますよね。

 そのどちらに、どのあたりに「ジャンプTOON」を位置づけるかは、現在ビジネススキームを検討しているところなので、これも現時点では詳しくはお話できないのですが、ただ我々の思想としては作品を広くお客さんに知ってもらうというところを、一番大切な「イズム」として事業を構築していきたいと思っています。

―― 確かに、縦読みマンガに参入した方々のお話を聞くと、「いかに知ってもらうか?」が大きな課題になっていますね。ランキングの上位に入り、アプリのトップ画面などで大きく取り上げられればヒットの可能性が高まりますが、初動でそうならなければなかなか浮揚するチャンスはない。

 自分たちでメディアを持つ、というのは現状のその課題の解決にもつながると理解しました。読者とつながる場づくりを……というわけですね。

浅田 と、思っております。横開きのマンガではそれがある程度うまく回っていますので。

 作品は雑誌型のアプリやブラウザのマンガサービスだけで読まれているわけではなく、X(Twitter)でオーガニックに知ってもらえたりもします。また現在、集英社が取引している電子書店は59社ありますが、品揃えは大きく違いません。

 つまり多くの電子書店が、それぞれのストアの特色に合わせた作品を営業してくれているわけです。そういった循環ができているのが、横開きのマンガが広く親しまれている秘訣だと思っているのです。そして、縦読みマンガはその仕組みが発展途上なのではないか、というのが正直なところかとも思っています。

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