週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

〈前編〉ジャンプTOON 統括編集長 浅田貴典さんロングインタビュー

縦読みマンガにジャンプが見いだした勝機――ジャンプTOON 浅田統括編集長が語る

「ジャンプTOON」統括編集長の浅田貴典さん(集英社 第3編集部部長代理)にうかがった

後編はこちら

 2022年度の縦読みマンガの国内市場規模が500~600億円に達したという市場分析が出てきた。マンガの1カテゴリとして地位を確立しつつあるこの分野に、今年5月、集英社も「ジャンプ」ブランドを掲げて乗り出すことを宣言した。

 その名も「ジャンプTOON」。出版社のみならずIT企業など様々な事業者が続々と参入したなか、どう戦っていくのか? 集英社でジャンプTOONの統括編集長を務める浅田貴典さんに詳しく話を聞いた。

「ジャンプTOON」は現在アプリ制作中。2024年中に稼働開始予定(画像をタップすると外部サイトに飛びます)

このタイミングで縦読みマンガに参入する理由

―― なぜこのタイミングで、ジャンプブランドを利用した縦読みマンガへの本格参入を決めたのでしょうか?

浅田 そもそものきっかけは、若い社員から「やりたい」と声が挙がったことです。そこからさまざまな経緯があって「浅田が面倒を見てね」ということになりました。私は基本、頼まれた仕事は断らないので「やります」と。

 では、なぜGOが出たのかと言えば、横開きのマンガが紙もデジタルも好調なときだからこそ、新しい事業にチャレンジするべきだと考えるからです。小さな会社であれば、順調な事業に絞り込んでの一点勝ちを狙う必要がありますが、私たちはリーディングカンパニーとして、マンガ関連のサービスに向き合う責任があります。簡単に言ってしまうとそれだけの理由です。

 「ジャンプTOON」編集部を立ち上げるにあたって調査も実施しました。おおよそ縦読みマンガの国内市場規模は600億円ほど。一方、横開きのマンガは約6100億円くらいの規模と想定されます。

なぜ「ジャンプ」の名を冠するアプリを新たに作るのか?

 私の印象としては、縦読みマンガはまだ若い市場です。そこで、この事業を始めるにあたってさまざまな方向性を考えました。

 まず、縦読みマンガ作品を作ってLINEマンガさんやピッコマさんのような電子書店に卸して販売をするという戦略だと、我々の強みを生かしきれないのではと考えました。電子書店さんからいただけるデータが限定的で、作品のクオリティー改善が十分にできず、事業をドライブ(推進)することが難しいと判断し、この方向はNGとしました。

―― データを把握するうえでも、やはり自前でメディアを持つべきと。

浅田 はい。そして次に検討したのは、ブラウザベースかアプリベースかという点です。特にコストという面で考えればブラウザの可能性もありました。韓国の縦読みマンガも実際、ブラウザベースでの展開が結構あります。ただ、ブラウザだと、自社媒体とはいえ得られるデータは限定的、書店としての運営チャレンジも限られた範囲になります。

 LINEマンガさんやピッコマさんがすでに業績をあげていらっしゃるなか、我々が後発でヒット作を出していくには、マンガ家をはじめとした作り手とのつながりが重要です。

 旗印となるような作品ラインナップを整え、それらの作り手のみなさんが『ここでやりたい』と思ってもらえるようにならなければならない。したがって、コストはかかりますがアプリベースでいこうという決断になったわけです。

 アプリは現在開発中なのですが、そのアプリについてはさらに2つの選択肢がありました。それは、ジャンプという名前を掲げるか、それともまったく別の名前にするか。勝負するのであれば、やはり「ジャンプ」でいこうと。

 現在、マンガに限らずコンテンツがあふれている時代です。作家さんにとっても自分の作品に気付いてもらうための「コスト」がとても大きくなっています。

 そのなかでジャンプというブランドは、これまでの作家さんや編集者が綿々と積み上げてきた「このブランド名が付いているならば面白い確率が高いはずだ」という信頼があります。であれば、ジャンプを掲げるべきだということで、名称を「ジャンプTOON」に決めました。

 以上がアプリベースで縦読みマンガ事業を立ち上げることになった経緯です。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事