進化したグーグル「Pixel 8」が示すスマホ業界の新たな動向(石川温)
グーグルと日本メーカーが共存共栄できる施策に期待
実はグーグルは特に日本市場を重視している。香港の調査会社であるカウンターポイントリサーチによれば、Pixelの国別出荷シェアで、2023年1〜3月においては日本が34%と世界最多だったことが明らかになった。
そんななか、Androidというプラットフォームを提供するグーグルが、ハードウェア展開に本気になってきたことで、逆風が吹き始めているのが、これまでAndroidスマートフォンを手がけてきたメーカーだ。
10月3日に「AQUOS sense8」を発表したシャープは「プラットフォーマーのスタンダードスマートフォンも出ている。これは大きな地殻変動だと言える」(小林繁通信事業本部長)とPixelの躍進に警戒感を示す。
実際、Androidスマートフォンの販売シェアではトップを維持していたシャープだったが、先述のIDCの調査ではPixelに首位の座を奪われてしまっている。
これまで、シャープはAQUOS senseシリーズが台数を稼いできたが、Pixel 7aというまさにミドルレンジの価格帯で競争力のあるスマートフォンに苦戦している感があるのだ。
グーグルが強いのがやはり販売施策に多額の予算をつぎ込めることだろう。Googleストアを見ると、まず飛び込んでくるのが「Pixel 8とPixel 8 Pro、どちらを買っても3万9800円より」というコピーだ。
実際は、iPhoneやPixelなど、いま使っているスマホを下取りに出すというのが前提ではあるが、それとは別にPixel 8 Proなら5万円分の次回以降に使えるストアクレジットがもらえるようになっている。下取りを組み合わせれば、10万円を切ってくるだけに一気に割安感が出てくるのだ。
ただ、次回以降に使えるストアクレジットと言うことで、結局、支払い自体はそこまで安くなっていない。しかし、ストアクレジットで5万円分も支給されると言うことは、次もPixelを買わなくてはということになるだけに、結局、Pixelに囲い込まれることになる。
今年、日本市場においては京セラやFCNTがスマホ事業の見直しをした。このままグーグルがPixelを頑張れば頑張るほど、京セラやFCNTに続くメーカーが出てきてもおかしくない。
数年後、「日本のスマホ市場にはアップルとグーグル、中国メーカーとサムスンしか残らなかった」なんてことがないよう、グーグルにはPixelでAndroid市場を盛り上げつつ、パートナーである日本メーカーも繁栄し、共存共栄できる施策を期待したい。
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