週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

iPhone 15発売日のストにiPhone 12の電波問題 フランスでご難続きのアップル

2023年10月03日 08時00分更新

 iPhone 15の発売日は、最新のiPhoneに盛り上がる消費者が世界に多くいることを示す重要な日だった。しかし、フランスのApple Storeはちょっと様相が違った。欧州で大手市場であるフランスは、アップルにとって少し厄介な市場になっている。

フランスの電波行政当局がiPhone 12の問題について報告するページ。フランスのみならず、EU圏全体に広がる可能性についても触れられている

iPhone 15発売日、インフレに伴う賃上げ要求のストを決行

 9月22日と23日、Apple Storeで働くスタッフがストライキを実行した。

 アップルはフランスで20ヵ所のApple Storeを展開している。そのうち、首都パリのオペラ座近くにあるフラッグシップ店舗は、開店してはいるものの少人数での運営となったとのこと。映像を見ると、外には雨の中で数十人が旗を掲げて立っており、同時に(おそらくは)最新のiPhoneを手に入れようと並んでいた人もいる。

 フランスではストは珍しいものではない。数年前には「黄色いベスト運動(Gilets Jaunes)」が話題になったが、この国の人はよくストをする。学校の先生だけじゃなく、生徒もする。鉄道の職員がストをすると、鉄道は間引き運転や運休になるが、人々の反応は「仕方ない」。自由、平等、博愛の国において、ストをする権利は尊重されている。

 「権利を主張しなければ、何も得られない。悪い状況で我慢するの?」 あるイベントで、フランス、オランダ、英国と各国のプレスが集まった際に、フランス人が冗談まじりに、しかし誇らしく語った言葉だ。当時の話題は、長引く年金問題だった。

 さて、Apple Storeのスタッフのストは、インフレを受けた賃上げ要求。フランスのインフレは年5%近く。労組は7%の賃金アップを求めたが、アップル側は4.5%を提示。折り合いがつかないことからストを呼びかけたという流れだ。「目的はApple Store閉鎖ではなく、経営陣と消費者に問題を認識してもらうこと」という労組代表のコメントを紹介されていた。

 4つの労組すべてが呼びかけ、2300人いるスタッフのうち3桁程度がストに参加したという。労組の関係から、バルセロナでもApple Storeのスタッフがデモをしたと報じられている。

なぜか今更、iPhone 12の電磁波問題

 アップルを悩ませるもう1つの問題が電磁波だ。フランスの通信規制当局であるANFRが9月12日に明らかにしたもので、iPhone 12が発する電磁波が欧州連合が定める基準値を超えているという(https://www.anfr.fr/liste-actualites/actualite/temporary-withdrawal-from-the-market-of-the-iphone-12-for-non-compliance-with-eu-regulation)。ANFRはアップルに対し、対応しなければ「iPhone 12」の発売停止とリコールを求めるとした。

 iPhone 12は2020年に発売された。なぜ今更という気もするが、ANFRは毎年、無作為の店舗で約150機種の無線通信デバイスを購入し、電磁波が人体に吸収される率(SAR)が基準値より下かをチェックしている。今回、その1つがiPhone 12で、基準値を上回っていたということになる。

 SARの測定は、体に近い時と離れている時の2つ。前者は洋服のポケット、後者はカバンの中やジャケットのポケットを想定しているそうだ。今回、iPhone 12が赤信号になったのは前者。ANFRによると、iPhone 12のSARは1kgあたり5.74W。これはEUが定める1kgあたり4Wを上回る。

 ANFRの発表を受け、多くの店舗からiPhone 12は姿を消した。アップルもApple Storeおよびオンラインでの販売を控えた。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事