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安全に行こうよ、海外!

「宿に行ったら空き家だった」架空の詐欺宿トラブルを避けるには

2023年09月27日 07時30分更新

文● 中山智 編集●こーのス

マジかよ、そんなことって……

 先日、旅行系のニュースとして話題となったのが「予約した宿に行ってみたら雑草の生い茂る空き家だった」という記事。大手OTAのブッキング・ドットコムで、「新築8/17オープン150平米Designer'sVILLAガスBBQ(無料)外風呂大型テラス海3分」といったうたい文句の記載された別荘タイプの宿を予約したものの、現地にはそんな宿泊施設はなく、架空の詐欺宿だったというわけです。

 OTAのホテル予約サイトは、宿を横断的に検索でき、オトクに泊まれるホテルを見つけるのに便利です。ただしブッキング・ドットコムに限らずOTAのホテル予約サイトは、実店舗をもたず極力少人数による運営でコストを下げているため、トラブル時のサポートが手厚くありません。

オランダ・アムステルダムにあるブッキング・ドットコム本社

自己申告のみで始められる宿事業は
事実確認があいまいなことが多い

 ちなみに、ブッキング・ドットコムへ運営している宿を掲載している知人の話によると、宿を登録する際はオンラインでの登録のみとのこと。Googleマップへの掲載で宿の正確な場所を調整するため電話でのやりとりはあったものの、ブッキング・ドットコムの係員が直接現地を視察するといった作業はなかったそうです。

宿を掲載する際の登録は15分で完了をうたうほど手軽にできる

 そのため、登録に必要な写真などの素材(該当の事件では、宿の写真もほかの貸別荘からの無断転載)とブッキング・ドットコム側から一時的にやりとりできる連絡先さえあれば、架空の詐欺宿を登録するハードルはかなり低いと考えられます。

 今回の架空の詐欺宿が、なにを狙っての詐欺だったのかは正確にはわかりませんが、例えば「すでに廃業した宿が掲載を止めていなかったため、到着したら営業していなかった」といったケースもOTAのホテル予約サイトを使ったトラブルとして耳にします。

 筆者もホテルズドットコムという別のサイトで、何の手違いか、予約が宿に通っておらず、現地に到着してから宿がない状態となり、サポートデスクへの問い合わせや宿の予約し直しなど、非常に苦労をした経験があります。そのため、OTAのホテル予約サイトは使うものの、いくつかの注意をしながら、極力トラブルにならないように注意を払って予約しています。

用語解説 OTA
 Online Travel Agentの略で、インターネットの普及により登場した、従来の旅行代理店のような実店舗を持たないオンライン専門の旅行会社。航空券やホテル、現地ツアーなどをウェブサイトやアプリから24時間いつでも手配できるのが魅力。

利用者はクチコミのチェックと
ストリートビューでの確認を必ずしよう

 自分でできる注意点のひとつは、クチコミのチェックです。OTAのホテル予約サイトは、利用者のクチコミを投稿できるシステムを搭載しているのがほとんど。ここで注意したいのが、クチコミの内容よりも、いつ投稿されたかということ。直近でクチコミが投稿されていれば、少なくとも営業はしている宿であることがわかります。

クチコミは投稿した日付が重要

 加えて、利用しているOTAのホテル予約サイトだけではなく、ほかのホテル予約サイトGoogleマップでのクチコミやストリートビューで現地の様子公式サイトの情報を確認し、相違やおかしな点がないか、多角的にチェックするのも有効です。

ストリートビューで現地の様子を事前にチェックしておくのもおすすめ

 さらに、旅慣れていない人(トラブルがあった際に現地対応できる自信がない人)ならば、1棟貸しの別荘やアパートメントタイプは避けたほうがいいでしょう。前述のように、宿を提供する側の登録のハードルがかなり低いため、詐欺とまではいかないまでも、対応の良くないオーナーがいるケースも避けられません。

貸し切りの1軒やアパートメントは旅の初心者にはハードルが高い場合もある

 別荘やアパートメントタイプは、時間と場所を決めてオーナーとカギのやりとりをしたり、サイトで指定された住所は受け付けのみで実際の宿は別の場所、といったケースもよくあります。いろいろとトラブルにつながりやすいポイントがあるので、言語や文化の違う海外であるほど注意が必要です。

個人経営の安宿は人が常駐していないのでトラブルに弱い
チェーン経営のホテルならサポート面でも安心度は高い

 また、到着が深夜だったり、初めて訪れる場所で土地勘がないといったケースでは、チェーン経営で展開をしているような名前の通ったホテルを予約するのが無難です。日本は便利なので忘れてしまいがちですが、海外の小さなホテルはチェックインが24時間対応でなかったり、時間外は電話をして呼び出したりといったことがあります。

 筆者が過去に遭遇したケースをお話しましょう。夜遅く到着した香港の小さな宿の話ですが、その宿には、入り口にセキュリティがありました。暗証番号を入力する必要があったものの、伝えられた番号では反応せず、宿に入ることができません。時間は深夜。何度入力しても鍵は開かず、宿に問い合わせをしたり、管理者が来るのをドアの前で待ち続けるなど、チェックインに時間がかかったことがあります。結局、事前に伝えられていた暗証番号が更新されてしまっていたことが原因でしたが、慣れない土地で深夜にチェックインできないとなると、不安ですし一人旅では危険もともないます。

小さいホテルだと、暗証番号を入力しないと中に入れない、というところもある

 その点、名前の通ったホテルなら、フロントに人が24時間常駐していることがほとんどなので安心です。また、そういったホテルの場合は、OTAのホテル予約サイトから予約するより多少高くても、そのホテルの公式サイトから予約したほうが、直接そのホテルがサポートしてくれるため安心です。

観光庁が配布している旅行予約サイト利用時のチェックポイント(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000234.html

 「トラブルも旅の醍醐味」という面はありますが、事前に避けられるトラブルなら対処しておいたほうが、ストレスなく楽しく旅ができるというもの。旅先の宿を予約する際には参考にしてみてください。

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヶ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

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