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ラー博にまつわるエトセトラ Vol.30

あの銘店をもう一度第22弾  迷いなし!ひたすら濃厚 直球勝負の"どトンコツ" 久留米「魁龍博多本店」

2023年09月13日 11時30分更新

 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 2022年7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

前回の記事はこちら: あの銘店をもう一度第21弾 ふくちゃんが素通りさせぬ店の味 博多「ふくちゃんラーメン」

過去の連載記事はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 あの銘店をもう一度の第22弾は、日本一濃厚?な”どトンコツ”ラーメンの久留米「魁龍博多本店」です!出店期間は2023年9月19日(火)から10月2日(月)です。通常3週間の出店ですが、今回は2週間の限定となりますのでお間違えなく!

魁龍博多本店の「ラーメン」

 まずは魁龍博多本店の歴史からご紹介いたします。

 魁龍の創業は1992年ですが、そのルーツは1952(昭和27)年まで遡ります。

 とんこつラーメンの発祥は福岡県久留米市。1937(昭和12)年に創業した南京千両が始まりとされ、1947(昭和22)年に創業した「三九」が偶然の失敗から、今のように白濁したとんこつラーメンを生み出し、鹿児島を除く九州全域に広がっていきました。

 その後、久留米では「清陽軒」、「幸陽軒」が台頭し、「清陽軒」創業者・飯田耕作氏の義弟にあたる香月昇氏は「清陽軒」で腕を磨き、当館にも出店した「大砲ラーメン」を1954(昭和29)年に創業。

  一方、1952(昭和27)年創業の「幸陽軒」の立ち上げに携わり、味を作り上げたのが、「魁龍」店主・森山 日出一さんの父親にあたる森山 定男さん。定男さんは友人とともに「幸陽軒」を創業。定男さんが味づくりを担当しました。その後、1954(昭和29)年に久留米市六ツ門町に「珍宝軒」という屋台を開きます。その父の味を受け継ぎ、久留米ラーメンの源流となるとんこつ一本やりの味で1992年4月6日に小倉で開業したのが「魁龍」です。

若き日の森山定男さん

 店主・森山 日出一さんは1959(昭和34)年福岡県久留米市生まれ。幼いころから父親のラーメンの味に親しんで育ちます。18歳の頃から水商売の道に入り、最終的には大小18店舗を展開するほどの成功を収めます。

魁龍博多本店 創業者森山 日出一さん

 しかし、幼いころから食べてきた久留米ラーメンが忘れられず、それまで築き上げた全てのキャリアを捨て、自ら父親の味の復活を決意し、1992年、小倉に「魁龍」をオープン。「頑固と呼ばれても構わない」と頑なに久留米の味、父親の味を守り通すという覚悟で始められました。

魁龍博多本店の外観

 しかし、父親のラーメンのみならず、久留米のラーメンはよく食べていたものの、ラーメン作りの経験はなかったため、父親の伝手で紹介された久留米のラーメン店で、久留米ラーメンの基礎を学びました。そこからは独学で、父親の味、自分が好きな久留米ラーメンの味を追求し、その結果、どんどん濃厚な味になっていったのです。

 2001年、魁龍博多本店が新横浜ラーメン博物館に出店。

 当時、ここまで超濃厚なとんこつラーメンは、首都圏はもちろんのこと、世界中探してもないだろうという結論に至りました。そこで、通常の濃厚とんこつラーメンと差別化するうえで"どトンコツ"という言葉で表現しました。この言葉が「魁龍」の全てを表しています。

濃厚などトンコツスープ

  スープに使用するのは豚の頭と背脂だけ。昔ながらの鉄の大釜で、豚頭を焦がさないようつきっきりで24時間、ひたすら煮詰めます。徹底的に煮詰めるため、ひと釜で仕上がるスープは多くても50杯分です。「魁龍」の濃厚スープのもうひとつの秘密は、創業以来注ぎ足し続けてきた呼び戻し方式。漬物の「糠床」の原理と同じように、完成したスープをベースに、豚頭と水を加え、新しいスープの仕込みを行います。こうすることで、熟成されたスープと若いスープが絶妙なバランスを醸し出し、こってりと濃厚ながらも豚骨本来の旨みが生きた、マイルドな口当たりのトンコツスープが出来上がります。

超濃厚なスープ

 麺はスープとのバランスを考えて、2日間寝かせた低加水で中細のストレート麺を使用。

 久留米ラーメンは本来博多のように「バリカタ」や「カタ」というゆで加減でラーメンは作りません。

 森山さん曰く「魁龍自慢の茹で加減である“ずんだれ”で味わっていただきたく、今回の出店では全ての麺を“ずんだれ”で味わっていただきます。」とのこと。

 「ずんだれ」とは、やわらかく茹でた麺のことですがコシがあり、魁龍博多本店のスープに一番マッチする美味しい茹で加減です。

“ずんだれ”で茹で上げた麺はスープとベストマッチ

 通常、「あの銘店をもう一度」の銘店シリーズは3週間の出店期間ですが、「魁龍 博多本店」は2週間の出店となります。

 大釜で作るものの、徹底的に煮詰めるため、ひと釜で仕上がるスープは多くても50杯分。そして、出店期間とその前後の期間は博多本店を閉め、本店で作ったスープをラー博まで送り込んでいただきます。そのため、2週間分が限度なのです。

スープを仕込む森山さん

  世界一濃厚?などトンコツラーメンがラー博で食べられるのは2週間。出店期間は2023年9月19日(火)~10月2日(月)。営業時間で換算すると142時間しかありません。

 この機会に皆様のお越しをお待ちしております。

 次回、銘店シリーズ第23弾は気仙沼「かもめ食堂」さんです!

お楽しみに!!

新横浜ラーメン博物館公式HP
https://www.raumen.co.jp/

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文/中野正博

中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。

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