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VRAM次第でゲーム性能は変わる?GeForce RTX 4060 Ti 8GB版vs16GB版で対決

2023年09月06日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

 Ada Lovelace世代のアーキテクチャーが初めて60番台のGeForceに! という謳い文句で登場した「GeForce RTX 4060 Ti」が発売されたのは2023年5月のこと。

 フルHDでAAAタイトルを高画質もしくは高フレームレートで楽しむことを志向したGPUだが、採用されたAD106コアはメモリーバス幅が128bit、インターフェースがPCI Express Gen4 x8、さらにVRAMがGDDR6で8GBという仕様が話題になった。メモリーバス幅が狭いのはAda Lovelaceアーキテクチャーの特徴である巨大なL2キャッシュでなんとか緩和できるとしても、8GBというVRAMでは足りないのではないか? という疑念があったからだ。

 今回レビューするVRAM 16GB版RTX 4060 Ti(以降“RTX 4060 Ti (16GB)”と表記)は、「一部のゲームにおいてVRAM 8GBでは足りない」という状況に対するNVIDIAの回答である。

 だが、このRTX 4060 Ti (16GB)は価格の高さが議論を呼んだ。初値8万8800円という価格設定は当時のRTX 4070とほぼ同じ。8月下旬時点では最安モデルで7万円弱に落ち着いたものの、主力モデルではRTX 4070のほうが安いまである。RTX 4060 Ti (16GB)は、VRAM 8GBでは満足できない“プレミアム・オプション”的な扱いのGPUである。

NVIDIAがRTX 4060〜RTX 4060 Tiを初めて発表した時の資料より抜粋。RTX 4060 Ti (8GB)の性能を旧世代60番台と比較した時の性能を示したものだが、赤矢印のついたゲーム(「BIOHAZARD RE:4」のこと)のグラフに注目

これがRTX 4060 Ti (16GB)だとバーが一気に伸びる。その他に「A Plague Tale: Requiem」も伸びているが、BIOHAZARD RE:4よりは伸びていない。NVIDIAはこういったゲームに対する備えとしてRTX 4060 Ti (16GB)を準備したと説明している

 今回筆者はPalit製ファクトリーOCモデル「GeForce RTX 4060 Ti JetStream OC 16GB」を手に入れた。VRAMの量が増えるとパフォーマンスは8GB版より改善するのか? 値段的に格上だがVRAM搭載量が12GBのRTX 4070に勝てるのか? この素朴な疑問に答えてくれる検証となるだろう。

国内では最速で店頭に並んだPalit製「GeForce RTX 4060 Ti JetStream OC 16GB」。購入時価格は8万8800円だが、原稿執筆時点では6万9800円で流通している。ちなみに同社の8GB版は6万円弱で流通している

補助電源は8ピン×1。RTX 4060 Ti (8GB)と同じだ

カードの厚みは2.5スロット厚。映像出力端子の構成はごく一般的な構成だ

VRAMが増えたぶんTGPも上昇

 VRAM容量以外RTX 4060 Ti (16GB)とRTX 4060 Ti (8GB)の間には大きなスペック差はない。CUDAコアもメモリーバス幅も共通。ただ、TGP(Total Graphics Power)は当初8GBと同じ160Wとアナウンスされていたが、RTX 4060 Ti (16GB)は165W設定と改訂された。VRAMが増えたぶん消費電力が大きくなるのは自然な変更といえる。

原稿執筆時点では「GPU-Z」は16GB版に完全対応していなかったため、一部不明になっている部分がある。ただ、VRAMが16GB、メモリーバス幅は128bitであることは読み取れる

VRAMが16GBに増えたぶん、TGPは8GB版の160Wより5W多い165Wに設定されている

Ada Lovelace世代の60〜70番台を激突させる

 今回の検証はRTX 4060 Ti (8GB)とRTX 4060 Ti (16GB)の対決が軸だが、今回はさらに上と下、すなわちRTX 4070とRTX 4060との比較も試みる。RTX 4070とRTX 4060 Ti (16GB)を比較すると、下手をするとRTX 4070のほうが安い製品もあるわけだが、果たしてVRAM 12GBが16GBに勝てるのか? という点も検証してゆく。検証環境は以下の通りとなる。ドライバーはすべて検証時点での最新(Game Ready 536.67)を使用している。

検証環境
CPU インテル「Core i9-13900K」
(24コア/32スレッド、最大5.8GHz)
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」
(インテルZ790、ATX、BIOS 0904)
メモリー Micron「Crucial Pro CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5600動作)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 4070 Founders Edition」、
Palit「GeForce RTX 4060 Ti JetStream OC 16GB」(GeForce RTX 4060 Ti (16GB))、
NVIDIA「GeForce RTX 4060 Ti (8GB) Founders Edition」、
ASUS「ASUS Dual GeForce RTX 4060 OC Edition 8GB GDDR6」(GeForce RTX 4060)
ストレージ Corsair「Force MP600 Series CSSD-F1000GBMP600」
(1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ用)、
Silicon Power「PCIe Gen3x4 P34A80 SP002TBP34A80M28」
(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、データドライブ用)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」
(1000W、80 PLUS PLATINUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2)

TGPが高いのに性能が微妙に下になる?

 最初に「3DMark」で描画パフォーマンスに違いがあるかを検証しよう。3DMarkのVRAM使用量はそれほど多くないため、CUDAコア数やクロックといった要素が重要になる。検証に利用したRTX 4060 Ti (8GB) FEのブーストクロックは2535MHz、一方RTX 4060 Ti (16GB)は2595MHzなので、スペック的には若干RTX 4060 Ti (16GB)のほうが有利だ(VRAMのデータレートは同じ)。

3DMark:ラスタライズ系テストのスコアー

3DMark:レイトレーシング系テストのスコアー

 VRAM使用量が問題にならない状況では、RTX 4060 Ti (16GB)の優位性はまったくない。それどころか、クロックが高いはずのRTX 4060 Ti (16GB)はRTX 4060 Ti (8GB)に負けることもある。

 何故このような結果になったかという明確な理由までは掴めなかったが、VRAM搭載量を拡大したことで逆にレイテンシーが増えてしまった、もしくは増えたVRAMのぶんGPUが使える電力が減ってしまった(カードのTGPは5W増えているが、実際はそれ以上消費してGPUコアの電力的余力を削っている、という話)、などの要因が考えられる。だが、断言できるだけの裏付けは得られていない。

実ゲームでは16GBが効くこともあるが……

 ここから先は実ゲームを利用したベンチマークとなる。RTX 4060 Ti (8GB)レビュー時(https://ascii.jp/elem/000/004/137/4137821/)と同じように解像度はフルHDのみ、画質は最高設定(またはそれに近いもの)とした。また、ゲーム側でDLSSに対応しているものはDLSS“バランス”設定、さらにDLSS FGも利用可能なら有効にした設定でも検証している。

 ゲームのフレームレートはすべて「CapFrameX」を利用して測定するほか、ベンチマーク中のGPUのTBP(Total Board Power:実消費電力)やシステム全体の消費電力は「Powenetics v2」で測定している。各ゲームにおける消費電力検証は後でまとめて比較するとしよう。

 まずは「Overwatch 2」から始めよう。画質“エピック”を選択しレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、さらにFSRはオフに設定。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。

Overwatch 2:1920×1080ドット時のフレームレート

 3DMarkと同様にRTX 4060 Ti (16GB)のアドバンテージは認められない。なお、RTX 4060 Ti (16GB)の最低フレームレート(正確には下位1%の平均値)が特に低い点については、Overwatch 2のベンチマークのブレ(毎回違うバトルが展開される)の影響もあるのでVRAM 16GBだから遅いと断言できるほどではない。

 続いては「Call of Duty: Modern Warfare II」だ。“極限”、アンチエイリアスは“ウルトラ品質”に設定。このゲームはDLSSに対応しているため、DLSS“バランス”設定でも検証に含めている。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Call of Duty: Modern Warfare II:1920×1080ドット時のフレームレート

Call of Duty: Modern Warfare II:DLSS“バランス”、1920×1080ドット時のフレームレート

 Overwatch 2の結果とは対照的に、RTX 4060 Ti (16GB)はRTX 4060 Ti (8GB)よりも高いフレームレートを出せている。特に最低フレームレートへの影響が大きく、20fps以上の向上が確認できた。VRAM使用量の詳細については後述するが、Call of Duty: Modern Warfare IIの極限設定ではVRAM使用量が多いため、それがRTX 4060 Ti (16GB)の優位性に繋がったのではないだろうか。

 続いては「Forza Horizon 5」だ。画質は“エクトリーム”、アンチエイリアスはMSAA x2、もしくはDLSS“バランス”+DLSS FGに設定し、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Forza Horizon 5:1920×1080ドット時のフレームレート

Forza Horizon 5:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 DLSSなしの状態ではRTX 4060 Ti (8GB)とRTX 4060 Ti (16GB)に違いはほとんど出なかったが、DLSS“バランス”+DLSS FG設定を追加した途端にRTX 4060 Ti (16GB)のフレームレートが伸びた。

 Forza Horizon 5のエクストリーム設定はVRAM 8GBだとVRAM容量の警告が出るほどのVRAM負荷だが、DLSSなしではVRAM増量の効果は見られず、DLSSありにするとVRAM増量効果が見られた。ということは、DLSS周りの処理とVRAMの余裕に何らかの関係があることを示唆している。

 続く「Cyberpunk 2077」では画質“レイトレーシング:ウルトラ”をベースに、DLSS SRはオフにした設定と、DLSS“バランス”+DLSS FGを追加した設定を準備。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Cyberpunk 2077:1920×1080ドット時のフレームレート

Cyberpunk 2077:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 こちらもVRAM使用量多めのゲームだが、Cyberpunk 2077のDLSSではVRAM増量による効果は認められない。それどころかDLSSなし/ありどちらの状況でもRTX 4060 Ti (16GB)のほうがほんのわずかフレームレートが下になるというパターンが確認できる。

 「Atomic Heart」では画質は“アトミック”、フレームレート上限は500fpsに設定。アンチエイリアスは“TAA高”だが、DLSS“バランス”+DLSS FG使用時はTAAは無効化される。ゲーム開始直後、ボートを降りた後のシーンでフレームレートを計測した。

Atomic Heart:1920×1080ドット時のフレームレート

Atomic Heart:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 全体の傾向としてはCyberpunk 2077等と変わらず、RTX 4060 Ti (8GB)のほうが微妙にRTX 4060 Ti (16GB)よりも高いフレームレートを出している。ただ、手動計測なので誤差も大きくなりやすい事は留意すべきだろう。

 「STAR WARS Jedi: Survivor」は画質“エピック”、レイトレーシングは有効に設定。新規ゲームを開始して最初の連行シーンにおけるフレームレートを計測した。

STAR WARS Jedi: Survivor:1920×1080ドット時のフレームレート

 ここでもRTX 4060 Ti (8GB)のほうがRTX 4060 Ti (16GB)よりも微妙に有利と出ている。VRAM使用量も多め(8GBでは微妙に足が出る。これについては後述)なタイトルだが、16GBにしたところで明確に軽くなるわけでもない。CUDAコア数やメモリーバス幅など、VRAMとは別の要素が律速要素になっていると考えられる。

 レイトレーシングを組み込んだ「The Witcher 3: Wild Hunt」でも試してみよう。画質は“レイトレーシング:ウルトラ”、HairWorksはオフとした。アンチエイリアスをTAAU、もしくはDLSS“バランス”+DLSS FGの設定で計測。ゲーム中の街(ノヴィグラド)内を移動する際のフレームレートを計っている。

The Witcher 3: Wild Hunt:1920×1080ドット時のフレームレート

The Witcher 3: Wild Hunt:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 DLSSがないとRTX 4060 Ti (8GB)と変わらない一方で、DLSSの処理が入ると平均以上に最低フレームレートの底上げが発生する。平均フレームレートはRTX 4060 Ti (8GB)とRTX 4060 Ti (16GB)で大差がないので、VRAMが16GBに増えることで8GBよりもフレームレートが落ち込まないようになった、といえる。

 超重量級のパストレーサーを組み込んだ「Portal with RTX」では、画質は“Ultra”、DLSS“バランス”+DLSS FGに設定。チャンバー14のプレイをデモ録画機能で収録し、それを再生した時のフレームレートを計測した。

Portal with RTX:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 パストレーサーを使っているためDLSS FGなしでは絶望的に重いゲームだが、フルHD環境でならRTX 4060 Tiでもパストレーシングを堪能しつつ快適プレイが可能になる。ただ、VRAMが増えてRTX 4060 Ti (8GB)と何かが変わったか、といえばそうでもない。より上のフレームレートを求めるなら、同等(もしくはやや下の)価格で買えるRTX 4070を買ったほうが幸せになれる。

 「Remnant II」では画質“最高”に設定し、モーションブラーも有効とした。ゲームを始めて最初に到達する拠点内を移動した際のフレームレートを計測。このゲームもDLSS FGに対応しているため、DLSS利用時のフレームレートも比較する。

Remnant II:1920×1080ドット時のフレームレート

Remnant II:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 DLSSの有無に関係なく、RTX 4060 Ti (16GB)の立ち位置はこれまでの検証と変わっていない。DLSS FG使用時に平均フレームレートが144fpsで頭打ちになってしまうのは、(検証当時の)ゲーム側の制限によるものだが、最低フレームレートにおいてはRTX 4060 Ti (16GB)はRTX 4060 Ti (8GB)に対してアドバンテージがあることを示唆している。Forza Horizon 5、The Witcher 3: Wild Huntなどと似たような感じと捉えてよいだろう。

 ここからはVRAM使用量が特に大きいと(筆者が)認識しているゲームを中心に試していく。まずVRAM食いの筆頭といえるのが「BIOHAZARD RE:4」だ。ここではレイトレーシングを含め、画質系はすべて最高に設定。ストランドヘアーも有効とした。ゲーム序盤で訪れる教会のある村〜次の集落へ続く道を移動した際のレームレートを計測した。

BIOHAZARD RE:4:1920×1080ドット時のフレームレート

 平均フレームレートの出方はこれまで散々見てきた通りだが、ここでは最低フレームレートに注目。RTX 4060 Ti (8GB)は平均フレームレートは高いものの、最低フレームレートがハッキリと視認できるほど落ち込むシーンがある。一方で、RTX 4060 Ti (16GB)では引っかかることすら自覚できない。

 この点は筆者がYouTubeに動画として上げているので、ご覧いただくのが一番だ。この動画では8GBと16GBで同じようなコースを移動した時の様子を比較している。8GBでは時間が止まったような感じでコマが飛ぶが、16GBではそれがない。

もう1つ注目すべきは、PCI Express経由でデータを受け取るデータ量「GPU PCIE Rx」の違い(赤線)。RTX 4060 Ti (8GB)(左)のほうが安定してRTX 4060 Ti (16GB)(右)よりも高い値を示している。つまり、RTX 4060 Ti (8GB)ではVRAMが足りず、常にVRAMにないデータを取りこむ必要があるのだ

 「Hogwarts Legacy」では画質“最高”、レイトレーシングもすべて有効化&最高、アンチエイリアスは“TAA高”、もしくはDLSS“バランス”+DLSS FGに設定。常時ボーダーレスウインドウ表示のゲームであるため、デスクトップの解像度をフルHDに変更して検証している。南門の橋〜ホグワーツ城内に至る一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Hogwarts Legacy:1920×1080ドット時のフレームレート

Hogwarts Legacy:DLSS“バランス”+DLSS FG、1920×1080ドット時のフレームレート

 VRAM使用量が増えすぎると、テクスチャーのディテールが“溶ける”ように見えるゲームだが、16GBもあると流石にそれはない。ただ、8GBでもフルHD環境であれば溶けることはほぼない(劣化に気づかない)ので、このゲームにおいてのVRAM搭載量は大きな意味をなさない。フレームレートにおいてもRTX 4060 Ti (8GB)とRTX 4060 Ti (16GB)で変わる気配がないのが残念だ。

 続く「The Last of Us Part I」では画質は“最高”に設定。このゲームはDLSS FGに対応していないため、DLSSは“バランス”設定のみとした。新規ゲーム開始序盤、街を逃げ回るシーンにおけるフレームレートを計測した。

The Last of Us Part I:1920×1080ドット時のフレームレート

The Last of Us Part I:DLSS“バランス”、1920×1080ドット時のフレームレート

 ここでも、RTX 4060 Tiの8GB版に対し16GB版がアドバンテージを持っているとは言いがたく、12GBしかないRTX 4070に負けている点もこれまでの検証と変わっていない。

VRAM使用量やワットパフォーマンスを比較する

 では、今回検証したベンチマークシーンにおいて、RTX 4060 Ti (8GB)とRTX 4060 Ti (16GB)において実際どの程度のVRAMが使われていたかをチェックしよう。ここではCapFrameXのレポートから得られるVRAM使用量の最大値を比較してみた。なお、クロックや消費電力と違い、平均値と最大値はほとんど変わらないことが多い。

各ベンチマークシーンにおけるVRAMの最大使用量

 VRAMが16GBあるとVRAM使用量が大きく伸びるゲームと、そうでないゲームがハッキリと分かれ、増えない場合(Atomic Heart/ Overwath 2/ The Witcher 3: Wild Huntなど)はほとんど変わらない。その一方で、増えるゲームは10GB程度まで増えるゲームと12GB程度まで増えるゲームの2種類に分かれた。

 VRAMが多いからといって、フルHDで遊ぶ限りは限界一杯までVRAMが使われることはないのだ。ただ、RTX 4060 Ti (16GB)でフレームレートが伸びたゲーム(BIOHAZARD RE:4/ Call of Duty: Modern Warfare II/ Forza Horizon 5/ Remnant IIなど)では、VRAM消費量の増加は確認できる。

 次の表は各ベンチマークにおけるGPUのTBP(Total Board Power)、すなわち実消費電力をまとめたものだ。このデータはPowenetics v2で計測された実測値をCapFrameXを通じて取得したものとなる。さらに、このTBPをもとに10Wあたりのフレームレートを算出することでワットパフォーマンスも比較してみよう。

各ベンチマーク中に観測されたTotal Board Powerの平均値を比較したもの

各ベンチマークにおける平均フレームレートをTBPで割り10倍した、10Wあたりのフレームレート

 上位GPUほどTBPが高くなるのは当然だが、RTX 4060 Tiの場合16GBと8GBでTBPが最大20W上昇している点に注目。公式スペックだと両者のTBPの差はわずか5Wだが、実消費電力ではRTX 4060 Ti (16GB)のほうが大きい。

 しかし、今回検証に使用した2種類のRTX 4060 Tiカードはメーカーも違えば基板設計も違うので、VRAMの違いで実消費電力に差が出たのか、それとも回路設計に起因するのか、もしくはその両方が原因なのかまでは検証できない。

 ただ、RTX 4060 Ti (16GB)で大きくフレームレートを伸ばすゲームでも、逆にRTX 4060 Ti (8GB)のほうがフレームレートが若干高くなるゲームでもTBPは8GB版より増えるので、VRAMを増やしたためにGPUが使える電力制限の枠が小さくなり性能が落ちるという仮説は棄却される。

参考までに、各ベンチマークにおけるシステム全体の平均消費電力。これもPowenetics v2による実測値となる。RTX 4060〜RTX 4060 Ti (16GB)までは小刻みに増えるが、コアが変わるRTX 4070になると一気に増えることがわかる

まとめ:16GBは心の平穏

 以上でRTX 4060 Ti (16GB)の検証は終了だ。BIOHAZARD RE:4のような劇的な改善をみせるゲームも観測できたが、その一方でRTX 4060 Ti (8GB)と大差ないゲームも多い。

 それどころか実売価格が完全にオーバーラップしているRTX 4070のほうが圧倒的にフレームレートが高く(消費電力も増えるが、せいぜい50W差)、より安定したフレームレートも得られる。

 NVIDIAがRTX 4060 Tiに16GBモデルを用意したのは8GBでは不足するようなゲームがあるためだが、画質を最高設定にしなければ嫌だという人でない限りは、RTX 4060 Ti (8GB)で十分目的は達成できる。VRAMに余裕がないと内なる平穏が得られないという人のための“プレミアム”なオプションとして捉えるべきだろう。

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