新メインストリームGPU「GeForce RTX 4060 Ti」発表!
7月に追加2モデルの投入を予告
2023年5月18日、NVIDIAはAda Lovelace世代のメインストリームGPU「GeForce RTX 4060 Ti 8GB版」「GeForce RTX 4060 Ti 16GB版」「GeForce RTX 4060」の3モデルを発表した。
まず、RTX 4060 Ti 8GB版が5月24日22時以降に順次発売される。国内の市場推定価格は6万9800円からだ。RTX 4060 Ti 16GBは499ドルで7月発売。RTX 4060は299ドルで同じく7月発売と予告された。
Valve Corporationによれば、2023年4月時点におけるSteamクライアントで最もポピュラーなGPUはGeForce GTX 1650であり、トップ10のうち6つはGeForceの“60番台”のGPUで占められている。RTX 4060 Tiがすぐこれに取って代わる訳ではないだろうが、NVIDIAが60番台のGeForceを最新アーキテクチャーでリプレースすることにより、旧世代60番台GeForceユーザーに新しい機能やより優れたグラフィック性能を提供する道筋が開かれることになる。
Valveの調査によれば、プレイヤーの76.7%がプレイ環境をフルHDとしており、RTX 4060 Tiはこの最大派閥にDLSS Frame Generation(DLSS FG)やAV1ハードウェアエンコードといった最新テクノロジーをもたらすものになるだろう。

Steam Hardware Survey(https://store.steampowered.com/hwsurvey)から2021年11月〜2023年4月分の集計データを抜粋。最もポピュラーなGPUはGTX 1650だが、そこからトップ12までがすべてGeForce。60番台GeForceが多数ランクインしていることもわかる
RTX 4060 Ti/ RTX 4060のスペックは以下の通りだ。省略されているスペック(メモリーバス幅など)もあるが、VRAM容量8GBが基準になっていることを考慮すると、AD106ベースかつメモリーバス幅128bitだと考えられる。
VRAMのチョイスもRTX 4090〜4070で採用されてきたGDDR6Xではなく、消費電力のより少ないGDDR6になっていること、TGP(Total Graphics Power)はRTX 4060 Tiが160Wなのに対してRTX 4060が115Wとかなり絞られている点にも注目したい。
ちなみにRTX 4060 Tiの16GB版が7月発売と遅れる理由は、メモリーが多いぶん電源等の設計も少し変える必要があるため、16GB版はPCBを別に用意する必要があったから、とのことだ(これも100ドル差に含まれている)。
RTX 4060 TiおよびRTX 4060の特徴は、すでに発売済みのAda Lovelace世代のGeForceと共通である。巨大なL2キャッシュを利用することで狭いメモリーバスでも実効帯域を引き上げ、RTコアとTensorコアはAmpere世代からそれぞれ1世代進化、AV1のハードウェアエンコードに対応するという要素がこれに該当する。
ちょっと面白いのは、前掲のスペック表で「Memory Subsystem」欄に“○○GB/s effective”とある点だ。これは巨大L2キャッシュの存在による実効メモリー帯域を示しているが、RTX 4070のドキュメントにはなかった(筆者の記憶する限りでは)。
最近のNVIDIAはRTX 4090の消費電力が大きいという批判が出たらAGP(Average Gaming Power)という新指標を出すといったように、スペック表記に関してディフェンシブなムーブが散見されるが、この実効帯域は128bitと細いメモリーバス幅で大丈夫か? というユーザーの心配を受け止めた結果と考えたい。

15のゲームやベンチマークにおいて、1フレームで発生したVRAMとのトラフィックをL2が2MBの場合/32MBの場合で比較したもの。32MBのL2キャッシュを搭載した結果、GPU⇔VRAMのトラフィックは半分程度に減少。結果としてAda Lovelace世代は高いワットパフォーマンスを得た。右のグラフはL2を32MBに増やしたことで、レイトレーシングやDLSS FGのパフォーマンスが2MB時よりも最大35%程度向上したというのを示している
RTX 4060 Tiに16GB版がある理由
現時点ではRTX 4060 Tiのパフォーマンスレビューはできる状況にないため、NVIDIAの公式資料からパフォーマンスをざっと予測してみよう。
まず、RTX 4060 TiはRTX 3060 TiやRTX 2060 SUPERを置き換える存在となるが、DLSS FGがない場合はRTX 3060 Tiから平均フレームレート10%強の増加にとどまる。しかし、RTX 3060 TiのTGPが200Wなのに対して、RTX 4060 Tiは160Wであるため、ワットパフォーマンスでは大きく前進といえるだろう。
無論、RTX 4060 TiでDLSS FGを使えば、RTX 3060 Tiの最大1.7倍程度のフレームレートが期待できる。RTX 4060 Tiの目的は、フルHDゲーミング向けGPUにフレーム生成技術を持ち込むことにあるのだ。

NVIDIAの発表資料より抜粋。フルHD&最高画質でRTX 4060 Ti 8GB/ RTX 3060 Ti/ RTX 2060 SUPERの平均フレームレートを比較したもの(DLSSやレイトレーシング等はすべて利用)。数字がないので読みにくいことこの上ないが、DLSS FGがない場合はRTX 3060 Tiの10%強、DLSS FGありなら50〜70%増が期待できる
次のグラフはRTX 4060 Ti 16GBのパフォーマンスだ。ほとんどのゲームにおいてフレームレートやGPUの力関係は変わっていないが、「A Plague Tale: Requiem」と「BIOHAZARD RE:4 (Resident Evil Remake)」では大きくフレームレートが伸びている。これらはVRAMの使用量がフレームレートに大きなインパクトを与えるゲームであるため、VRAM 8GBではハンデになる。NVIDIAもこういうゲームがあると認識しているからこそ、RTX 4060 Tiに16GB版を用意したようだ。

RTX 4060 Tiを16GBにした時のパフォーマンス。A Plague Tale: RequiemとBIOHAZARD RE:4で大きくフレームレートが伸びている。ただ、この2ゲームにおいて前のグラフと画質設定が違うとのことなので、この2枚のグラフは単純比較できるものではない、ということを強調しておきたい
一方、RTX 4060はRTX 3060/RTX 2060を置換することを目的としている。こちらもNVIDIAの資料から抜粋したデータしかお見せできないが、DLSS FG対応ゲームであれば劇的に伸び、DLSS FG非対応であればRTX 3060を10%強上回る。TGPも115Wと、RTX 3060の170Wから減少している。
このように、RTX 4060 Ti/RTX 4060はDLSS FGをアンダー500ドルのビデオカードにもたらすGPUになる。DLSS FGの普及スピードはDLSS SRよりも高ペースであるが、まだゲーム全体としての割合は小さい。だが「Unreal Engine 5」にDLSS 3用プラグイン(FGも当然含まれると推察する)も近日リリース予定とのことなので、RTX 4060 TiやRTX 4060の価値は今後さらに伸びていくだろう。

近日リリース予定の「The Lord of the Rings: Gollum」のような最新ゲームはもとより、「D5 Render」もDLSS FG対応ベータがリリースされるほか、UE5にもDLSS 3用のプラグインが追加される予定だ。プラグイン追加はそのぶんDLSS FG対応がより簡単になることを示している
原稿執筆時点ではまだRTX 4060 Ti 8GBの実機写真やパフォーマンス検証を含めたレビューはお見せすることはできない。これまでのパターン通りなら、販売解禁と同時にレビューも解禁となるだろう。筆者を取り巻く状況はこの目論見通りに行くかどうか怪しい展開なのだが、記事が無事アップされることを祈りつつお待ちいただきたい。
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