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個人情報は個人で持つという新提案がテスノロジー社のDIエンジンとRCTデバイスだ!

2023年08月21日 12時00分更新

ブロックチェーンに変わる技術
それがDIエンジンとRCTデバイス

 今の世の中は、多くの個人情報がスマートフォンを経由して、ビッグデータとしてクラウドに集められている。その状況を不安視する人もいるだろう。また、グーグルやヤフー、アップルなどのクラウド・サービスでは、個人の情報がバラバラに管理されており、ユーザーはそれぞれに個別のIDとパスワードを覚えておく必要がある。さらに、そうしたサービスの窓口となるスマートフォンは、数年おきに買い替えが求められる。クラウド・サービスによって世の中は便利になった一方、また別の不便が生まれているのだ。

 そんな現在の状況を覆す、新しい提案が日本から生まれた。それがテスノロジー株式会社による、「DIエンジン」であり、それを搭載する「RCTデバイス」だ。この技術について、テスノロジー代表取締役社長の近藤克彦氏に話を聞いた。

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「DIエンジン」「RCTデバイス」を発明し、テスノロジー社を率いる近藤克彦氏

 DIエンジンとは、分散型データ管理技術である。そしてRCTデバイスは、DIエンジンを搭載するデバイス類を指す。「RCT」とは「Rhizome(フランス語の根茎)」「Cell(英語の細胞)」「Tsunagu・Tsumugu(日本語の繋ぐ・紡ぐ)」の3つの頭文字からできた造語だという。分散されたデータ(細胞)同士が、繋がり・紡がれることで、植物の根のように共生することを表す。そして、それ自体が「DIエンジン」の特徴となるのだ。

 「DIエンジン」はデータを分散した形で管理できることが特徴だ。クラウドによる一極集中のデータ管理とは、正反対の手法となる。使われるのは非常に小さく軽いプログラムで、それが個々のデバイスに搭載されている。そうした「DIエンジン」を搭載するデバイス同士が、互いを認証しあうことで、データのやり取りを可能にするという。大きな電力や、長大なプログラムを使わずとも、膨大なデータを迅速に取り扱うことができるというのだ。

 また、DIエンジンを搭載するRCTデバイスは安価で堅牢、そして長期間にわたり使用されることをテーマにしているという。RCTデバイスは、個人向けの情報端末の「RCTメモリー」をはじめ、電源コンセントに使う「RCTコネクター」など、複数が存在する。

小さな端末の中に個人情報を入れて
インターネット接続なしで端末同士でデータをやり取り

 取材のデモに使われた個人向けの情報端末となるRCTメモリーには、Kindleと同じ安価なモノクロのディスプレーに、蛍光灯の光で充電できる新しい二次電池(しかも通常の2倍以上の長寿命となる2万6000回サイクルを実現)、そして通信を行なうWi-SUNチップを組み合わせる。デモ機は、スマートフォンよりも小さく軽い。しかも安価で、6年以上も使用可能とのこと。

 このRCTメモリーは、今年6月にフランスで開催された、世界最大級のオープンイノベーションカンファレンスイベント「Viva Tech2023」でも紹介されたものだ。

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フランスで開催されたViva Tech2023に出品されたRCTコネクター

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フランスで開催されたViva Tech2023に出品されたRCTバッテリー

 デモの内容は個人向けの情報端末となるRCTメモリーを使って病院へ行って検査結果を引き出し、そして薬局で薬をもらうという流れだ。最初に新しいRCTメモリーに個人情報を登録する。登録はクラウド経由ではなく、直接に端末にする。また、情報へのアクセスは生体認証(静脈認証)が必須となる。

 その個人情報を持つRCTメモリーを持って病院へ行き、RCTメモリーを使って病院側のRCTデバイスとアクセス。それにより本人確認を行ない、病院から検査結果という個人情報をRCTメモリーに受け取る。このときもクラウドはなく、情報は病院から個人へと、RCTデバイス経由で直接渡るのが特徴だ。同じように、薬局でもRCTメモリーを使って本人確認を実施し、調剤されるという流れになっている。

 ポイントとなるのは、情報が個人所有のRCTメモリーにあり、クラウドに集められないところだ。また、病院や薬局にも、RCTメモリーの個人情報は保存されない。それでいて、RCTメモリーがほかのRCTデバイスと繋がっていれば、膨大なデータの検索が可能というころにある。

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DIエンジンを搭載するRCTメモリー

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テスノロジー社のDIエンジンを搭載するRCTメモリーの端末

 そんなDIエンジンとRCTデバイスの魅力は、幅広いユースケースが考えられるところだ。

 たとえば、電源のコンセントの部分にRCTデバイスを設置することで、接続されている電気製品を認識し、管理することが可能となる。電力の使用状況を把握するだけでなく、電力供給に優先順位を付けることもできるという。バッテリーのマネージメントシステムに付帯させれば、中のセルごとの状況を把握して管理することもできる。クルマの複数のセンサー類に搭載することで、自動運転の実現に貢献する。

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この小さな端末の中に個人情報が入っている

 さらに、個人デバイスと家庭のメーターなどにRCTデバイスを搭載し、それぞれを連携させることで、シニア向けの家庭見守りサービスも可能だ。ほかにも野菜工場の管理や、スマートシティ、災害時対策まで、その利用範囲はアイデア次第となる。まさに次世代の新しい社会を生み出す技術と言えるだろう。

コンピューターの進化はAIだけではない
個人の情報管理の進化の方がより重要だ

 そんな新技術を生み出したテスノロジー社とは、どのような企業なのか。それは、DIエンジンとRCTデバイスを発明した、近藤克彦氏が代表を務めるR&D集団だ。今年63歳になる近藤氏は、GAFA以前から世界的なコンピューターやソフトウェア企業にて、大規模データーベースの構築に始まり、クレジットカード関連など、さまざまなソフトウェア開発を行ってきた経歴を持つ。

 「僕らがやろうとしているのは、人にとって役立つデジタルは、一体何なんだろう? というのがベースです」と近藤氏は説明する。これまでの豊富な経験から、ビッグデータやそれを活用するChatGPTのようなAIは、この先行き詰まるのではないかと考えたという。

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今後は分散型に移行するのでは、という近藤氏

 「デジタルはもっと生活に身近なものになるべきで、このまま矯正を考えないと、いずれ壊れてしまう。今後、人間が必要とするのは個人個人の”私に関する情報”のはずですが、ChatGPTなどのAIが今出してる答えは、誰のためのものでもない”一般的な情報”に過ぎません。それに対して、DIエンジンはあえてクラウドに頼らず、個人に関する大量の情報を蓄積し、提供します。そして、それが可能になったのは、DIエンジンが”個人情報の秘匿”という課題をきっちりとクリアしているという、もう1つの重要な特徴を持つからなのです」と近藤氏。

 ちなみに、近藤氏率いるテスノロジー社からは、今後、続々と新技術や新製品が登場してくる予定だという。どんな新しい提案があるのかに期待しよう。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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