生成AI、中でもOpen AIの大規模言語モデルであるChatGPTを社内ツールとして取り入れ、業務に活用する動きが広がっている。筆者が記憶している限り、最も速い動きを見せた企業の1つがパナソニック子会社のパナソニック コネクトだ。
マイクロソフト「Azure OpenAI Service」の提供開始にあわせて独自システム「ConnectAI」を開発し、2月には全社導入を発表。今年9月からはさらに一歩踏み込んで、ChatGPTに社内データをつなぎ込み、10月以降カスタマーサポートで活用する計画も発表している。
導入から数ヵ月、ChatGPTは今、どのような業務にどう活用されているのか。見えてきた業務効率化の鍵と課題を、パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャーの向野孔己氏に聞いた。
使用回数は1日あたり5800回、トータルで26万回
──今年2月に全社に一斉導入されたということですが、現在はどのようなシステムが利用できるようになっているのですか?
正確には全社ではなく、国内の社員に限定して展開しています。システムやネットワークの制限もありますが、やはり国によってもAIに対する考え方が違うので。現在は国内の社員、1万3400人が利用できます。当初はGPT-3.5ベースで提供を開始しましたが、今はデフォルトがChatGPTで、GPT-4も選択できるようにしています。
選択制にしているのは、1つはコストの問題です。Open AIでプライスリストが公開されていますが、ChatGPTと最新のGPT-4では、コストが10倍ほど違います。もう1つは応答速度で、GPT-4の方が倍ほどかかります。ただ想定していたよりも多くの人、特にITリテラシーの高い人ほどGPT-4を使っています。満足度も5段階評価でChatGPTが3.8なのに対して、GPT-4は4.1と高くなっています。
──提供開始から4ヵ月以上経ちましたが、「ConnectAI」に対して社員の方からはどのようなフィードバックがきていますか?
使い勝手については、いろいろなフィードバックがあります。ChatGPTでは検索と違って、自然言語で人に頼むようにプロンプトを入力しないといけない。期待することや状況、何をしてほしいのかを適切に伝える必要があります。といっても最初からは難しいと思ったので、「ConnectAI」ではあらかじめ15パターンのプロンプトが選択できるようにしています。それでもやはり長いプロンプトを入力するのが大変だということで、音声入力をつけてほしいという声があります。あとは、今は「SUBMIT」ボタンを押さないといけないので、Enterで送信できるようにしてほしいとか、そういう細かい仕様のところですね。
──導入からここまで、社員の方の利用状況はどうですか?
導入3ヵ月までのデータですが、トータルで26万回利用されていて、1日当たりの利用回数は5800回になっています。ただ、ずっと高かったわけじゃなくて、導入1週間ほどで一度ガクっと落ちています。本格的に使われるようになったのは、ChatGPTが使えるようになった3月半ばからですね。メディアにも多く取り上げていただいたので、社員に会社が何か新しいことをしているというのが、伝わったのもあると思います。
利用状況については、用途というより人によるところがやはり大きくて、使っている人は使ってるけど、まったく使っていない人も一定数はいます。社内システムといっても、勤怠管理などと違って使わなくてもいいものなので。使うと便利だというのが浸透して、じわじわ広がっていけばいいかなと思っています。
──よく使われている部署などはあるんでしょうか?
部署というより人によってですね。ただ営業などは、やはりメディアにも取り上げていただいてお客様から聞かれることも多いので、使っている人が多いかもしれません。利用ケースとしては、質問するというのがダントツに多くて、次にプログラミング、文書作成、翻訳、要約という感じですね。営業だと季節の挨拶文を作ってもらったり、あとはミーティングの進め方を聞いたりというのもあるようです。ただ、たとえば会議のアジェンダを作って、時間配分を考えてもらったりすると、合計時間が会議の時間を上回っていたりすることもあります。計算はあまり得意じゃないのかもしれません。
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