週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

会社にChatGPTを導入する際の注意点

2023年07月14日 19時00分更新

 ChatGPTをビジネスでバリバリ使ってみたいと考えている人は多いだろう。もちろんそれは可能だし、実際すでにChatGPTを業務の一部に組み込んで使っている人も多い。
 かく言う筆者も、もはやChatGPT抜きで仕事するなど考えられないくらい毎日利用している。

ChatGPTで注意すべき6つのポイント

 だが、近年の生成AIの急激な進歩に比べ、法整備はまだ追いついていない状況にある。趣味で使う場合はさほど意識することはないが、ビジネスで使用する際はいくつかの潜在リスクが存在することを強く意識する必要がある。

1. 個人情報や機密情報は入力しない

 ユーザーがChatGPTに入力した情報は、会話の内容が保存されChatGPTのトレーニングに使用する可能性がある。そのため、機密情報や個人情報をChatGPTに入力することは避けるべきだ。

設定画面

 設定画面で「Chat History & Training」をオフにすると、使用したプロンプトはその場限りで保存されない設定になる。また、履歴は残したままモデルのトレーニングを無効にしたい場合はこのフォームでリクエストすればよい。ビジネスで利用する場合は最低限ここだけは確認しておこう。

2. 必ず事実確認をする

 ChatGPTの知識は2021年まで。それ以降の情報については学習していないため、最新の情報、新しい科学的発見や法的変更に関連する情報などが必要な場合は、他の信頼できる情報源を参照することが必要になる。
 また、文脈やニュアンスを完全に理解する能力もないため、情報が誤解され誤った回答が提供される可能性があるだけではなく、時には「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれるあからさまな嘘をつくこともある。現状、重要な決定をする際には、人間の見直しと監督が重要だ。

3. 社会常識を尊重した指示を出す

 ChatGPTはユーザーのプロンプトに基づいてテキストを生成するため、プロンプトが社会的規範や倫理に反する場合、それに基づいた不適切なコンテンツを生成する可能性がある。使用にあたっては、社会的規範や倫理を尊重した指示を与えることが重要だ。

4. 回答をコピペして使わない

 ChatGPTで生成された文章は、学習元によっては既存のサイトや著作物と内容が酷似する可能性がある。あまりに類似性が高い場合は著作権違反とみなされるリスクがあることを理解しておこう。

5. 回答内容の遵法性を調べる

 もちろんビジネスを運営している地域の法律や規制に従う必要がある。データ保護、プライバシー、個人情報の使用など関連する法規制や業界標準を確認しよう。
 また、ChatGPTが提供するアドバイスに法的な問題が生じる可能性もある。特に医療、法律、金融に関するアドバイスを鵜呑みにしてはいけない。必要に応じて適切な専門家の意見を求めることが重要だ。

6. アップデート内容を常に確認する

 AI技術は日々進化している。新機能やセキュリティアップデートが定期的にリリースされるため、最新の情報をチェックすることが重要だ。

 以上が考えられる主なリスクだ。個人ではなく会社で利用する場合は、これらを踏まえたうえで社内利活用のガイドラインなどを作成し、関わる人全てに周知するべきだろう。

ChatGPTにできる具体的な業務

 このようなリスクが存在することを踏まえた上で、現状ChatGPTを仕事に活用できる方法をいくつか紹介する。

1. 文書の生成、要約など

 ChatGPTは、プロンプトで指定された話題やスタイル、条件などに基づいて自然な文章を生成することができる。これにより、ブログ記事やレポートの作成、SNSへの投稿、メールの自動作成などプロンプト次第であらゆるテキストコンテンツの作成に利用できる。

2. 社内コミュニケーションの効率化など

 会議のアジェンダや議事録、報告書作成や手続きメールの自動作成など、内部コミュニケーションの効率化にも活用できる。

3. マーケティング、分析など

 プレスリリースやキャンペーンなどの文言作成に加えて、ペルソナをChatGPTに設定し、対象者になりきって答えてもらうことで、マーケティング初期段階の疑似インタビューをするといった使い方もある。

 正直、上記の内容であれば今後マイクロソフトからリリースが予定されているOpenAIのAI機能を搭載した「Microsoft 365 Copilot」を使えば間違いなく現状より簡単に実現できるようになるだろう。とはいう、それはまだしばらく先の話。それまでにChatGPTでAIに触れておくことはとても大きな意味がある。

さらに高度な使い方も

 ChatGPTの高度な言語処理能力をもってすれば、データ分析、CRM、MA、SFA、カスタマーサポートの自動化といったより高度な用途に使うことも視野に入ってくるが、現状無料版のChatGPTではこれらの用途に利用するのは極めて限定的になる。

 とは言えAzure(マイクロソフト)、GCP(Google)、AWS(アマゾン)、Watson(IBM)など大手企業よりAI関連の開発に対応したプラットフォーム製品が充実してきており、以前に比べてAIを利用したアプリケーションの開発も容易になってきている。
 特にAzureにはAzure OpenAI ServiceというChatGPTをはじめとするOpenAIの技術を手軽に利用できるプランが用意されている。

 AIのビジネスへの導入は大企業を中心に加速しているが、同時にヨーロッパを中心に規制する動きも広がっている。今後もどんどんAIを巡る状況は変わってくるだろう。「とりあえず使ってみて競合に先行しておきたい」、「現状まだ不確定要素が多すぎるので様子見」、どちらが正しい判断かはあなた次第だ。

田口和裕(たぐちかずひろ)

 1969年生まれ。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイト等を中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。2019年にはタイのチェンマイに本格移住。
 新刊:7月19日発売「ChatGPT快速仕事術」、予約受付中:https://amzn.to/3r6ASOv

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事