存在感が半端ない超巨大なファンレスCPUクーラー!
なにはさておき、PCケースを開けるとまず目に飛び込んでくる、巨大なファンレスCPUクーラーに触れねばなるまい。側面から見るとPCケース内の4分の1近くをこのCPUクーラーが占めているのではないか、と思えるほどのサイズだ。
もちろん、小ぶりなミニタワーPCケースを採用していることも、そう見える要因の1つではある。しかし、NH-P1のサイズは154(W)×152(D)×158(H)mmと純粋に大きい。PCケースのサイズ感を差っ引いても、異様な存在感を放つには十分な大きさと言える。
NH-P1のヒートシンクは6本のヒートパイプと13枚のフィンを搭載。フィンの間隔はかなり広めにとられており、強力な静圧(風を押し込む力)が期待できない緩やかなエアフローでも冷やせるようになっている。
斜め方向から見るとわかるが、CPUクーラーとビデオカードの隙間は狭い。また、PCケース天面との距離もぎりぎりで、いかに巨大なCPUクーラーなのかが実感できる。エアフローのみで効率良く冷やすためには、これぐらい大きなヒートシンクが必要になるのだろう。
そのエアフローは2つのPCケースファンで支えている。前面のPCケースファンは140mmと大きく、これで冷たい外気をCPUクーラーに送り込む。背面のPCケースファンは120mmだが、CPUクーラーとの距離が近く、熱気をすばやく外部へ排出できる。
いずれのファンも静音性と冷却性を高いレベルで実現するNoctua製。回転速度はどちらも最大1200rpmと低回転仕様で、その動作音は最大回転時でもかなり静かだ。
もちろん、これだけ大きいヒートシンクのCPUクーラーを採用し、効率の良いエアフローを確保しても、CPU次第で冷却バランスは容易に崩れる。第13世代インテルCoreプロセッサーの場合、型番の末尾にKが付くベースパワーが125Wのモデルでは厳しい。比較的穏やかな65Wの無印モデルでも、安定動作には不安がある。
そのためか、Silent-Master PRO Z790-Mini/D4で選べるCPUは、型番末尾にTが付くベースパワー35Wの省電力モデルとなる。しかし、省電力かつ発熱が少ないモデルとはいえ、あなどるなかれ。標準構成の「Core i7-13700T」は16コア/24スレッド、最上位の「Core i9-13900T」は24コア/32スレッドのパワフルなCPUだ。
今回扱っている試用機材のCPUはCore i9-13900Tで、ベースパワーが35W、最大ターボパワーは106Wになる。「Core i9-13900」(ベースパワー:65W、最大ターボパワー219W)、「Core i9-13900K」(ベースパワー:125W、最大ターボパワー253W)と比べると、大きく消費電力を削減している。
その反面、定格運用ではかなり性能が低くなってしまうため、サイコム独自のチューニングを実施。これによって35Wの省電力モデルでありながら、65Wの無印モデルに近い性能を引き出せるようになっているという。このあたりの性能とCPU温度については、次回の性能チェック編で詳しく紹介しよう。
電源ユニットも発熱の抑制にひと役買っている。標準構成はFractal Designの「Ion+ 2 Platinum 660W」で、80 PLUS PLATINUM認証を取得している。80 PLUSは電力の変換効率に関する認証で、PLATINUMは負荷率20%時に90%以上、50%時に92%以上、100%時に89%以上という変換効率を実現したものに与えられるグレードだ。
電力変換効率が低いとそのぶんエネルギーが多く失われてしまう。その失われてしまうエネルギーのほとんどが熱になる。つまり、変換効率が高ければ高いほど、電源ユニットからの発熱が小さくなるのだ。
この電源ユニットはセミファンレスモデルになるため、温度が低ければファンの回転が自動停止する。つまり、80 PLUS PLATINUM認証の電源ユニットを採用することで、PCケース内温度の上昇を抑え、さらに静音化にも役立っているわけだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう